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GAME-12
シューズと床の間から甲高い音が響く。

それに気付いたAチームの内野は、危機を察知して立ち上がる体勢に入った。

彼のボールは速い。

早急な回避が必要である。

そして、彼女たちが立ち上がらんとするまさにその時、津田の手はボールに届いた。

「ウオミー!」

「シノっち!」

キャッチを確認すると、津田の姿は激しいスキール音と共に消えた。

その音はさながら、立体駐車場を疾走するスポーツカーのよう。

「消えた!?」

天草が思わず声を上げる。

その横で魚見は、津田の所在を確認する。

センターラインギリギリかつコートの端、ボールを投げ切った彼を。

「あっ…。」

そのジト目に適う無表情な声を上げてボールを受けるしかない魚見。

彼女の腕に直撃したボールは誰も捕ることができず、床上で回転を止めた。

あまりの速さに尻餅をついてしまった魚見は、津田の方を見て寂しそうな目を向ける。

「タカ君…。
私のこと…。」

「お姉ちゃん。」

津田はしゃがみ込んでいた魚見に手を差し伸べ、魚見の目を真っ直ぐと見つめる。

そんな津田に魚見は先程の目を捨て、手を伸ばし―

「タカトシ君!
五十嵐先輩が気絶しちゃったよー!」

「えっ?
な、何で?」

三葉にそんな情報を伝えられた津田は、魚見の手首を掴んでグイっと引っ張ると、体を完全に五十嵐の方へ向けてしまった。

「…。」

魚見は素に戻る。

因みに五十嵐は、センターライン付近にいたため、津田の急接近によって気絶してしまったのだ。

「魚見さん、アァウトォォォォっ!」

轟が代わりに判定を下す。

声高々にアウトを言い渡したのは、絶頂を隠すためではないことを祈ろう。

これでAチームはあと天草のみ。
Bチームは津田と七条がまだ残留している。

「あとは私だけか…。」

魚見と五十嵐と三葉のフラグ争奪戦かと言う体育館内の空気とは裏腹に、天草はただ一人スイッチが入った。

その空気に周囲の人間が気付き、注目は気絶中の五十嵐から一気に彼女の方へと集まった。

これが決戦に繋がるのだろうか。

天草のあまりの気迫に、誰もが息を呑むドッジボール大会。

いよいよ迎えた決戦に、天草はスロットルを一気に開けた。

「津田、アリア…。
本気で行くぞ…。」

そう述べた天草の周りからは白いオーラが放たれ、体育館を包み込んでいった。

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