槻木くんは猫離れができない
三ノ三
薬局、文具店、床屋。どれもシャッターが閉まっている。
昔来た時はこんなんじゃなかったのにな。
恐る恐る進んで行くと見覚えのある看板があった。
"かしわ屋"
これ…あの駄菓子屋だ。
ここも潰れてしまったのか…
僕は駄菓子屋の前で足を止め、センチメンタルな気分になった。
ふと駄菓子屋の脇を見ると小さな路地があった。
そういえば雨宮さんが渡してくれた紙には竹取商店街6丁目"裏"と書かれていたな。
その路地を覗き込んでみる。
人一人通れるくらいの幅。10メートル程先は突き当たりになっていて、裏側へ回れそうだ。
正直怖かったが、ここまできて帰るわけにはいかないと思い、僕は路地に足を踏み入れた。
薄暗い路地は壱弐参堂とやらが、そろばん教室や数学塾などではないことを物語っている。
路地を進むにつれて恐怖が増していく。
やっぱり引き返そうか、どうしようか。
迷っているうちに、突き当たりの所まで来てしまった。
僕はモッフモフの猫のことを思い浮かべて恐怖を相殺し、思い切って突き当たりを右に曲がった。
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