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虹の彼方 95



イタリアには予定よりだいぶ早く来てしまったので…
元々出席予定のパーティ以外にも
ターゲットと知り合いになれる機会を増やせないだろうかと
草壁さん達が、色々と調べてくれているようだ。


最初にターゲットと接触するシーンが決定するまでの間は
街の地理に慣れたり、現地の新聞を読んだりする以外の時間は
イタリア語の確認をしたりもした。
(この地方は“方言が強い”地域なので多少勉強の必要がある)


他にも…
恭弥さんと一緒に、お食事に行ったり
ウィンドーショッピングに行ったりと、比較的まったりと過ごした。







街を歩いていると…
色々な所で熱烈に愛の交換をしている恋人達に…時々出逢う。

流石、イタリアだ…と思える光景。


全く人目を憚らず、堂々と抱擁やキスをしている姿に
感心すると同時に…
まともに見ていられなくて少し恥ずかしくなる。




そんな私を見て、恭弥さんが…


「僕達も…やってみようか?」


と…何とも言えない笑顔でワザと言って来るのだけど…
その度に、しどろもどろになりつつ逃げる言い訳をして“難を逃れた”

幾らなんでも、イタリア人と同じような事は
…私には無理だ。

例え、本当の恋人であっても…あれは…絶対に無理っ!
と、心の中でそんな事を思いつつ、
必死に理由を見つけ…急いでその場から去る、という事をする。




そうやって…何度も恭弥さんにからかわれつつ
街を歩いていたら…


(…っ!…)


少し離れた所に、思い掛けない人物を…見掛けた。









私達が気が付くのと、ほぼ同時にあちらも気が付いて
…立ち止まって見ている。


ちょっと驚いた顔で
まじまじと私達を見ている相手は…ディーノさん。




ディーノさんの屋敷があり
キャバッローネの活動の拠点になっている街は
…ココからも比較的近い位置にある。

今居る街からは、二つ程先の街…ぐらいの場所だ。

だから“街中で出逢う可能性もあるかもしれない”
とは思っていたけれど
…まさか…
こんなに直ぐに、イキナリ会うとは思わなかった。






にこにこして立っている姿は、遠くからでも目立つ長身だし
イタリアの明るい陽光の下
…綺麗なキラキラの金髪&笑顔が眩しい程だ。


お互いに驚いたのだけど、ココは知らんふりをしようと
…通り過ぎようとしていた私達の方へ

ディーノさんが、満面の笑顔で
嬉しそうに急いで歩いて近づいて来た。


そして…大きな声で…



「恭弥に優衣じゃないか!こんな所で逢えるなんてなっ!」
「もう…イタリアに来ていたのか?予定より、少し早くないか?」




「…………。」



…あぁ…ディーノさん…

出発前に…あれ程…
『もしイタリアで出逢っても、お互いに知らない振りをして下さいね。』
と言っていたのに…すっかり忘れているみたい…。


チラリと恭弥さんを見ると
やっぱり…というか当然というか…思いっ切り不機嫌になっていた。








…どうしよう…と思っていたら。


「イタリアで遭遇しても、お互いに無視する事になってた筈だけど。」


と、超ムスッとした言い方で話す恭弥さん。

それを聞いて…


「…!…。あっ、そうだったな!すまねぇ!すっかり忘れてたぜっ!」



そう言って、陽気に笑うディーノさん。
…全然、反省してないよね…。




「まっ、もう話かけちまったんだし…、道を聞かれた事にでもすればいーだろ。」


にこにこしながら言うけれど…





「旅行者の僕達が…地元の貴方に、道を聞かれる事なんてあると思うの?」



「…逆だ!オレに…お前達が道を尋ねて来るんだぜ?」



「嬉しそうに僕達に近づいて来て…先に、話し掛けて来たのはそっちだろ。」
「どうして話し掛けられた方が、道を尋ねたりするの。」



「ん…そうか〜じゃ、ダメか…」
「まぁでも…日本語で話してるんだし、近くで会話を聞いている奴もいねーし。」
「気にしなくて良いんじゃないか?」
「それより、折角会えたんだ…もっと嬉しそうな顔をしてくれよ!」








あ…開き直ってしまった…。

そんなディーノさんの様子を見て
相変わらずのムスッとした顔で答える恭弥さん。



「嬉しくも無いのに…嬉しい顔なんて出来る訳がないだろ。」


まるで吐き捨てるように話す恭弥さんの言葉に苦笑しつつ



「…ったく…相変わらず、恭弥は冷たいな〜。」
「でも、優衣は…喜んでくれるよな?」


にこにこしながら、急に問われて…



「…あ、…はい…。」

隣の恭弥さんが不機嫌なので…遠慮がちに答えた。











「なんだよ…優衣まで少し愛想が悪りぃな。もっと喜んでくれてもいーのに…。」

ちょっと拗ねた感じのディーノさんに苦笑する。



「そうだ…折角会えたんだし、これから一緒に飯でも食わねーか?」
「すぐ近くに、ピザのスッゲー上手い店があるんだぜ。今日は、その為にココまで来たんだ。」



ディーノさんが、この街に居たのは
…大好物のピザを食べる為だったのね…
と思って聞いていると。


その言葉に即答で…


「貴方ひとりで行きなよ。」

と、そっけない反応を返す恭弥さん。



「オレの地元で逢った時ぐらい…オレの顔を立てて一緒に来てくれてもいーだろ?」



「そんな義理はないね。」








ディーノさんは冷たく言い放った恭弥さんを見て…
はぁっ〜と溜息を吐いた後、私の方を見て。


「んじゃあ…優衣だけでもどうだ?」
「ホントに上手い店なんだ…一緒に行かねぇか?…な?」


そう言いつつ、私の手を取って…軽く引かれた。




「…え?」



急に手を引かれて驚いて…
そのままディーノさんの方に引き寄せられそうになった時…



隣の恭弥さんが素早く動いて

…パシッッ!!…

とディーノさんの手を払う。




(…っ!…)






「勝手に…優衣に触らないでくれる?」





先程より、更に機嫌の悪そうな


…恭弥さんの、低い声が響いた…











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