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短品
愛しいが故(アシュルク)



「テメェ、ふざけるなよ……」

「ご、ごめんアッシュ……」


今現在、アッシュの体からはコーヒーの香りが漂っている。
目の前には青い顔をしたルークが立っており、二人の間には落ちて割れたであろうコーヒーカップが横たわっていた。
何故こんな状況になったのかと言うと……












―10分前―


「ガイ〜…」

「ん?どうしたんだルーク?」


部屋のベッドに座り、剣の手入れをしていたガイはルークの弱々しい声が聞こえてそちらを振り向く。
ルークはガイの隣に座ると思いっきり盛大なため息をついた。


「何だ、またアッシュか?」

「う゛…何でわかるんだ……」

「顔に出てるぞ」


ガイがそう言うと、ルークはまたため息をついた。


「……またアッシュを怒らせちまった」

「アッシュは短気だもんな〜」


ガイはルークと正反対に"ははは"と明るく笑った。


「で?何やったんだ?」

「……ケーキを、作ったんだ」

「……ルーク、お前ケーキなんて作った事無いだろ」

「最近は料理できるようになったし、レシピがあればやれると思ったんだ……」


それを聞いたガイは納得した様に顔を引きつらせた。


「上手く出来たと思ったんだけど……アッシュに食べさせたら……」

「……もぅいい、それ以上何も言うな」


目が潤んできたルークにそう促すガイ。
ルークの泣きたい気持ちもわかるが、アッシュの怒りたい気持ちもわかる。


「ルーク、次からはちゃんと味見しような」

「ぅん……」


ポン、とルークの肩を叩き、そう促すガイはある事を思いついた。


「そうだ、じゃあ口直しにコーヒーでもいれてやったらどうだ?」


そう言った途端、ルークの瞳はキラキラと輝いた。














「んでこのざまか」

「ごめん……」


先程から一歩もその場から動いていない二人、アッシュは明らかに怒っている。
恐怖と申し訳なさで涙が出そうになるルーク。


「本当、ごめんなアッシュ、すぐ片付けてタオル持ってくっから」


苦笑いして割れたコーヒーカップを急いで片付けようとしゃがみ込むルーク。


「あ、おい待て!!」


その行動を止めようとアッシュが声を出すが。


「いたっ」


ルークは割れたカップで指を切ってしまった。


「だから待てって言ったじゃねえか!!」

「う、……ごめん」


語尾が小さくなる、アッシュの声でさらに怒っているのがわかって本気で泣いてしまいそうだ。


「……すまねぇ、怒鳴りたい訳じゃねぇんだ」

「え」


そう言ったアッシュ、驚いて顔を上げたルークはアッシュのバツが悪そうな顔を見た。
アッシュも、ルークの涙が溜まった顔を見てさらに眉間にシワが寄る。


(お前を傷付けたい訳じゃねぇんだ……)


アッシュはルークに対してつい怒鳴ってしまう自分に嫌気がさしていた。
けしてルークを泣かせたりしたい訳ではない。
ルークには笑っていて欲しいのに。


「怒鳴って悪い……」


そう言うと、アッシュはルークの前にしゃがみ込み、ルークの手を取った。


「アッシュ?」


そして、不意にカップで切った指を口に入れた。


「アアア、アッシュ!!??///」


その行動にルークは顔を真っ赤にした。
そして口をぱくぱくさせ、どうしたらいいのかわからなくなる。
アッシュはしばらく傷口を舐め回すと指を口から抜いた。


「何だ、顔が赤いぞ?」


ニヤリと笑ったアッシュ。


(か、確信犯!!!!)


内心気に食わないが、されていた時、嫌……だとは思わなかった。
そう考えた瞬間、また顔に熱が溜まるのがわかった。
アッシュをまともに見れない。


「まぁ、何だ……お前を怒鳴りたい訳じゃねぇんだ……その、お前の事……」


アッシュも頬を染めながら視線を泳がせ。


「好き、だからな……」


そう言ったアッシュはゆでダコの様に赤くなっていて。


「え」


言われたルークも真っ赤になっていて。


(あぁ凄く……)

(あぁめちゃくちゃ……)




((お前が愛おしい))








恥ずかしくて、お互いに声も出せない。




(おい)
(あの)
((……))
((愛してる))

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