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わずかでも、すこしでも
出島をベッドに寝かせ、布団をかけた津田と天草。

陽の光が射し込む部屋の真ん中、チョコの甘い匂いからしばし開放されたふたりだった。


津田
「さて。
じゃあ、戻りましょうか。」

天草
「ち、ちょっと待ってくれ。」

津田
「ハイ?」

天草
「今、渡してしまおう。
私からの、バレンタインチョコだ。」

津田
「あ・・・・、ありがとうございます。」

天草
「なかなか、みんなの前で渡すのは小っ恥ずかしくてな。」

津田
「確かに、そうですよね。
いちいち一人ずつ渡さなくても、みんなで食べれば―」

天草
「いや、それじゃダメだ。」

津田
「え、なんでですか?」

天草
「みんな、お前がな・・・・。
・・・・。」

津田
「・・・・会長?」

天草
「・・・・。
プレゼントってのは、直接渡した方が良いだろ?」

津田
「えぇ、そりゃそうですけど・・・・。
会長、俺がどうしたんですか?」

天草
「たわけ!
君は本当に鈍くて困るな。」

津田
「えぇー・・・・。」

天草
「みんな津田のことを大切だと思ってると言うことだ!
言われなくても感じなさい!」

津田
「すっ、すいません・・・・。
でも、嬉しいです。
本当に、有り難いです。」

天草
「うむ。
その気持ち、一方通行で終わらせるなよ?」

津田
「はい、できる限り、俺も頑張ります!」

天草
(まぁこんなものか・・・・。)

津田
「会長。
俺・・・・。」

天草
「ん?」

津田
「・・・・。」

天草
「な、なんだ・・・・?」

津田
「・・・・やっぱ、なんでもないです。
行きましょう。
みんな待ってます。」

天草
「あ、あぁ・・・・。
・・・・いや、待て!」

津田
「へ?」

天草
「あのな・・・・。」

津田
「はい?」

天草
「私のチョコは・・・・、その・・・・、どうだ?」

津田
「どうだって・・・・。
すごく美味しそうですし、大切に食べますね。」

天草
「・・・・。
そっ、そうか・・・・。
それなら、よかった・・・・。」

津田
「はい。」


こうして、全てのチョコをもらい終わった津田。

天草の少し浮かない顔が、まるで天気と合っていない。

晴天のバレンタインは、少しの憂鬱を秘め、ゆっくりと過ぎていく。

されど、今日は特別な日。

今日は、心が踊る日。

まるでディスコのように、世間がチョコレイトに胸踊らせる日。

そこまで行かなくても、仄かに、微かに、トキメキは訪れた。


津田
「あ。
あと、会長からのチョコ、嬉しかったです。
ありがとうございました。」

天草
「・・・・。
そうか。
喜んでもらえて、何よりだ。」


こうしてバレンタインは、笑顔のうちに幕を下ろした。


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