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虹の彼方 57




食事を終えて…お部屋に戻り…
湯船にゆっくり浸かりたいという恭弥さんの為に、
バスタブにお湯を張る。





恭弥さんがお風呂を使っている間に、
部屋中をウロウロと見て回り…
今夜から寝られそうな場所を探してみた。

ベッドが1つしかない以上、
私が寝る場所は別に探す必要がある。

簡易ベッドを1つお部屋に入れて貰うという事も可能だが…
恋人&婚約者であるのに、
そんな事をしたら…絶対に怪しまれるから、それは出来ない。



そう思って、色々と見て周るが…
やはりソファーぐらいしかない。

幸い、かなり大き目のゆったりしたソファーがあるので
それを使えば良いだろうか…。







そう結論を出した所で、
丁度恭弥さんがバスルームから出て来た。

白いバスローブ姿の…
文字通りの『水も滴る良い男』状態。


少しだけ目のやり場に困るというか…
恥ずかしさを感じるが、ここは我慢して平静を装う。

恋人と一緒に長期旅行に来ているのに
…あまり狼狽えているのは変だしね。





濡れた髪を片手で掻き上げつつ近づいて来た…
色気満載の恭弥さんから、声が掛かる…



「…優衣…、君も…お風呂に浸かって疲れを癒しておいで。」




寝る場所は何とかなりそうだと安堵しつつ、
私もお風呂を頂く事にした。

旅の疲れを癒すように、ゆっくり湯船に浸かり…リラックスする。
少し時間を掛けて…バスタイムを楽しんだ。






++++

++











恭弥さんに見られるのは少し恥ずかしいが、
バスローブ姿よりはマシだと思い
旅行用に持って来た就寝用のパジャマに着替えた。

今回の旅行の為に購入した
シルクの大人っぽい印象の淡いベージュピンクの物だ。

変に子供っぽいのを持って来なくて本当に良かった。
これならば、部屋着としても通るデザインだし
…恥ずかしさも半減する。



パジャマの上から薄手のカーディガンを羽織り、リビングに戻ると
白ワインを飲みつつ、
現地の新聞を読んでいる恭弥さんの姿があった。

早速、現地の情報収集でもしているのだろうか?
そう思いつつ近くに行く。

と、私に気が付いた恭弥さんが…



「ワインが冷えている。…君も、飲みなよ。」

そう言いつつワイングラスを用意してくれる。



「…はい。…頂きます。」




ゆっくり近寄り、
同じソファーのやや端に座ろうとしたら…
それに気が付いた恭弥さんが、
ワインを注ごうとしていた手を止めて、一言。



「…優衣、もっとこっちに寄って。」



今の私はパジャマ姿だし、気恥ずかしさがあって…
さり気無く距離を取ろうとしたけれど
やっぱり、バレたようだ。

仕方ない…
恋人として普通の距離だと思えるぐらいに近寄ろう。

恭弥さんの直ぐ隣まで移動し座ると
満足気に見て、再度ワインを注いでくれた。







軽くグラスを触れ合わせ乾杯をし、ワインを頂く。

…ん…。

これは…とても美味しい。



お風呂上りで喉が渇いていたせいもあり
…喉を通る液体の感覚が心地良い。






私が直ぐに一杯を飲み干したのをみて、
再度…ワインを注いでくれつつ尋ねられる。



「このワインは気に入ったかい?」



「はい。…喉越しが滑らかで。ほんの僅かに甘味を感じる辛口で。とても美味しいです。」



「そう。気に入って貰って良かったよ。」
「ホテルにとっておきのを用意させた甲斐がある。」





そう聞いて…ふと、飲んでいた手を止める。

もしかして…
とんでもないお値段のワインなのではないだろうか…




「…あの。…このワインは?」



私の問いに答えるように、
ワインボトルを差し出されたので受け取り
…ラベルを見て驚いた。


ドイツでは凄く有名なワイン農園で作られた物で…
かなり年代物の白ワインだ。

これは…滅多にない逸品の筈。







この1本で一体幾らしたのだろうか…と考えると、
あまりドンドン飲むのが申し訳なくなった。


そんな私の気持ちに気が付いたのか…



「今日は欧州に来て最初の日だからね…特別なワインを用意させたんだ。」
「…ほら、遠慮は要らないから、好きなだけ飲んだら良い。」



話しつつ、私のグラスに再度ワインを注いでくれた。







「…あ、有難うございます。でも…あの…恭弥さんも飲んで下さい。」



「僕は、さっきから十分飲んでいるよ。これは既に二本目だ。」
「足りないなら、もう一本持って来させるから…どんどん飲んだら良い。」



「いえ…私は、これで充分です。」





グラス一杯分でも何万円もするようなワインだと知ってしまって、
さっきまでの勢いが消えてしまった。

その後も、少し遠慮する私に
恭弥さんはどんどんワインを勧めてくれて

結局…なんのかんのと結構な量を頂き
…良い気分になった。










ホロ酔い加減になった私を見て、
恭弥さんが声を掛けて来る。



「今日は…少々酔ったようだね。」



「…はい…。…こんなに酔った感覚があるのは久しぶりです。」



「君は、ある程度は酒に強そうだが…一気飲みをすると酔うタイプかい?」



「…ええと…はい。特にワインを一気に大量に飲むと…酔い易いですね。」
「それに…今日は旅の疲れも影響しているかもしれません…。」
「…恭弥さんは…酔わないのですか?」



「余程の量を飲まない限りは、酔わないな。」



「…余程って、…どれぐらいですか?」



「そうだな…ワインなら3・4本程度なら全く大丈夫だ。」
「酔う程飲んだ事はないが…恐らく7・8本辺りで少しは酔いが回るんじゃないかな。」







「…そんなに…強いのですか…。凄いですね…。」



「必要な時には酔ったフリはするが、本当に酔うまで飲む事は滅多にないよ。」



「…フリ、ですか?」



「そう。その方が良い場面だってあるだろう?」



「…そう…なんです、ね…。」





酔いが回っている頭で考えている為…
あまり良く解らないけれど、そんな場面が過去にもあったし
今後もあるかもしれない…という事なのだろうな。















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あきゅろす。
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