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素直な気持ち 18



【雲雀さんサイド】



―――全く、彼女は―――、

自分がどう思われてるか、全然自覚がなくて、…困る。




いちいち、言葉で言ったり、行動で現さないと…
…解らないのかい?



僕の性格を知ってれば…想像が付きそうなものだけどね…。

僕の私的テリトリーである…
応接室に自由に出入り出来るということが、
どんな意味を持ってるか…

群れるのが大嫌いな僕が、
傍に人が居る事を許しているのが、どんな意味なのか…



そんな事にも、気がつかないのか――、若菜は…。







そう思っていたけど…
あの日、泣きながら応接室を飛び出して行った若菜を、
無言で見送って…。
自分でも意外だったけど…、――少し後悔した。

(いくら忙しくても…もう少し、構ってやるべき…だったか…)





だけどもう…若菜は、僕に愛想を尽かして…出て行ったんだ。
――気がつくのが、遅かったようだ。

初めて…自分からメールをしてみようか?
と、ほんの少しだけ考えたけど…。
今更…何を言えば良いのか解らなくて…止めておいた。

僕のプライドが邪魔をして…
素直に、僕が悪かった…とは、絶対に言えないしね。








…次の日からの学校は、最悪の気分だった。

苛々するので、
ついつい草食動物の群れを大量に咬み殺して、
気を紛らわせたりしたけど――。

全く…気分は晴れない。  
…余計にイライラが募る気すらする。




今まで―
『僕の仕事には、何の役にも立たない』
と、思ってた彼女だけど、
放課後に応接室に来て、僕の傍にいるだけで――、
どうやら僕は…かなり満たされていたようだ。


…それに、若菜は、
僕好みのお茶の入れ方を習得してたから、お茶も美味しかった…。
最もそれは、久々に草壁が入れたお茶を飲んで…、
彼女のお茶の美味しさに…やっと気がついたんだけどね。

(草壁は、もう少しマシなお茶を入れると思っていたけど…、一体どうしたんだ?)






何時の間にか、放課後の一時(イットキ)を
若菜と一緒の空間にいるのが、当たり前になってて…
まるで、空気のように…あるのが当たり前と思っていたから、
若菜が来ないと、自分がどう感じるかなんて――、
考えた事も想像したことも無かった。



毎日毎日…
やるべき事が多過ぎて、眼の前の仕事に忙殺されて…、
彼女の事を、思い遣る事なんて出来ていなかったし、
自分の中で、若菜の存在がこんなに大きくなっていたなんて――、
そんな事にも気が付かなかった。


だけど、もう何もかも、――手遅れだ。
 






泣きながら、応接室のドアを戸惑いがちに開けて、
…飛び出して行った…若菜の最後の姿が浮かんだ。




――色々と…悪かったね。


だけど、僕はこんな性格だから…。




――実際に…君に謝るなんて…出来ないけど。

 









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