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虹の彼方 97





英国を発つ前日に、
恭弥さんにキスをされて以来、何度かキスはしたし
挨拶としての額や頬へのキスには、かなり慣れて来た所でもある。

けれど…正直な所はまだ、かなり恥ずかしい。

ましてや、こんな街の真ん中で…
それも…目の前にディーノさんがいるというのに…!




本当に…顔から火でも吹き出すのではないかと思う程に
物凄くっ!恥ずかしいっ!!



でも、それを悟られないよう…
表情や態度に出さないようにしないと…と必死になって、平静を装う。

完全に隠し切れてはいないだろうけれど…
こんなシーンで、女性が恥じらうのは普通の事なので
極端に挙動不審にさえならなければ…
怪しまれる事もないと…思う。



頭の中で、そんな風に必死に冷静に考えて
何とか…その場を凌ぐ。









ディーノさんは…目の前で私達がキスをしたのを見て
一瞬“とても驚いた!”という顔をした。

…けれど…
その後…頭をかきつつ…



「…恭弥、…失恋したばっかのオレに見せつけるなよ…」



苦笑いしつつ、そう冗談っぽく言った後は
…妙にすっきりした顔になり…



「仲良さそうで、何よりだぜ!」



と笑った後に…
少し真面目な顔をして私の方を向き…




「…優衣…。恋人なんだから、当然知ってるとは思うが…。」
「恭弥は、一見冷たそうに見えるが、実は結構優しい奴だし…当然、頼りにもなる男だ。」
「扱い難い所もある奴だけど…基本的にはイイ奴だから…宜しくな。」



にっこりと、優しく穏やかな笑顔でディーノさんに言われ
…思わず知らず…

「…はい。」

と答えてしまった。








「オレの大好きな二人が、幸せになってくれるのは…嬉しいぜ。」



笑顔のディーノさんに向かって、恭弥さんが
…如何にも面倒そうに…




「…もう良いかい?そろそろ行きたいんだけど。」



「…恭弥…、お前…本当につれないなぁ〜。」



「僕は、優衣以外の人間と群れる気はないよ。」



「あ〜そうかよ。…要するに、オレが邪魔なんだな?」



「解ってるなら、さっさと何処かに行ってくれる?」



「…ったく。…わっーたよ。…それじゃあな恭弥、優衣…!」







明るく手を振りながら言って
…しっかり誤解をしたままディーノさんは去って行く。

そのディーノさんの背中に向かって
相変わらずの冷めた声で、恭弥さんが声を掛ける。


「次に会った時は、ちゃんと他人のフリをしてよね。」




…ディーノさんが、ちょっとだけ振り返り…


「あぁ、分ってるぜっ!」













太陽のように明るく感じる
ディーノさんの背中が徐々に遠ざかって行くのを若干、茫然としながら

…見送っていたら…


(…あっ!…危ないっ!…)

…あぁ…
段差も何も無い所で…転んでしまった…(汗)



隣で、恭弥さんが
呆れたような溜息を吐いたのが解かった。


私達の視線を感じたらしいディーノさんが
急いで立ち上がり、こちらをチラと照れくさそうに見て又歩き出す。

その姿を見て…
ディーノさんの部下のロマーリオさんに聞いた話を思い出した







ディーノさんは、見掛けは絵に描いたような
キラキラ王子様みたいで素敵な人だし、性格も優しいし思い遣りもある。

それに…強くて、お金に不自由する生活でもないし
正直な所…結構モテるらしい。



部下を連れてパーティに参加すると
…毎回、大勢の女性が寄って来るのだとか。

そして、実際に今まで随分と多くの
“女性達の方から”アプローチをされて来たようだ。



…で…
そんな人達の中で、ロマーリオさん達、部下から見ても
素敵だと思うお勧めの女性と
付き合ってみようとした事もあるらしいのだけど…

いざ、デートという場面になると
…先程のようにドジッ子ディーノさんになる為…
部下がいる時の、キリッと格好良いディーノさんとの
あまりのギャップに驚いて…結局逃げられてしまうのだとか。


でも、それが解っているからと言って
デートにロマーリオさん達が付いて行く訳にも行かず
一体、どうしたものか…と悩んでいた話を聞いた事がある。




あの時にロマーリオさんは…
『ボスの…恰好良い所だけじゃなく…』
『ドジな部分まで、丸ごと受け入れてくれる女性はいないものか』
と大きな溜息を吐きつつ話していたけれど
今回もきっと…そんな相談をリボーンにしたのだろうな。


で…リボーンの詳しい考えは判らないけれど
私を推薦した、という事なのだろうか。


「…………。」








色々な事を考えつつ、無言で
その場に立ち尽くしたままの私に、恭弥さんから声が掛かった。



「さっき、跳ね馬が言ってた事だけど。」
「…君も、あの話は…初耳という事で間違いはないね?」



「…はい…。まさかリボーンが…あんな話をディーノさんに持ち掛けているなんて。」
「…正直、とても驚きました。」



「そう。」



私の返事を聞いて、ひとこと返した後
…恭弥さんは何かを考え込んでいるようだった。




リボーンの考えている事が解らないのは
何時もの事だけれど…

恭弥さんの考えている事も…
同じくらいに解らない事が結構多い。


特に今の行動には?が一杯だ。

どうして…ディーノさんにあんな事を言ったのだろうか?
完璧に誤解するように
…わざわざキスまでして見せたのは何故だろうか。



ボンゴレにとっても、風紀財団にとっても…
特別に友好的であるキャバッローネのボスに対して
『完璧に誤解をさせるような事』を
わざと言った理由がある筈だけれど…私には、それが解らない。


けれど…何となく…
その理由を聞く雰囲気ではないと感じてしまい…
私が、その疑問を口にする事は…無かった。










その後、ホテルに戻ると…草壁さんが待っていた。

色々と調べた結果…
ターゲットと接触の出来そうなパーティがある事が解ったらしい。



ただ…そのパーティは、裏社会絡みの者達が
多く出席する予定になっているようだ、と。

大急ぎで調べてはいるが
出席メンバーの正確なリストは、まだ無いとの事だった。


ターゲットに接触するチャンスを作れるかもしれない…
けれど、同時に裏社会の者達もいる場なので
…もしかしたら…少々危険があるかもしれない。

それで、恭弥さんの判断を仰ぐ為に来たらしい。






「これが、今回のパーティの主宰者です。」

草壁さんが、人物写真を出して説明をする。



「彼は、この地方の有力者で、一般人です。」
「そうは言っても、この地域で本当の意味での一般人なんて殆どいませんので…」
「この人物も多少の裏との繋がりがあり…パーティにはその手の人物の出席も多くあるみたいです。」
「ターゲットとパーティの主催者は昔馴染みの友人ですので…何時ものように招待された、という事のようです。」





草壁さんが用意した、
そのパーティの資料に目を通しつつ…恭弥さんが



「パーティの主催者は…この地方一帯で定型的なタイプの“新興成金の有力者”のひとりのようだね。」



「…そのようです。」



「この地域で暮していて、全く裏と繋がりがない有力者なんて殆ど居ないだろうし…」
「これ以外の、どのパーティに行ったとしても全く裏と繋がりのある者が居ないという事もないだろう。」



「そうですね。」



「だったら…多少、出席者の中の裏の人間の割合が高くても構わないよ。」








恭弥さんの言葉を聞き、草壁さんが
やや迷ったような顔で…チラリと私の顔を見た後に


「まだ、出席予定者の半数以上は調べが付いていませんが…大丈夫でしょうか。」



「まぁ…何とかなるだろう。もし危険そうなら直ぐに帰れば良い。」



「解りました。では早速、このパーティに潜入できるように工作をします。」



「頼んだよ。」







…という事で、
イタリアで最初に潜入するパーティが決まった。


先ほど草壁さんは、
裏社会絡みの人間が多く出席する予定になっているパーティに
私が行くのは、少々危険がある…
と、心配をしてくれたのだろうけれど

ターゲットとの貴重な接触機会を生かし
少しでも仕事が前進するようにする事を優先する形になった。














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