03 会長VS俺 能力テストが始まった。 第一段階はペアによる1対1の対戦方式だった。 ペアは無差別にランダムで選ばれる。 「……」 「こんにちは皇神君」 俺のペアはまさかの生徒会長だった。 「――…ねぇ。武器は出さないの?」 対戦が始まる5分前となったとき、目の前にいた白い制服を着こなした会長が尋ねてきた。 言い忘れていたが能力テストは学校行事の為、全員制服着用である。 和服ばかりの俺に制服は少し動きにくい。 能力テストでは、武器の使用は許可されている。そのため、生徒の大半は武器を使用しているのだ。 「………必要性があれば出しますよ」 「それって本気で戦わないってこと?」 「武器がなくてもあっても俺の実力は陰りません。武器はただの媒体でしかない」 「……ふーん」 生徒会長は、無表情のまま顎に手を当てて何やら考えこんでいた。 と、そのとき。 対戦開始の鐘が鳴った。 「………俺を相手に武器無しはきついかもね。まあ…とりあえずやろっか」 「っ!……」 会長が微かに頬を吊り上げた瞬間、目の前には炎の塊が迫っていた。 「…宿れ 水胎 」 呪文を唱え、腕を炎に向ける。 指先に大きな水の花の蕾で発現する。 「 狂い咲け 水菱 」 蕾が勢い良く花びらを開かせる。 炎の塊がどんどん水の花に飲み込まれていった。 「……やるね。確かに俺以外じゃ、武器はいらないね」 「自分を過大評価してるんですか」 「違うよ。ただ単なる事実だ」 冷え冷えするような綺麗な笑みを会長は浮かべた。 「悪いけど、俺は武器を使わせて貰うよ」 「どうぞ」 「後悔しないでね」 「しませんよ」 何度も確かめてくる会長に苛々しながら、吐き捨てる。 会長は、ニヤッと笑った。 「出で参れ 光烽 」 会長の足元に銀色の光を放つ魔法陣が広がった。 そこから、銀色の長剣が現れる。 蜂のイラストが剣身にプリントされていた。 「格好良い、剣ですね」 思わず、言葉がこぼれる。 会長は何度か瞬きをしたあと、嬉しそうに微笑んだ。 「ありがとう」 「い、いえ」 「でも、手加減はしないよ?」 「当たり前です」 お互いに笑い合って。 会長が動いた。 身体を低くして地を蹴った会長が、一直線に俺を狙ってきた。 大きく振りかぶられた剣が、風を纏って振り下ろされる。 鋭い剣の切っ先を避けたとき、手の平を空に向けた会長の姿が目に入った。 その意図を悟ったが、時既に遅し。 「飛来せよ 百光」 「――――――っ!」 生徒会長の呪文と同時に俺を光の矢が襲った。 *前次# [戻る] |