短編集
2
「転……勤?」
俺は持っている箸を落としそうになった。
「そう…本当に急でごめんね」
母さんが顔をうつむける。
「すまん……だが会社の決定事項なんだ…」
父さんもうなだれる。
「転勤…ってどこに、」
「それが………」
俺はひんやり冷える夜の公園にいた。
ここからアイツの家が近いからだ。
(アメリカ、か……)
両親に着いていきたいし、日本に俺一人を残す不安を抱える両親の気持ちもわかる。
(でも―――)
アイツと離れる。それが嫌なんだ。
結ばれないのは目に見えているから出来るなら親友のまませめて傍にいたい。でもアメリカなんかに行ったら傍どころかそう帰郷しないだろうし、会えるのが数年に一回などになってしまう。
(…俺って嫌なやつ……)
自分で決められないから答えを待っている。いや―――
(アイツが、離れるなと言ってくれることを期待しているんだ…)
ブランコをこぎながら白い吐息を吐いた。
「ーーっし、そろそろ行くか!」
ブランコから降りてアイツの家にーーー。
「じゃあ今日はありがとね♪」
「ううん、此方こそご馳走さま★気をつけてね」
「やだ〜」
俺は動けなかった。目の前の二人を見て。
(…あれが、今の彼女か)
栗色の髪を柔らかく内側に巻き、バッチリ化粧をした可愛らしい女の子がアイツと話していた。確かうちらのクラスでも話題になってた子だったな……。さすがアイツだ。どうやって口説き落としたのやら……。
(…そうだよな、俺お邪魔だよな……)
そう踵をかえそうとした瞬間――
「ってか〜、マジ旭ってホモじゃないんだね」
心臓が、鷲掴まれた感触がした。
「えぇー、何でさ〜」
「だっていつも学校では虎落君と二人でいるじゃん!あたし等出来てるのかとばーっかり考えてたのよ」
「えー、マジか…。最近あんま告白されないかと思ったら……。ま、でも安心してよ〜、ホモとか気持ち悪いじゃん!!」
ホモとか、気持ち悪い
…そう、だよな。現実なんてこんなもんだよな。
男の子同士なんて、社会のゴミみたいにくだらないことだよな…
でも、俺はーーー
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