槻木くんは猫離れができない 二ノ六 「無謀だったよ…」 授業が終わって休み時間、僕は席についたまま落胆していた。 あまりに酷い点数だった。 なにが"必ず答えはある"だよ。 この点数でよくもそんなことが言えたものだ。愚か者め。 お前なんかに猫をモフモフする資格はない! 「そんな悲しい顔しないで!これが期末テストじゃなくてよかったじゃない」 雨宮さんがポン、と僕の肩を叩いた。 「フォローになってないよ…。はぁ、僕は一生、数字と仲良くなれないんだ…」 ますます落ち込む僕を見て、雨宮さんは唇に人差し指をあて、何か迷っているような顔をしていたが、しばらくして口を開いた。 「んー…ひとつ方法があるかもしれないわ。確実ってわけじゃないけれど…」 そう言って彼女はメモ帳を取り出した。 シャープペンシルで何かをさらさらと書き、それをちぎって僕に渡す。 受け取った紙には "竹取商店街6丁目裏 壱弐参堂" と書かれていた。 「これは…?」 「そこを訪ねてみなさい。"数字と仲良くなれる"かも」 "壱弐参堂" そろばん教室かなにかか? 休み時間の終わりを告げる鐘が鳴り、雨宮さんは次の授業の準備を始めた。 僕はふと、槻木君の方を見てみる。 彼は今日も窓の外を眺めていた。 << [戻る] |