[携帯モード] [URL送信]
異常事態 3



今、私の眼の前で、繰り広げられてる光景は、
――“世にも稀な光景”と言っても良いと思う。


恭さんと一緒に、ココ、風紀財団のアジトの中の広い和室で、
様々な反物を合わせているのは、
つい先日、恭さんがプロポーズした相手…裏世界で「マリィ」と呼ばれている女性だ。




めでたく『許嫁』となった彼女を多少?強引に伴って
久しぶりに風紀財団のアジトに帰った恭さんは…
馴染みの呉服屋に連絡をし、
店にある女性向けの反物を大量に持って来させた。


呉服屋は別室で待たせてるし…、
着物にする反物が決まったら、即採寸もするだろう…と思い、
先程から、お二人の傍に、控えているのだが…。





恭さんが………甘いっ!  

こんなに優しい雰囲気の恭さんなんて…
見た事が無いっっ! 




――あまりに、レア過ぎる光景だっ!






「結婚式用の着物は、ちゃんとした所で最初から作らせるから。…心配しなくて良いよ。」




(…え…最初から作らせる?…もしかして?)



「あの、もしかして…反物を織る所から作らせる、とか…ですか?」




「ん?…そうだよ。当然だろ?」







「えっ…あの、それって…」




「あぁ、好きな織物があるなら希望を言いなよ?でも、結婚式に相応しい物でないと困るよ。」
「いくら好きでも…木綿の絣なんて言われたら、許可できないよ?」
「そうだな…ベタだけど、京友禅辺りはどうだい?」






(やっぱり、反物を織る所から注文するつもりなんだっ!)
(彼は、一体いくらお金掛けるつもりなんだろう)





「あ、あの…私…。既に出回ってる、反物の中から選んでも良いと思うのですが…」




「……君は、何を言ってるの?そんなのダメに決まってるじゃないか。」
「君が結婚式で着る着物は、特別でないと…絶対にダメだよ。」

「ちゃんと、良い糸を選んで最高の生地を創らせる。」
「君に相応しいデザインをさせて、腕の確かな職人に織らせて…特別な物に仕上げさせないとね…。」
「――君には、それだけの価値があるんだし。」






(…また、真顔でそんなコトを…!)
(傍で草壁さんだって聞いてるのに…!恥ずかしい…。)

(いや、嬉しいけど…!で、でも照れるっ!)


(ほら、草壁さんが…顔をほんのり赤くしてる。)
(…必死に隠そうとしてるけど…。)








「今度、織物の産地や呉服屋を一緒に見て周ろう。その時にも、また幾つか買えば良いよ…。」
「取り敢えず、今日の所は、この中から選んで決めようか。」





(そんなにたくさん要らないと言っても…)
(彼の事だから…きっと強引に決めてしまうのだろうな…)

(それに、そんな事を言ったら、不機嫌になって草壁さんに迷惑かけそうだし…)
(ここは大人しく買って貰うのが、得策だよね?)





「――はい。解りました。」













[*前へ][次へ#]

3/17ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!