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槻木くんは猫離れができない
三ノ六

「あなたが数字屋さん…ですか?」

小上がりの畳の上に正座して、おずおずと訊ねてみた。

「まあ、そう呼ばれてはいるねぇ」

数字屋を近くで見ると、長い前髪の隙間からほんの僅かだけ瞳が見える。
向こうからは僕のことちゃんと見えてるのかな?

数字屋を観察していたら、ふと、なにかが空中に浮いていることに気がついた。
それは黒くて小さい。
こんな季節に蚊でもいるのかな?
よく目を凝らして見てみる。

それは蚊などではなかった。

「す、数字!?」

浮かんでいたのは数字の2だ。
いや、数字の"2"の形をしたなにか、と言うべきか。
ところが浮かんでいるのは2だけではない。
よく見ると3や5や0も数字屋を取り囲む様に浮かんでいる。

「みんな。こちらの僕がお友達になってくれるそうだよ」

ぽかんとしている僕を余所に数字屋がそう言うと、3、5、0は彼の長いくせっ毛の中に隠れてしまった。
2だけ、すいすいっと近くに寄ってきて、僕の鼻先でふよふよしている。

「他にもまだいるんだけど、みんな臆病なんだ。その2は"6引く4"から生まれた2でね。好奇心が旺盛で可愛い子なんだ」

数字屋は笑いながらそう言ったが、僕にはもう何が何やら解らない。
臆病?好奇心旺盛?数字がまるで生き物のようだ。

というか、数字と仲良くなるって…そのまんまの意味なのか!



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