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槻木くんは猫離れができない
四ノ二


「うっ!」


リビングでテレビを見ていた母さんが、突然変な声を出した。

「動物番組で子猫ちゃん特集が始まっちゃったわ。鼻がムズムズする」

そう言って母さんはテレビを消した。

子猫ちゃん特集だと!
見たい!死ぬほど見たい!!

僕はガタッと椅子から立ち上がる。

母さんは僕の方をちらっと見て申し訳なさそうに言った。

「ごめんね秋臣。死ぬほど見たいんでしょうけど…」

「い、いいんだ母さん。しょうがないよ」

僕はまた椅子に座った。

そうだ。
もし槻木君に接近できて、猫に触れる日が来たら、何か毛の対策をしなくては。
たとえばあれとか、あの、コロコロして服の毛を取るやつ。
ああいう道具を用意しよう。


食事を済ませると、シンクにあった食器を全て洗った。
今日は僕が食器洗い当番なのだ。
食器を洗うと一日をやり遂げた感じがするので結構好きだ。

洗い終わると、自分の部屋に行き着替えた。

脱いだ学蘭をハンガーにかけて吊るすと、ポケットからふよふよっと2が出てきた。

「あ!お前のこと忘れてた。ごめん。お腹すいてない?」

そう言ったあとで、数字が空腹になるわけないかと思った。
第一、言葉が通じるのかどうかもわからない。

しかし、僕の言葉に2は反応し、僕の目の前をくるくる旋回し始めた。

「ひょっとして、ほんとにお腹すいてる?」

なおも2は旋回している。

僕は2を部屋に残し、台所へ行き冷蔵庫を開けた。

数字って…何を食べるんだろう?

冷蔵庫を見渡すと、隅っこにキャラメルの箱があった。

「杏、キャラメル一個貰ってもいいか?」

「いいけど、16の男子がキャラメルって」

リビングにいた杏が笑いながら言った。

「ひ、久しぶりに食べたくなったんだよ」

僕はキャラメルを一つ取り、部屋に戻った。

包み紙を開いて机の上に置く。

すると2がすいすいやってきて、キャラメルをつつき始めた。

「食べてる…のか?」

2は夢中でキャラメルをつつき続ける。


「お兄ちゃん!キャラメル食べたらお風呂入りなさいよ」

リビングから杏の声が聴こえた。

母さんより母さんみたいだな。

そう思いつつ僕は素直に風呂場へ向かった。


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あきゅろす。
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