決定事項 2 「…い、嫌です。私は、この仕事を続けたいです。」 「…無理だね。――君は、僕の妻になるんだ。」 「今までのように、中立的な立場での情報屋では…なくなる。」 「付き合いも偏るし、仕事の依頼だって減る」 「それに…僕とは全くの別行動で、仕事をするなんて…、許す筈がないだろ。」 「どうしても仕事をしたいなら、…風紀財団で仕事をしたら良い。」 「尤も、当分の間、…君には、僕の傍で出来る事以外は…させないけど。」 「…………。」 ――確かに…彼の言う事は間違っていない。 結婚したら、今までと同じではいられないだろう…。 【私に仕事を依頼する=雲雀さんと関わる事になる】 …という状態になるのを恐れて…、 仕事の依頼なんて、来なくなるかも…しれないし…ιι ……だけど……。 「…そんな。急に、そんな事を言われましても…。それに、この仕事は…。」 「――知ってるよ。…君の父親から受け継いだ…仕事なんだろ?」 「はい。最初は、急死した父の残した仕事を…」 「最後まで仕上げて先方に渡す為に、一時的に引き継いだ…だけなのですが。」 「“何時か、私と一緒に仕事をしたい”と言ってた父の気持ちを考えて…」 「正式に後を継いで、情報屋になりました。」 「…君の『目的』は…もう達成されたんだろ?」 「だったら、もう引退しても問題ない筈だ。」 ……流石だ……。 どうやら彼は…何もかも、知ってるみたい… そんな昔の個人情報まで…調べ上げられていたとは…。 やっぱり風紀財団の情報収集力は、もの凄く高いようだ。 「…でも…、急過ぎます…。」 「悪いけど、僕はもう…待てないんだ。」 「明後日の仕事が終わり次第、君を風紀財団のアジトに…連れて行く。」 「…えっ!? 風紀財団のアジトへ?」 「そうだよ。アジトに戻って、色々とする事もあるしね。」 「君が…、今、仕事の為の拠点にしている…」 「世界数か所の部屋の荷物も全て整理して、僕のアジトに来て貰うよ。」 「…全て…ですか?」 「うん。引退すれば、今の仕事の為の拠点は、要らなくなるだろ?」 「――日本のもイタリアのも、余所の国のも全部だよ。」 「……そんな……。」 「――まぁ、例え君が嫌がっても」 「…僕のほうで指示を出して、全部片付けさせるけどね。」 そう言って、二ヤリと薄く妖艶に笑う彼…。 ((…!!?…)) ――何を言っても、嫌だと言っても… 強引に引退させるつもり…みたいιι …彼の妻になるんだし…仕方ないの…かな? ――それにしても、急な無茶振りだけど…。 眼の前の彼は…本気みたいだし…。 抵抗しても無駄な足掻き…かもね…ιι 「……わかりました……。」 「そう。」 僅かに笑う雲雀さん…。 「じゃあ、残ってる2つの仕事のレポートは明日中に仕上げて、明後日までに、先方に届ける事。」 「最後のは、明日の朝一番でキャンセルの連絡をする事。――良いね?」 「………。…はい。」 もう、彼の中では “決定事項”…になっている事柄には、逆らえない。 …仕方ない…ね。 正直、未練もあるし…急過ぎて、心が付いて行けないけど…。 そんな事、彼には言えないし。 ――言っても聞いてくれそうには…無いし。 [*前へ][次へ#] [戻る] |