短編小説 彼の矛盾したところ 彼には矛盾したところがある。 そのせいで毎年気苦労してしまう。 女の子にはちょっと難儀な人なんだ。 「バレンタイン」 彼はバレンタインが大の苦手なのだ。 そう彼はチョコレートが嫌いな食べ物で、匂いを嗅いだだけで倒れてしまう。少し変わった人。 女の子には困り者で、何時だったかのバレンタインの日に、学校中の女子はバレンタインの話題一色に対して、彼はチョコレートの「チョ」の字を聞くだけでうんざりだったらしい。 それは義理の一つも貰えない世の寂しい男共に火を付けた一言だろう。 なんで嫌いなのと聞いたら… 「昔…チョコレートを食べたら耳が痛くなったんだ……それ以来…チョコレートは俺の天敵だ。納豆よりはマシだけど…」 その一言に唖然した。 私は彼の一言を聞くまで彼がチョコレートを毛嫌いしているとは露知らず、夕べ徹夜して作ったチョコレートのきっちりと包装した箱を後ろ手であまりの驚きに握り潰してしまったのだ。 でも、納豆と同列ないしそれ以下にしてもこんなに美味しいチョコレートを嫌いなんて…彼もずいぶん困ったさんだなぁ。 どうしよう。チョコレート潰しちゃったよ。 「その後ろ手に持ってるひしゃげた箱はまさかとは思うがチョコレートとか言わないよな?」 「むぅ…まさかもまさか。貴方が嫌いなチョコレートよ」 「…………よこせ」 「はい?」 先程嫌いな食べ物と言っときながらよこせと? 「いいから」 彼は無理矢理私の手から包みを奪うと不器用な手付きで包装紙を開けていく。 「おっ…おぉ!!」 「なっ何よ!!あんた今嫌いって」 「いや、これなら食える!」 何ですと!! 今あんた食えるって言った!? 「何だよ、はじめっから言ってくれればよかったのに。よく俺の好物わかったな?」 「えっ?いや…何て言うか……君頭大丈夫?」 「はぁ?」 「だって…」 それチョコレートだよ? 「あぁ、世間一般から見りゃチョコレートなんだよなこれ。でも、俺にとっては」 これはチョコレートじゃない!! 彼が言うそれは確かに世間ではチョコレート。でも普通の茶色の甘いチョコレートではなく、私が彼にあげようとしたチョコレートは、白のホワイトチョコレートだったのだ。 「変なやつ」 「変なって……ガキの頃から俺これ好きなんだよ。なんつーか」 「なんつーか?」 「チョコレートって感じしないんだよな」 呆れた。 彼にはよくわかをない、他人には理解出来ない矛盾がある。 彼を好きになった人は、バレンタインの日は相当苦労するだろう。 彼はそのチョコレートじゃない白く四角い塊を美味しそうに食べてくれた。 END あとがき いや〜なんつか今更ながらバレンタインネタとか流行過ぎ去ってますね。とりあえず前々から暴露しちゃいましたけど、彼は亜希で彼女は望って設定なんすけど、Returnの番外編です。 亜希の嫌いな食べ物と好きな食べ物は一区切りの中では同じチョコレート同士なのに、色が違うだけで好き嫌いがはっきり分かれてます。ちなみに、実はこのネタ作者の自虐ネタなんです。私の体験談と言いますか、私は小さい頃偶々中耳炎に掛かってまして偶々チョコレート食べたら耳が痛くなったんです。それ以来「チョコレート食べた=耳が痛くなる」と言う図式が出来てしまったのです。 ですが、そこで何をトチ狂ったのか私はホワイトチョコレートなら食べれたんです。しかもその時母親に 「うぅん、これはチョコレートじゃないもん」 なんて言ったそうで…ぶっちゃけ矛盾してますよね。 亜希には私のそう言った体験を反映しているのです。 とまぁそんな事があって亜希は一年で最もバレンタインデーが苦手で中学の時にぶっ倒れてしまった経験があるのです。そんで、望はそんな事知らないですから普通にチョコレート作ったんですが、作ったのはなんと亜希の好物の方のホワイトチョコレートだったんです。 それで彼女は色々な形のホワイトチョコレートを作って彼に渡せて、最後はイチャコラと甘い雰囲気になったんです。最後にそんな色々な形に作ってしまった悲劇をご覧ください。 おまけ 「あぁ!!」 「どうしたのよいきなり!!」 「ハート割れてるぞ」 なっ何ですとぉ!? しまった…アレか?私があんとき握り潰して割れたとでもいうんですか? 「まぁくっちまえば同じだろ」 「むぅ〜!!」 「あの〜何をお怒りでいらっしゃるので?」 「ふん!!いっそのことだからアンタのハートも割ってやるわよ!!」 「わっ!やめろ馬鹿!!」 「うるさい!!黙って地獄に落ちろ!!」 「なぁなぁ?あの二人結局ああなるのか?」 「さぁね?まぁいいんじゃない。あの子も満更じゃないし。イチャコラさせとけば」 「それはそうと…私目にはチョコレートと言うものは?」 「自分で催促する?まぁいいわ、ほら、美味しくなくても食べてよね」 「大丈夫。俺の胃は鉄で出来てるから」 「減らず口が」 [前へ] [戻る] |