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虹の彼方 98




どんな手段を取ったのかは解らないけれど、
草壁さんが来た翌日には、
新しく見つけたパーティに、潜入出来る事が決まったと連絡が来た。

やっぱり…風紀財団って、凄い…。




そして、その2日後…
夕方からあるパーティの前に
今回のターゲットについて再度確認をする事になり
恭弥さんと一緒に資料に目を通す。



今回のターゲットは二人いる。

第一のターゲットは初老の男性。コードネームは「アレックス」

そして第二のターゲットは
その男性の甥にあたる若い男性で…コードネームは「パオロ」




基本的には…
第一ターゲットの“アレックス”の方を重点的にマークして動く。

アレックスの年齢は60代半ば。
家族は、奥さんが1人だけ。子供はいない。

5歳年下の弟が居たが既に亡くなっている。
その弟の息子が…第二ターゲットの“パオロ”だ。
パオロはまだ20代で独身。




資産家のアレックスは、自分には子供がいないので
弟の子供であるパオロを養子にして跡継ぎにする話があるらしい。

つまり…今は叔父と甥の関係の二人だが、
近々、義理の親子になるかもしれない…という関係。



今までの調査では、恐らく第一ターゲットである
「アレックス」の方が情報を管理しているのではないかと思われるけれど
もしかしたら、第二ターゲットの「パオロ」も
情報を掴んでいるかもしれないので、両者を意識して動く事になっている。






アレックスは…
今回のパーティの主宰者と同じぐらいに有名な「街の名士」のひとり。

事業はとても上手く行っているし、資産家でもある。
旧貴族階級ではないが、
それに準じる“ボルゲーゼ”という階級の古い名家の出身者だ。

親から相続をした広大な面積を誇る
ワイン用の葡萄農園とワイナリーも持っている。

そして…この地方の有力者の中では珍しい…
『完璧な一般人』だという事だった。






今回、私達が来ている南イタリアの地方は
マフィアの発祥地とも言われている地域であり
昔も今も…政治にも経済にも…
裏は勿論、表でもマフィアが絡んでいる事が多い地域だ。

故に、一見、全くマフィアには関係のない人に見えても
…実は裏では関連の人物…という事が殆どだ。

そんな中、アレックスは本当にマフィア絡みの商売はしていなくて
まともな清い仕事ぶりであるという事だ。

この地方の資産家&有力者の中では少し変わった人
…という事になるかもしれない。


正義感の強い性格であり
“ブラックマネーには絶対に関わり合いになりたくない”という
強い信念を持っている人物であると…資料に書いている。




昔からの友人達や仕事で付き合いのある人々の中には
当然のようにマフィア絡みの人々が多くいるので
…そんな環境の中で、
自分自身はブラックマネーには関わらないようにしつつ
友人関係や仕事の関係は
崩さないようにする事に苦労している面があるらしい。




アレックスの唯一の親族である、甥のパオロに対しても
『裏社会と関わらずに生活出来るように』
…と、自分の会社の役職を与えて面倒を見ているようだ。

尤も、若いパオロは…そんな叔父のアレックスの事を
『小言が煩い叔父』という感じで少々煙たがっているらしい。
ただ…基本的には、お互いに『大事な身内』なので
仲が悪いわけではない、との事。







今回のパーティでは、
アレックス夫妻が参加するのは確認がとれてるが
甥のパオロは、まだ参加するかどうか解らないらしい。

パオロは将来、アレックスの跡継ぎになる予定なのだから
街の名士が集まるパーティには参加した方が良い筈だし…
来る可能性の方が高いだろうと予測はしている。


アレックスの会社関連の人物や友人達
パオロの友人関係の資料にも目を通し最終確認を終えた。







今回のパーティは夜にある。

この街では有名な人物の主宰するパーティなので
参加人数もそこそこ多いようだ。

この人物は、年に数回…このようなパーティを開き
友人達との交流を深めると同時に、新しく知り合った人物を旧友に紹介したりして
新規事業に繋がるような話の切欠にしているらしい。


そして…
そんな表の顔と同時に、裏社会の人物達とも上手くやって行く為に
パーティでマフィア関連の者や
ブラックマネーを動かしているような人物達とも交流しているようだ。






誰が来ているのか
メンバーの調査が完全には終わっていないパーティー。
取り敢えず、そこそこの人数がいるのは間違いない。

そんなパーティにどんな服装で行くべきか迷ったが…
ここは目立つ事を優先にして
アレックスやパオロの印象に残るのを第一にしようと考えて
…着物で参加する事にした。







パーティ会場は、主催者宅の広い庭園の一部を
照明で明るく照らす形になっている。

主催者に挨拶を済ませ、取り敢えず会場全体が見渡せそうな位置に
恭弥さんと一緒に居て様子を見る事にした。



「思った以上に参加者が多いようですね。」



「そうだね。おまけに…殆どの人間が遅刻をして来ている。」
「…これでは、正確な参加者の人数すらも解らないな。」



「かなり自由な雰囲気ですし…途中で帰るような人も多そうです。」



「あぁ。そんな感じだね。」





そんな事を話つつ、大勢の中からアレックスを探す。

…と、居た!

資料の写真で見たままの…
温厚そうな初老の男性が夫人と一緒に居るのを発見した。



「…恭弥さん。…向かって左の木の傍に…」



「僕も今気が付いたよ。」



「写真で見た通りの…優しそうな人ですね。」





アレックスは、穏やかな笑顔で
夫人と、隣にいる友人らしき人と会話をしてる。

資料通りの…
真面目で優しい性格が伺えるような佇まいの人物だった。












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あきゅろす。
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