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槻木くんは猫離れができない
四ノ五



眠い、眠すぎる。


次の日の体育はバスケだった。
試合中、僕はバスケットボールを顔面に喰らい、体育館の壁にもたれて休んでいた。

昨日、眠ったのが深夜3時だったので寝ぼけていたのだ。

あの後、数字達に誘導されながら問題を解いていったら、あっさり解けてしまった。

僕は使う公式も、その使い方も間違っていた。

次の問題も同じ要領で解いてみる。
すると、これまたあっさり解けた。

全ての問題を解き終わり、時計を見ると15分しか経っていなかった。
いつもなら1時間はかかる。

「お前達、蓮田先生より教えるのうまいんじゃないか?」

数字達は満足げにぴょこぴょこ飛び跳ねた。

なんか、物足りないな。

調子に乗った僕は数学の問題集を開いた。
そして今日やった範囲の問題全てを解いてしまった。

そんなこんなで気づけば深夜。
朝起きて後悔したことは言うまでもない。


「あーきおみっ!お前大丈夫か?」

試合が終わり、戻ってきた竜が笑いながら言った。

「うん、大丈夫。すごく眠くて…」

「夜更かしか!肌、荒れるぞ」

「女子みたいなこと言うな」

「お前、女子並みに肌つるつるだからな」

そう言って、竜は体育館の奥半分、女子のコートを指差す。

体育は基本的に、男女別れて行う。

今日は男子がバスケ、女子がバレーだ。

丁度、雨宮さんがサーブを打ったところだった。
彼女はセミロングの髪の毛をサイドで一つに縛っている。

同じチームの女子と楽しげにバレーボールに勤しむ姿は、到底エスパーに見えない。

僕らと同じように休憩していた3、4人の男子達も、女子の方を見て何やら談義を交わしている。

「やっぱ雨宮だよな。このクラスだったら」

「お前、可愛けりゃ誰でもいいんだろ」

「いや、雨宮の魅力は顔だけじゃない。あの柔らかい雰囲気のなかに、時たま現れるサディズムがいい」

「うわ、お前気持ち悪っ!いや、でもちょっとわかるかも…」

雨宮さんは言うまでもなく、男子に人気だ。
清楚で、美人で、頭も良い。
かと言って、お高くとまっていなく、愛嬌がある。

僕は彼らの会話を聞きながらひやひやしていた。

彼らの感情、全部雨宮さんに筒抜けだったら…

しかし、雨宮さんはさっきと変らず試合を続けている。

僕はほっと胸を撫で下ろした。

「それにしても、ほんと美人だよな」

竜が突然そんなことを言い出したので僕は再びひやっとした。

「ちょ、竜!あんまり雨宮さんの話はしない方が…」

慌てる僕を見て、竜は訝しげな顔をした。

「ん?雨宮?」

「え?今、美人って…」

少し間を置いてから、竜はにやっとした。

しまった。

「あー、雨宮ね。秋臣、席替えしてからよく会話してるよなー」

顔が熱くなってゆく。

「ちが、ちがう!ばか!勘違いすんな!」

僕は竜の肩をばしばし叩いた。

「え、勘違いってなんのことぉ?」


嗚呼、ベタな墓穴を掘ってしまった!




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