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虹の彼方 96





ディーノさんは、恭弥さんに強く手を弾かれた事で
…少し憮然としている。



「…なにすんだよ、恭弥…。」
「優衣は別にお前の物って訳じゃねーんだし…オレが誘っても良いだろ?」



「優衣は僕の恋人だ。…つまり僕の物だよ。」



(…っ!!…)




…き、恭弥さん…
そんな事(設定)をディーノさん相手に態々言わなくても…。

というか、こんな場面でそんな事を言ったら
…本気に思われてしまう。



…あ…ディーノさんが、若干固まっているみたい。



…でも…
『今回の任務中に、誰に会おうとも恋人設定を崩さない事』
と言われていたし…

この場で否定をする事は…出来ない…。





「…えっ…。…それ…マジな話なの、か?」




ディーノさんが本気にして、
驚きつつ私に尋ねて来るが『本当は違います』とは言えないし
だからと言って『はい』なんて返事をするのも憚られて…

結局、否定も肯定もしないで
…微妙な笑顔で苦笑いを返した。




それを見て、ディーノさんは“本当の事”だと理解したようで。



「…そうだったのか。…知らなかったぜ。」



「まだ、誰にも言ってないからね。」



と、シラッと言う恭弥さん。

…あぁ、これで誤解されるのが決定的になった…。










「つまり、ツナもリボーンも、まだ誰も知らないって事か。」
「まぁ、知ってたらリボーンがあんな話を持って来る筈がねーしな。」

心なしか寂しげに言った
ディーノさんの『あんな話』が気になって聞いてみる。



「あんな話って…どんな話なんですか?」







私の言葉を聞いて、
ディーノさんが何かに気が付いたように…



「ん?という事は…優衣も知らない話なのか。」
「リボーンの奴…本人に確認も了承も得ないで、あんな話を持って来たのか。」




と…何やらブツブツ言っている。
その様子に、若干、苛々した感じで…恭弥さんが尋ねる。



「…何を言われたの。」









恭弥さんの言葉に…少し答え難そうにして…
ディーノさんが小さい声で答える。



「いや、実は…その、な…。」
「部下達が、何時までも独身でいるオレの事を心配してリボーンに相談したらしいんだ。」
「そうしたら…その、……優衣を嫁にするのはどうか?って言われてな。」





(…っ!…)



「…ええっ!?…」



予想外過ぎる内容に、驚いて聞き返す。

隣の恭弥さんは、驚いた顔をしつつも無言で聞いている。









ディーノさんは、申し訳ない事を言うように
…小さな声で話を続ける。



「…あ、いや…さっきまでは優衣本人も了承している話だと…オレは思ってたんだけど。」
「…その…。優衣をツナの両親の養女にしてツナの義理の妹にするから…」
「ボンゴレボスの義妹となった優衣を…嫁にするのはどうか?って…言われたんだ。」

「お互いの組織の、より強固な結び付きの為にもなるし。」
「優衣なら、イタリアで暮らした経験もあるしイタリア語も出来るし何かと賢いから…」
「歳は少し離れてるが…他の条件的に見ても良い相手だろうって、な。」





「…………。」





まさか…私がボンゴレを留守にしている間に
リボーンがそんな話をディーノさんにしていたとは…。

考えた事もない内容に驚き過ぎて…言葉が出ない。



確かに…お世話になっているボンゴレの為に
お役に立つような事をしたい、とは思っている。

だけど…そんな“役に立ち方”があるなんて今まで一度も考えた事もなかったし…
正直、とても驚いた…!







私の…
余りに驚いている顔を見て…ディーノさんが尋ねて来る。



「その様子だと…今、初めて聞いたようだな?」


ゆっくりと…コクンと頷く。



「…そうか。ったく…本人にも言ってないなんて無茶苦茶だよな。」
「にしても…まさか…恭弥と優衣が恋人同士だったなんてな。」
「…ハハッ…真剣に考えてたオレが、馬鹿みたいだぜ。」







…最後は…ちょっとだけ自嘲するように言った
ディーノさんの言葉を聞いて、申し訳なくなる。



「…すみません。あの、私も…何も知りませんでしたので…その…。」



「あぁ!別に優衣は悪くないぜっ!」
「…オレが勝手に、悩んでいたつーか…な。」
「そもそも本人に確認もしないで、突っ走ったリボーンが大問題だよなっ!」



「…………。」




あのリボーンが考え無しで、そんな適当な事を言うとは…考え難い。
というか…リボーンに限って、理由なくこんな話をする筈がない。

と、いう事は…本気で、この話をしたのだろうか?



…ディーノさんの話から推測するに…
ボンゴレとキャバッローネの、より強い絆の為にも役立つと考えているようだし
何時も、ツナの事…そしてボンゴレの未来の事を
何よりも最優先して考えているリボーンなら…言いそうだとも思える。


けれど…
そんな大事な話を、本人である私が全く一言も聞いていないのは…
どう考えても…変な話だと感じる。




雲雀さんとの任務の旅行中ではあるけれど、緊急時の連絡を取る方法は
スマホを始めとし色々とあるというのに
…どうして何も言ってくれなかったのだろうか?

もしや、こんな話に私が従うのは当然の事と考えて
“緊急事態とは言えない”という判断で…連絡をしなかったのだろうか?



…う〜ん…
それも、少し違うような気がする…。

確かに、リボーンは…
私をボンゴレに勧誘した時のように、強引さを発揮する事もあるけれど
普段は、私の意思もちゃんと尊重してくれているし。



何れにしろ…今は…
リボーンの考えている事は、私には解らない。










それまで、黙って話を聞いていた恭弥さんが…


「もしかして、貴方…本気で、その話を受けようと思っていたの?」




恭弥さんの言葉に、
ディーノさんは…渋々といった感じで返事をする。


「あっ〜、それはだな、その…。」
「…実は…優衣さえ本当に良いならって…少し、だけ…考えてた。」







「ふん。それは残念だったね。悪いけれど…優衣は渡さないよ。」



「あぁ、わーってるって!」
「先に、お前達が恋人だと知ってたら…そんな事、考えてないさ。」



「それはどうかな。…今でも未練があるように見えるけど?」



「…!…。…それは、…まだ今、聞いたばっか…だからだっ!」



「そう。だったら…今すぐに未練が断ち切れるようにしてあげようか?」









(…?…)


ディーノさんも私も
恭弥さんは何をするつもりなのだろうか?

と、疑問顔で居たら…





…ちゅっ…


(…っ!!…)




…驚いた事に…その場で、素早く肩を抱かれ…

軽く…唇にキスをされてしまったっ…!





不意打ちなのにも、驚いたけれど…それより…


…屋外で…こんな街中で…


しかもっ!…ディーノさんの目の前でっ!!






色々な事が頭を巡り…軽いパニックになった…




…………。












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