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槻木くんは猫離れができない
四ノ七


体育が終わり、僕は制服に着替えて教室に戻った。

大抵、男子の方が女子より早く着替え終わる。
しかし、僕の隣の席にはすでに雨宮さんが座っていた。

「雨宮さん、着替えるの早いね。まだ他の女子は誰も戻ってきてないのに」

僕はそう話しかけながら、自分の席に座った。

「もう、桜沢君。女の子にそういう野暮なこと言わないの」

雨宮さんはそう言って口を少し尖らせた。

「え?あ、ごめんなさい…」

何かまずいことでも言ったかな。
女の子って難しい…

「桜沢君の話、聞こうと思って早く着替えたのに」

「あ、そ、そうなんだ。ありがとう」

男子に人気の雨宮さんが、僕のために早く着替えるなんて。
さっき雨宮さん談義に花を咲かせていた男子達に知れたら…

「余計なこと、考えない。壱弐参堂へは行けたの?」

「う、うん。昨日数字屋に会って…」

そこまで言うと、僕の胸ポケットから2がふよふよと出てきた。

「こら!人がいるところに出てきちゃだめじゃないか」

僕が小声でそう言うと、2は渋々胸ポケットに戻った。

「桜沢君、すごい。数字がすっかり懐いてるじゃない」

雨宮さんは感心したように言って僕の頭を撫でた。
指先で優しくだ。
不意打ちの接触に、僕は動揺した。

「こ、こ、こいつは好奇心が旺盛だって、す、数字屋が言ってて」

舌がうまく回らない。

「でも、彼以外について歩くなんて。あなたに教えて正解だったわ」

正解の意味がいまいち解らなかったが、僕は雨宮さんに尋ねた。

「数字屋…って、何者なの?」

そう聞くと、雨宮さんは少し考えて言った。

「彼は…一言でいうと"曲者"よ」

「く、曲者?」

曲者って、あやしい人とか、危険な人ってこと?
数字屋は確かに不思議な能力を持っているけど…
危険、と言う感じはしない、な。

「まあ、私にとっては、"救世主"なんだけど」

雨宮さんがぽつりと呟いた。

「え?」

「数字とは仲良くなれたみたいだけど、肝心の数学のほうはどうかしら?」

雨宮さんは話を切り替えた。
今の話が気になったが、僕は鞄からゴソゴソと宿題を出し、彼女に見せた。

「あら、全部できたの?」

「うん、昨日数字達が解き方を教えてくれて」

僕は少し照れながら

「数学、ちょっと楽しいかも…」

と呟いた。




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