槻木くんは猫離れができない
六
その時は槻木君が誰の絵を描いているのか特に気にかけなかった。
が、彼に興味を持ってしまった今、槻木清羅の"好きな人"がとてつもなく気になる。
「おい、秋臣。俺の顔どうなった」
友人の水原 竜(みずはら りゅう)が、しばらくボーっとしていた僕に気が付いたのか、こちらの席まで来た。
「うん、もう完成するよ。そっちは?」
僕と竜は描くものに迷っていたので、相談してお互いの顔を描くことにしたのだった。
ふと、閃いた。
竜の絵を見に行くついでに、竜と席の近い槻木君の絵をこっそり見てみよう。
我ながらいやらしい。
さっそく席を立ち竜の席に向かう。
歩いていき、通りがかりに槻木清羅の絵をさりげなく見る。
僕は足を止めた。
槻木君が描いていたのは、一匹の猫だった。
<<>>
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!