異常事態 2
「――ねぇ、そっちの反物も…合わせてみなよ。」
「えっ? …えっと、コレですか?」
「そう、それだよ。…それも、きっと君に似合うと思うよ。」
(そんな真顔で、そんな照れる事を)
(…でも嬉しい…かも。)
「…ど、どうですか?」
「うん。やっぱり似合うね…。とても良い。…それも、貰おうか。」
「えっ…!あのっ!もうさっきから随分と沢山選んだ気がするのですが…まだ買うのですか?」
「…当たり前だろう?まだ、ほんの7つ程度しか選んでないじゃないか。」
(…7つ程度しか…?)
「あの…?一体どれぐらい、お着物を作って下さるつもりなんですか?」
「ん? 今日は、当面…必要な分だけだからね…。また追加は頼むとして――。」
「普段着用に20着。 訪問着や色留袖を10着。」
「それに念の為、パーティ等でも使えるの振袖を5着ぐらいで良いだろ。」
(…それって、凄い量なんですが…)
「…あのぅ…そんなに一度に?」
「…何? 今日、呉服屋に持って来させた物では、不満かい?」
「トンでも無いです!…十分に素晴らしい物ばかりです!…というか、全て高級品過ぎませんか?」
「…これの何処が、そんなに高級品なんだい?皆、普通のモノばかりだろ。」
(…いえ、それは…貴方の基準です。)
(世間では、高級品と言われる品々ですよ…ιι)
「柄や、品質が気に入らないなら、別の物を持って来させようか…」
(どんな凄いのを持って来られるか怖い…)
(大人しくこの中から選んだほうが、良さそうね。)
「いえっ!大丈夫です!…この中で十分に選べます!」
「…そうかい?…ん?そっちのソレも良いね。合わせてみてよ。」
「…はい…コレですね…。――どうでしょうか?」
「うん。それはとても似合うね。」
「…本当に詩織は何でも良く似合う。選び甲斐があるね。」
「――あ、有難うございます…。」
(……………。)
……何なんだ、一体コレは……。
眼の前に居るのは……
本当に“あの雲雀恭弥”――本人なのだろうか?
穏やかな優しい笑顔で、
女性に着物を選んであげる恭さんなんて…!!
――有り得ないだろう?
――これは、一体、誰なんだっっ!?
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