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Le Printemps De Quatre 06
横島の回答を聞き、打ちひしがれる津田をよそ目に、天草達は津田の方へと近づいて行く。

別に解任しなくてもいいと言い放った横島に抵抗し、これから状況を説明しにかかるのだろう。

諦めムードが彼を覆いつくした。

しかし、そんな津田を横目に3人は意外な反応を見せる。

「…まぁそうね。」

「そうだな、異議も問題もない。」

「そもそも、問題も存在しないしね〜。」

3人はいきなり冷静になり、七条に至ってはいつものスマイルが戻っていた。

「えっ?」

妥当な反応を見せる津田。

当たり前である。

しかし、程なくしてこの事態は把握できるようになるのである。


"エイプリルフール"


腕を組んでいた横島の右手から差し出された短冊状の紙。

それを見て唖然とする津田。

天草は申し訳なさそうに笑みを浮かべ、頬をかく。

萩村は普通にしているが、心配そうな雰囲気を隠せない。

そう。

これらの一件は全て仕込まれたことであった。

「この本は私が没収した物だ。
なかなか面白かったぞ。」

読んだのか。

というツッコミも発生せず、事態が読み込めない津田は、立ち尽くす他なかった。

「すまない、津田。
これは全てジョークだ。
許してくれ!」

「ちょっと思ったより話が膨らんじゃったけど…。
私もシノちゃんもこう言うの好きだからつい…。
ごめんね。」

そう。

七条は重いジョークが好きで、天草はイベント事が大好物だ。

自然と話は盛り上がりを見せたのだった。

「ち、ちなみに私の涙は目薬よ。
いくら待っても出なかったから…。
ごめん、やりすぎたわ…。」

半分泣きそうになっていた津田が本気で心配になり、3人は彼にハグをした。

そして平静を求め、いつもの彼に戻って欲しいと力を込めた。

やりすぎた自覚はあったのだが、なかなか話が切れなかったのである。

ちなみに横島は萩村のシューズ射撃により、ハグをする前に撃沈した。

津田は状況が掴めてきたのか混乱がほどけ始め、カレンダーと短冊状の紙を何回も確認した。

「冗談…?」

津田は力が抜け、ハグをする3人に体重を預けた。

3人とは言え女性が男性を支えるのは辛い。

仕掛人3人は色々騒ぎながら、なんとか津田を椅子に座らせる。

「よっ…、かったー!!」

津田は笑みを見せ、緊張がほどけて涙腺が緩む。

その姿に安心した彼女達は、優しい眼差しで津田を見た。

怒られることも覚悟していた3人は、この様子に救われた気分だった。

生徒会室の中に咲き誇る、生徒会役員共の笑顔。

全員で笑い、1人は泣き、3人は申し訳なさ半分に、4人は4つの笑顔を見せた。

「俺、これからも生徒会副会長でいいんですよね?」

「何を言う!
お前が辞めることに誰が賛成した?」

「当然、ダメに決まってるじゃない!」

「津田君、分かりきってることを言わないの!」

津田は愚かな質問をした。

しかしそれは清らかで素直で、春一番のごとき温かいものであった。

萩村は普段少ない笑顔を惜しみなく見せ、七条もいつもより純で明るい笑顔を見せる。

結局、津田の不安は消え、憂いは杞憂に―

「そう言えば、三葉や畑さんは?」

「あぁ、企画したのは我々生徒会役員だけだ。
他は一切知らないし関与していない。」

天草はさらっと言ったが、それがとてつもなく大きな意味を持つことが予測できる。

つまり、五十嵐、畑、三葉、柳本は、本件を一切知らないと言うことである。

要するに、ただの事故であるとしか言い様がないのだ。

憂いが杞憂に変わるにはまだ少し手間と時間が掛かりそうだ。

「…弁解には協力していただけますよね?」

「も、もちろんだ。
すまん…。」

「乗っちゃった上に巻き込んじゃったしね〜。」

「先輩、呑気に言ってる場合ですか!?
風紀委員長と新聞部に知られたのは危機的状況ですよ!?」

「アハー、勘弁してよー…。」

津田の弁解はまだだが、生徒会室には、いつもより距離の縮まった生徒会役員共がいたのだった。





(おまけ)

「なんだ!
津田のヤツ、ドッキリにかかってたのか。
変だと思ったよ。」

「ねぇねぇ、タカトシ君は何のドッキリに掛かってたの?」

「おや、あなたは知りませんでしたか。
あれは新手の"晒しプレイ"と言うヤツですよ。」

「不埒よ!(泣)」

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