短品 一輪の花を捧げよう(ジェイルク) それは野原に咲く一輪の花。 名前もわからない一輪の花。 でも、この一輪の花を見ていると何故か彼の顔が思い浮かんだ。 「ルーク」 「ジェイド?」 グランコクマに到着し、自由行動になった途端にルークを引き止めた人物、ジェイド。 ルークはジェイドを振り向き"何だ?"と言って近付いて来た。 「ルークにコレを差し上げようと思いまして」 そう言ってジェイドが手を出すと、そこには一輪の花が握られていた。 「……ジェイド、熱でもあんのか?」 「……失礼ですね〜、傷付きますよ?」 ジェイドの額に手を当てるルーク。 確かに熱は無いようだ。 「ここに来る前に野原で見付けたんです。ルーク、あなたにお似合いかと思いましてね」 にっこり笑ったジェイド、ルークは警戒しつつもその花を受けとった。 「あ、ありがと……」 花を受け取ったルークは、やっぱりジェイドに何かを貰えた事自体が嬉しくなり、少し頬を染めて笑顔をジェイドに向けた。 「でも何で突然花なんてくれたんだ?」 「何で、と言われましても理由はありませんよ?ただ、その花を見た途端にルークの顔が思い浮かんだだけですので」 何やら恥ずかしい事を言われている気がする、ルークの頬は一気に赤くなった。 「残念ながらその花の名前も花言葉も知りませんからね、気になるなら女性陣にでも聞いてください」 "では私はピオニー陛下の所に行ってきますね"と、ジェイドがそう言い残し去って行こうとした時。 ちゅ 「へ…?」 「花のお返しにいただきましたww」 頬に何かが触れた感触。 それがジェイドからのキスだと一瞬後に気付くと、ルークの顔はゆでだこのように真っ赤になり、驚きと恥ずかしさに言葉が出ない口をパクパクと動かした。 「な、なななっ……!!///」 「では、ごちそうさまでした」 そう言うなりさっさとその場を去るジェイド。 残されたルークは取り合えず顔の熱を冷まそうと走り出した。 「う〜、ジェイドのバカっ」 やっと熱が冷めた顔も、ジェイドを思い出すとまたすぐ熱をもってしまう。 「平常心、平常心……」 そう気合いを入れた時。 「ルーク?何をしているの?」 「ぅへ!!??」 変な声を出してしまった。 咄嗟に振り向くルーク、話し掛けて来た相手、それはティアだった。 そして、残念ながら平常心を保てていない。 「あ、いや、別に何も……」 しどろもどろになるルークだったが、それをティアは気にする事も無く、ルークの手に握られていた花にが目に付いた。 「ルーク、その花どうしたの?」 「え、これか?」 ティアが花を指さし、ルークはその花をティアに見せるように上げた。 「ちょっとな、もらったんだ」 「え、もらったの?」 驚いたような反応をするティアは、何故か少し頬が赤くなった。 しかし、ルークはそんなティアに気付かず、思い出したように口を開いた。 「なぁなぁティア、この花の名前と花言葉知らねぇ?」 「え!?し、知っているけど……」 焦った様子でさらに顔を赤くするティアだったが、ルークはそれすらも気付かない。 「これくれたのはいいけど名前も花言葉も知らないって言ってたから気になってさ」 「あ、知らないで渡したのね」 ルークの言葉を聞いて一気に熱が冷めたのか、ティアの顔の赤みが引いていった。 「まぁ知らなかったのなら仕方ないわね」 「ん?何だ?」 「いえ、何でも無いわ」 ティアの言葉が聞き取れなかったルークは聞き返したが、ティアははぐらかすように何でも無いと言った。 「その花はソラティスと言う名前なの」 「ソラティスか、聞いた事無いな」 生憎と花については興味が無いと言うか、気にした事が無いので聞いた事が無いのは当然である。 「で?花言葉は?」 「花言葉は……」 ティアは少し頬を赤く染め、口を開いた。 「……『永遠の愛を貴方に捧げる』って意味よ」 そう聞いた瞬間、ボンっと言う効果音が聞こえたと思うと、ルークの顔が真っ赤に染まった。 「る、ルーク!?大丈夫?」 「え、ぁ……ぅん」 真っ赤な顔で言われても説得力は無い。 しかしルークは"頭冷やして来る"と言ってティアを残し、歩き出す。 後ろで心配する声が聞こえたが片手をあげて大丈夫だと伝えた。 知らないと言ってこのソラティスの花をくれたジェイド。 ジェイドなら知っているのに知らないと言った可能性も十分にあり、花言葉を聞いたルークをからかうのが目的だったのかもしれない。 でも、知っていても知らなくても、例えこれが偶然でも。 やっぱりこの花を貰えた事はとても嬉しいと感じた。 今からジェイドに会いに行こう。 そしてこのソラティスの花言葉を教えてやろう。 そして、知ってたとしても知らなかったとしても。 凄く嬉しかったと伝えよう。 「ジェイドあのな、この花の花言葉って……」 憎たらしくも、手に持った花はルークの顔に負けないくらい見事な朱色をしていた。 前へ [戻る] |