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素直な気持ち 16




…こういうのを、
『雨降って地固まる』って言うのかな?



ちょっとした揉め事があったお陰で、
お互いの気持ちを再認識出来たし、
明らかに…雲雀さんとの距離が近くなった気がする。

だって、雲雀さんと、こんなに長く話すのは、初めてだ…。
それに、…彼の少し優しげな表情も、初めて見る。




彼は『僕は変わらない』って言ってたけど、
実は私に歩み寄ってくれた…気がするな。

普段、近寄り難くて、話しかけるなオーラを出してる時は…
きっと、本当に仕事が大変だったからなんだろう。

――彼は、嘘は付かない人だしね。


きっと、彼なりに…考えてくれたのかな?
…そう思うと本当に嬉しい。






「さっきから、何二ヤ二ヤしてるの。」



「えっ…いえ、別に…」



…何を考えてたかなんて、言えないよね?  
言ったら、きっと否定されるだろうし…。







「…まぁ、いいや。」
「…もうすぐ下校時間だし、帰るよ。」



「…えっ…?」



…帰るって?  

…あの、もしかして、一緒に帰ってくれる…とか? 





いや、…まさかね?






「何、アホ面してるの。」
「…ほら、早く準備しなよ。」



「…アホ面なんてしていません。」
「あの、雲雀さんは…どうするんですか?」



「帰るよ、って言っただろ?」
「…聞こえて無かったのかい?」



「ええと、あの…もしかして一緒に?…とか…?」








「もう下校時間が近いし、そろそろ暗くなって来る時間だからね。」
「…家まで、送ってあげる。」
「若菜も一応、女の子なんだし。」



「…ま、また…一応、とか……ひ、酷いです…。」






「……何?…泣くほど、酷い事を言ったかい?」



「…違います…。これは…嬉し涙です。」
「まさか雲雀さんと一緒に帰れるなんて…嬉しくて。」



「…そう…。」
「やっぱり…若菜の泣き顔を見るのは…悪くないね…。」




また…聞いたことが無い程の…優しい言い方で、そんな事を……。
彼の優しさが…嬉しい。
  

…お陰でさっきから、泣き通しだ…。





やっぱり、雲雀さんが好き!  
…どんな彼でも…大好き…。

…暫く…涙が止まらなかった…。








「…そろそろ、本当に帰るよ…。」


少し溜め息をついた彼が、優しく声を掛けてくれる。



思いっきり涙声で

「…はい…」

と答えるのが…やっとの私だった…











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あきゅろす。
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