[携帯モード] [URL送信]
虹の彼方 94




英国から、プライベートジェットでイタリアの空港へ飛び
その後、リムジンに乗り換えて
予定より早く…現地時間の夜の8時過ぎぐらいには
ホテルに到着する事が出来た。


元々イタリアでの宿泊先として予約をしていたホテルでは
日程を早くした宿泊が出来なかった為
急遽、草壁さんが探してくれた別のホテルに滞在する事になった。





泊まる事になったホテルは今まで同様に五つ星ホテルであるし、
お部屋は、何時ものように最高級のスィートルームだけど
…またしてもベッドルームはひとつしかない。


元々、予約をしていた他のホテルは
ベッドルームが2つあるタイプだったらしいのだけど

今回、急に予定よりだいぶ早くイタリアに入国する事になり
慌てて代りを探したけれど
一部屋に複数のベッドルームのあるホテルの予約が出来なかった、との事だった。


元々、一部屋で複数のベッドルームのあるお部屋は何処でも少ない。
予約を取るのがとても大変なのは解る。
仕方がない事だとは思う。

けれど…
これでまた、恭弥さんをソファーに寝かせてしまう事になるかと思うと…
とても申し訳なかった。






到着後、取り敢えず直ぐにお食事に行った後に
荷物を解き、クローゼットに整理をし終わった頃には
結構、遅い時間になっていた…


今朝は、起きた後に直ぐに
英国を発つ為の荷物をバタバタと纏め…
逗留していた英国のホテルをチェックアウトした後は
少しロンドン観光&買い物をして…

プレイベートジェットとリムジンで
イタリアの滞在先のホテルに移動した。


そして、つい先ほど
再び荷物を解いてクローゼットに仕舞った訳だけど…
とても目まぐるしく感じる日で、正直…とても疲れてしまった。







お風呂を頂いた後に、ホッとして水を飲んでいると…


「…優衣。今日は疲れただろうから、もう休んだら?」


と恭弥さんが声を掛けてくれた。




「はい、有難うございます。」
「…でも、打ち合わせはしなくて良いのですか?」



「予定より早く入国したし、今の所は日程に余裕もあるから明日で良いよ。」



「解りました。…では、今日は休ませて頂きます。」






そう答えた後に、朝と同じように
恭弥さんから額におやすみのキスを受けた時に…

…ちょっと頑張って…

私からも、恭弥さんの頬に
ほんの軽く触れるだけのキスを…お返ししてみた。



自分なりに色々と考えて
“少しでも恋人らしい行動に挑戦してみよう”
と思った末の実践だ。

こんなのは、欧米では子供同士でもするような事だけれど
…私が自分からするという事に…意味があると思う。

…うん。




突然の私の行動に驚いて
…恭弥さんの動きが、一瞬だけ止る。


でも、直ぐ次の瞬間には、フッと柔らかい笑みと共に

「おやすみ」

という…優しく心地良い低音の挨拶が聞こえ…
それに対して

「おやすみなさい」と笑顔で挨拶をし
…その日は休ませて貰った。






++++


++









大きなキングサイズのベッドで
ゆっくりと休ませて貰い、スッキリと疲れも取れた翌朝。

朝食の後に…改めて、
今回のイタリアでの任務について打ち合わせをする事になった。


テーブルに、草壁さんが用意してくれていた資料を拡げ
準備をした所で、恭弥さんから声が掛かる。




「…優衣…、君が…イタリアのこの地域に来るのは…」
「ご両親が巻き込まれた事故の後、初めてなんだろう?」
「……大丈夫かい?」




先ず最初に、恭弥さんの口から出たのは
…私を気遣ってくれる言葉。


そう…実は、今回私達が滞在しているこのホテルがあるのは
両親が巻き込まれた大規模交通事故のあった現場の
…すぐ隣の街なのだ。



事故の後に、イタリアに来た事は何度かある。

学生の時には来なかったけれど…
ボンゴレのツナの秘書になった為
ツナがイタリアに出張に行くのに合わせ何度か来た事があるのだ。

けれど…何れの時も、両親が亡くなった現場自体は勿論
…その街にも行く事は無かった。





何度か行った事のある…ボンゴレの本拠地や、
ディーノさんの屋敷のあるキャバッローネの本拠地は両方共…
此処からは少しだけ離れた都市にある。

イタリア国内全土の中では、かなり近い地域と言えるけれど
意識して行かないように出来るぐらいには距離がある。

…そんな適度な距離のある地域なので
わざわざ自分から事故現場に行く事はなかった。




今回、英国からイタリアに来る時も
このホテルから一番近い国際空港を使うと
両親が事故に逢った現場の道路を通る事になるのを心配してくれたのだろう…

わざわざ他の空港に着陸し…
そこから時間を掛けてリムジンでホテルまで来た。








正直…あの事故の事は、まだ完全に癒されてはいない。

原因も含め、色々と謎の多い事故だったし
…今でも少しモヤモヤ感が残っている。




けれど…もう何年も経ち、
そろそろ気持ちに区切りをつけたいと思っていた。

今回のイタリアでのターゲットが
あの事故の現場に近い地域に住んでいる事を
草壁さんの資料で知った時から…そう…心密かに決意をしていた。




「…ご心配、有難うございます。けれど…私は大丈夫です。」


一度、にっこりと笑顔で答えた後に…再度、言葉を続ける。





「あの事故以来、一度も現場を訪れていなかったのですが…。」
「出来ればこの機会に現場を訪れて…そして…」
「もう一度しっかり、この眼で見て、両親の亡くなった事故現場に献花をして」
「…自分の気持ちに区切りをつけたいと、思っていました。」


ハッキリとした口調でゆっくり…
しっかり恭弥さんの目を見ながら話をした。





恭弥さんは…
私の決意の籠った言葉を、じっと眼を見つめながら聞いた後

ふっと優しい顔になり…



「…そう。だったら、早速今日の午後にでも行ってみるかい?」


穏やかな口調で、そう言ってくれた。




「良いのですか?」



「早い方が良いだろう?」
「…君のご両親の、好きだった花で作った花束を持って行こうか。」


そして、その後に直ぐ…
草壁さんに花束の注文をしてくれた。









その後は、ターゲットについての情報の再確認や
この周辺の地域の、最近のニュースで気になる事など
色々な情報交換を一通りして、現時点での打ち合わせを終えた。



…そして、その日の午後…

草壁さんの運転で、恭弥さんも一緒に事故現場に行き
…大きな花束を2つ…献花して来た。




数年前、事故があった当時は
巻き込まれた近くの建物も一緒に燃えていたりして
とても悲惨な現場だったけれど…

今ではすっかり綺麗に片付けられ、道路整備もし直されており
事故のあった現場であると
説明をされなければ、解らないぐらいにはなっていた。




すっかり綺麗に様変わりをした事故現場を見て…


私の心の中でも…
ひとつの整理が出来たような…そんな気がした。














[次へ#]

1/48ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!