素直な気持ち 19
数日間、イライラして過ごし、
今週は、もう気持ちを切り替えるベキだと、
自分で自分に言い聞かせ、
朝から一日中、仕事に没頭した。
そんな時――、
小さなノックの後に、思いがけず若菜が入って来て、ビックリした。
本当は…
わざわざ応接室まで尋ねてくれた事が嬉しかったのに――、
若菜の姿を見られて…喜んでいたのに――、
どうしても、素直になれずに…
冷たく 『一体、何の用?』 と、聞いてしまった――。
だが、彼女の答えを聞いて、更に驚いた。
――僕に、謝りたい?
……どういう事だい?
眼の前の若菜は、まるで…
僕に告白して来たあの日にように…
≪一大決心をして来ました!≫
…という表情をしている。
取り敢えず、黙って…
…彼女の話を聞いてみようか――。
話は、何とも…生真面目で正直な若菜らしい内容で…、
全ては自分のせいだと…反省しているらしい。
おまけに…意外な事に…
まだ、僕の事が好きだと――、そう言った。
あんなに冷たい態度で…突き放した僕を…
まだ好きだなんて、本当に君は…変わってるね…。
何も隠そうとせずに、心のまま、想ったままを…
素直な言葉で話す若菜は…僕には眩しくさえある。
――あぁ、そうだ…思い出した。
あの日…若菜が僕に告白して来た日にも、
同じ事を、感じたんだった。
今まで、何度か告白された事はあったが――、
正直、心が動かさせるような事は一度も無かった。
恋人なんてモノ…仕事に邪魔なだけだと…そう思ってたしね。
…僕には必要ないと思ってたんだ。
でも、若菜は――、何かが違ってて…僕の興味を引いた…。
だから、思わず…
『良いよ、付き合っても。』 と――、
自分でも思ってもいなかった言葉が出たんだった。
…そう、まるで今と同じような感じだったね。
緊張した面持ちをしながら…
一生懸命に、一言一言に、心を込めて…誠心誠意、話している。
ただただ情熱をぶつける訳でもなく、でも必死に…
本物の言葉で…真心を持って話している。
そんな若菜を…、
愛おしいと、……初めて思った。
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