04 「…兄上?」 ふと、兄上に違和感を覚え、身体を離す。 そこにいたのは。 17歳だった兄上ではなく、 20歳前後の青年。 「……………誰だ?」 「シルバ」 青年が言葉を発する。 兄上の声で。 けれど、俺は知っている。 ただ、理解したくないだけ。 「リフネット・ジョーカー、君の兄だよ」 青年が、苦笑し、告げる。 ああ、やはり。 「偽物の兄上ではないんだな」 「当たり前だ。ボケ」 口調が戻ってるよ、兄上。 似合ってるから、良いけど。 「何で偽物じゃないんだ。つまらないよ」 「ほぅ……そんな口を叩いて良いのか?」 「ごめんなさい、兄上」 「…………」 変わり身が、早いのが俺の特技の一つ。 所謂、処世術ってヤツ。 どす黒いオーラ全開の兄上に、逆らうと後々大変だしね。 「で、俺は何日間寝てた?いや何年か」 また、兄上が息を飲む。 飲み過ぎじゃないかな。 「いつ、気付いた?」 「ついさっき。偽物の兄上じゃないなら、何日間かじゃ、成長しすぎだし」 「……そうだね」 兄上が、フウッと息を吐く。 さすが、美形。 絵になるね。 「…5年だよ。シルバ」 「5年?」 思わず、目を瞠った。 「…そんなにか。どーりで、頭がすっきりしてるんだな」 「……そこか」 「そこだ。兄上」 兄上と話すのは、楽しい。 気が楽だ。 「シルバ」 「何だ、兄上」 いきなり、真面目な顔になった兄上。 素晴らしいほどに、似合ってない。 「これからは、『皇神 銀華』を名乗りなさい」 「…―――――わかった」 兄上の言うことだ。 何か考えがあるのだろう。 ないなら、困る。 さようなら、シルバ・ジョーカー。 此処に、置いて行くよ。 また、会える日まで。 *前 [戻る] |