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* 最強育成計画 * <アラウディ> 3




僕自身にも…
僕が“今、どんな存在なのか”は良く分らない。

幽霊とか、不成仏霊とかいう“迷っている霊”の類の物ではない事は確かだ。

僕は、別に地上世界に未練もなければ、
誰かに恨みも抱いてはいない。

地上に幽霊として現れる理由が…僕にはない。




一応、対外的にはリングに宿る“意識”という説明をしているが
いわゆる…精霊という類に近いのだろうか?

敢えて言えば、それが一番近いようにも思えるが…
でも、僕は実体(肉体)を持つ事も出来るし、
自分の意思で物を食べる事も出来る。

…まぁ、別に食べなくても平気だが。





つまり自分の意思で、
一時的に三次元的な肉体を持った存在になる事が出来るという事だ。


でも同時に…僕が普段ジョット達と一緒に居る“空間”は
…時間が止まっているように感じる所だ。
あそこは明らかに三次元の現象界とは違う。

今の僕は…
死んでも尚、しっかりとした“僕という個性”があり、
魂がある状態…なのは確かな事だ。

実際、僕の生前の個性のまま
思考する事が出来ているのが…何よりの証拠だ。




もし僕達が完璧な霊界の存在であれば…
又は、本当の精霊であるならば…
三次元の現象界である地上で、肉体という実体を持つ事や
飲食をする事など出来ない筈なのに…何故か出来る。

今の僕達は…
とても不思議で、通常ならば有り得ない状態なのだ。




これは僕の勝手な憶測だが…
恐らくは、この世界に多大な影響を与えるボンゴレリングの
所持者であった事で…何か特殊な力が働いているのだろう。

普通には説明する事の出来ない、
何かの意思とも言える物の影響があるのかも…しれない。





こんな事は考えて解かる物でもないし…
僕としては現状を受け入れて生きるしかない。
(この状態を“生きている”と言えるなら、だが)

きっと、僕達には何か役割があり、必要があって
…今のこの状態なのだろう。


普段から、この件に関して深刻に考えるような事はしていない。
僕はただ…“現状に向き合い、今を生きる”だけだ。










暫くの間、無言で何かを考えているようだった二人の内
…長男の政紀が…。


「…あの、その事は…父も知っている事ですか?」



「知っているよ。」
「彼の目の前で出現したり消えたりして見せた事もあるしね。」



「そうですか…」








「そんな事より…」
「この施設は、誰がどんな風に使ってるのかい?」



恐らくトレーニング・ルームであろう建物を見つつ子供達にそう尋ねると…



「ココは、主に僕達が体力作りをしたり色々な鍛錬の為に使っています。」

と政紀が答える。




「…君達の鍛錬の為?雲雀恭弥が使っているのではないのか。」



「父さんが本気で遊ぶと、こんな建物は簡単に壊れてしまうので…」
「これは僕達用なんです。」



そう言われて良く考えれば…確かにそうだ。
いくら頑丈に作られていても、
この程度の物を壊すのは彼なら造作ないだろう。







「僕と拓弥の二人でバトルごっこをする度に庭が荒れて…」
「その…色々な人にとても迷惑を掛けたので、」
「父さんと母さんが相談して、これを建ててくれました。」



「…ふぅん…。」





つまり…この二人で暴れると…
それだけの破壊力がある、という事か。

前回逢った時に、将来有望そうな子達だとは思ったが
…実際は、どの程度の実力があるのだろうか。



「君達は、父親にバトルの稽古を付けて貰ったりしているの?」



そう尋ねると…二人でチラリと顔を見合わせた後に
…政紀のほうが口を開く。



「年に2,3回位、父さんに少しだけ相手をして貰いますが、」
「毎回、全く歯が立たないし…ロクな反撃もさせて貰えません。」
「父さんからは“鍛えてあげようと思えるレベルじゃない”って言われてるので…」
「まともな相手は勿論、指導も…して貰った事がないんです。」



上の子が、悔しさを滲ませながらそう話すと…
隣の下の子は、拳をグッと握りしめる。

相当に悔しそうな顔をしているな。
正面から相手をしてくれない父親にムカついているのが良く解る。








その様子を見ていて…ひとつ閃いた。

この子達の実力も見てみたいし
…暇潰しにもなりそうなアイデアを二人に話をしてみる。



「僕が…時々、君達の相手をしてあげても良いよ。」



(……っ!……)






今まで殆ど黙っていた次男の拓弥が、
とても真剣さを帯びた眼を、僕に真っ直ぐに向けながら口を開く。



「…貴方が…僕達を鍛えてくれるという事?」



「一度、君達の実力を確認してみて…モノになりそうならね。」



「貴方の指導で父さんに対抗できる位に強くなれる?」



「それは君達次第だ。」
「僕のやり方に、君達がちゃんと付いて来られたらなら、」
「…ある程度強くなれるのは間違いないだろうね。」



(…………。)



僕の返答を聞き、二人で顔を見合わせて…一緒に頷く。

気合いの入った二人の男の子の表情を見て
…僕の心の中の何かが、ひっそりと反応をした。















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あきゅろす。
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