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短編集
3



「だーれがホモだって?」


「うげ!?!」
「きゃっ!」



明らかに此方を見て呆然とする二人。ま、そうだよな。






「ちょっと小岩井さん止めてよ、こんな下半身ユルユルな男とくっつくなんて!コイツ幼なじみでしかも頭が残念だから俺にまとわりついてるだけだって!」

「ちょ、酷くない〜」
「そうなんだー?」

まだ目が疑わし気にこっちを見てる。そうだな……


「それにコイツだったらこれから小岩井さんが教えれば良いじゃん!お前羨ましいな〜、こんな可愛い子にこれから勉強とか教えてもらいほうだいなんてー!」

「もう、虎落君たら!」

頬をピンクにさせて満足げに笑う彼女。
ちょろいな。




「それじゃあまた明日ね!」


「おう!」
「さよなら」


次第に姿が見えなく彼女。



「しかしお前いきなりどうしたんだよ!」

そう言って笑うアイツ。






もう、限界だよ。




「………るかったな」
「え?なになに〜…うわっ!」





驚いたアイツの顔が視界いっぱいに映る。







重ねた唇は外の空気のせいか、心の距離のせいか、…ひどく冷たかった。







「ぇ……いま、」
「ホモで悪かったなこのやろう!!」


ドンっとアイツの胸を叩いて距離をとる。


あぁ、涙で視界が霞んでて……俺今そうとう情けない顔してるんだろうな…。


「でも、しょうがねーだろ、――気付いたら好きになってたんだから…」


いや違うな。気付いたらじゃなくて、小さい頃から惹かれてたんだ。




「人を好きになっちまったんだから、しょうがないだろ!!」



くるりとアイツに背を向けて走る。






もう振り向かなかった。









走って、走って、











「父さん、母さん。俺アメリカ行くよ」


大丈夫。人間の脳は都合の良いように作られているからきっと月日がたてばアイツは今日の出来事なんて忘れるだろう。

いや……都合が良いのは言うだけ言って逃げる俺かもしれない。



でも確かにアイツに俺は……恋をしていたんだ。







(サヨナラ)



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