槻木くんは猫離れができない
三ノ一
学校が終わり、僕は駅のホームで電車を待っていた。
秋風がホームを吹き抜け少し肌寒い。
教室を出る前、雨宮さんに"壱弐参堂(ひふみどう)"とは何の店なのかと聞いてみたが、
「んー、何の店とも言えないわねぇ…。あ、そこの店主は"数字屋"と呼ばれているわ」
と曖昧なことしか言わなかった。
数字屋?つまり何屋だろう。
詳しく聞こうと思ったが、彼女はいつのまにか帰ってしまっていた。
やはりそろばん教室か数学塾なのではないか?
まあ、せっかく雨宮さんが教えてくれたのだ。行ってみるだけ行ってみよう。
駅のホームは僕の通う春陽高校(しゅんようこうこう)の生徒で賑わっていた。
竹取商店街へはここ"春陽高校前"から6駅先の"竹取町"で降りて少し歩く。
僕がいつも降りる駅の2つ前だ。
ふと反対側のホームを見る。
向こうも濃紺の学生服を着た春陽高校の生徒であふれている。
が、瞬時に僕はその中に彼を見つけた。
槻木清羅だ。
周りが賑わう中で微動だにせず立っている。
彼が着ると濃紺の学蘭が群青がかって見えるのは僕だけだろうか。
きっと彼は周りの人間より彩度が高いのだな。
そんなことを思っていたら、ホームに竹取町行きの電車が入ってきて彼の姿はかき消されてしまった。
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