Le Printemps De Quatre 03
不穏な空気。
それを打破するように、空気の読めない元気な子が。
「ヤッホー!
タカトシ君、ちょっと相談があるんだけど、いいかな?
…お取り込み中?」
超元気な格闘ファン、柔道部部長の三葉ムツミのおでましだ。
柔道部に似合わぬ笑顔がなんとも可愛らしい彼女だが、なんとも空気が読めない上にピュアすぎる子である。
「三葉、こいつには近づくな。
こいつは人を弄ぶ最低なヤツだからな。」
「か、会長…!
三葉、誤解だ!
誤解してるのは会長達なんだ!」
言葉足らずな上、口頭で言われると理解しにくい言い方により、頭の良くない三葉にとって今一意味が理解できない。
頭にハテナマークを浮かべ、三葉の笑顔はフリーズした。
紛らわしい言い方をした津田にも非はあるが、これでも必死の弁解なのだ。
「とにかく、津田君はいけないことをしているのよ。
だから被害に遭わないように近づいちゃダメよ!」
「いけないこと…?」
まずい。
津田はそう察した。
三葉の視線の先には3冊の猥本。
笑顔は消え、きょとんとしてしまった。
そして、難しそうな顔をして下を向いてしまった三葉に、津田はどう言葉を掛けていいか分からず、左手で頭をかきむしった。
「確かに…、若干反抗とかした方が男の子っぽいけど…。
ダメだよタカトシ君、タバコだけは!」
「そう来ちゃったかー。」
猥本の裏表紙にはタバコの広告があったので、三葉は勘違いしたらしい。
「まぁお取り込み中みたいだからまた今度ね!
じゃあ!」
彼女は夕陽に向かって走って行った。
それはそれは真っ赤な夕焼け、情熱の色をしていた。
本日は一日中曇なのだが、彼女には一切関係ないようだ。
しかも廊下を走ってはいけない校則すら関係ないよう。
「会長達、本当に勘違いなんですよ!」
「ではなんだその卑猥な本は!
そしてその怪しい3つのジャンルはなんだ!
この期に及んで言い訳か!?」
「津田君、私もう頭来た!」
そして三葉が去った後、萩村の意識が戻った。
「津田の…。」
「萩村…?」
「津田のバカァ!!
変態!!
けだもの!!」
微量の涙を溜めた目を三角にしながら怒鳴り散らし、津田は一層焦る。
「萩村、これは俺のじゃないって!
違うんだ!
俺が来た時にはもうあったんだよ!」
津田は気が気でなかった。
焦りに焦り、その焦りが言い訳として相手に伝わる始末。
はまった深みから抜け出せない。
それを理解していた津田は必死の感情コントロールを続けるが、その理解虚しく、萩村の涙を見て更に難しさを増したのである。
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