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虹の彼方 82




私の身体を押さえつけているニックは
…身長もあり体格も良い。

さっきから、何とか逃れようと身動ぎをしてみるが
全く動けない。


更には…大声を出して助けを求めても
周囲には誰もいない様にされていて…
頼みの綱のスマホも…圏外と来た。

これでは、万事休すだ。




だがしかし…だからと言って
このまま大人しくニックに襲われる訳には行かない。

何とか出来ないだろうか…と必死に考える。



…しかし…



兎に角、ピクリとも身体を動かせない状態だし
…どうにも出来ない。

せめて、抵抗の意思を示そうと
…強い拒否の思いを込めて、ニックを睨む。



…が…。





ニックは…そんな私を面白そうに見て笑う。


「…強気な目で睨んで来るな。」
「大人しそうに見えて、案外気が強いみたいだ。」

「何なら…声が枯れるまで泣き叫んでも良いですよ?」

「こんなに面白い機会は滅多にないですからね。」
「…せいぜい楽しませて貰うよ…レディ・ユイ…」



わざわざ耳元で、低く甘めの声で囁くように言われ
…全身に鳥肌が立った。

…あぁ、嫌だっ!!…。
こんな奴に良い様にされるのは…絶対に嫌っ!!

考えただけで…虫唾が走る。





恐怖と悪寒と…吐き気を感じる程の
もの凄い嫌悪感を感じ…
泣きたくないのに、自然と目尻に涙が浮かぶ。

あぁ…情けない…。




それを見て…ニックが嬉しそうな表情になる。

「…へぇ…強がって、睨んで来てたけど、やっぱり怖いんだ?」



そして、私の頬にそっと手を添え
…そのままサラリと頬を撫でる。

(…っ!!…)



又しても、激しい悪寒が全身にゾクリッと走る。


「さっきも言ったけど、大人しく言う事を聞くなら…そんなに乱暴な事はしない。」
「可愛がってやるから…安心しろよ。」

「だが…暴れるつもりなら、痛い目を見る事になるぞ。」




「…………。」




ニックが何を言っても答える気に等ならず
…ずっと無言で通した。

そんな私が気に入らないのか…


「ふん、無視か?」
「…まぁ良い。その内、嫌でも声を上げさせてやる。」






そう言いつつ…ニヤリとした卑下た表情のニックが
ゆっくりと顔を近づけて来た。


(…っ〜!!…)



…嫌っ!! 


こんな奴に、好きにされたくない!!


…誰か…誰か!…助けてっ!!






 
声には出さずに…心の中で叫びつつ
必死に首を振り、キスされそうになったのを防いだ。

すると…ニックは、ニヤリとしながら
グッと力を入れて私の顎を捉えて固定する。


「…っ!…痛っ…」


強い力で掴まれた為、思わず声が出る。






これで完全に固定され
顔を動かせなくなってしまった。

目の前にある、ニックの醜悪な顔が
…再び近づいて来る…。

今度は、顔を動かして避ける事が出来ない。



…あぁ…嫌だ…。
こんな形でファーストキスを奪われるなんて…。

いや、この様子ではキスだけでは済まないだろう…。

…そんなの…絶対に…嫌だっ!!







そう、心の中で思った時
…自分でも驚く程に大きな声が出ていた。



「…恭弥さんっ!!…助けてっ!!!」





突然、大声を出したのでニックが驚いて少し止まる。

…そして…


「大声を出しても…助けを求めても無駄だと言っただろう?」







そうニヤリとしつつ言った後、
今度こそ本気で顔を近づけて来た。


(…っ〜〜!!)



思わず、しっかりと目を閉じ
…同時に、口もしっかりと閉じた。




…その直後…







…ドスッ!!!…

という、何かの大きな音が聞こえたと思ったら。



今、正に私にキスをしようとしていたニックが…

「…イテッ〜〜ッ!!…」


突然の大声を上げて…
私の横の空間で、痛そうにゴロゴロと転がり出した。



(…っ!…)


い、一体…どうしたのだろうか?





あまりに痛がっているニックを見て驚き
…その場でゆっくり起き上がって周囲を見回した。

何か、動物でも居るのかもしれない。

もし、そうなら…私も襲われる可能性がある…。
そう思って、見回すけれど…それらしい動物は居ない。





これは…一体、何事なのだろうか?





ニックの様子を見ると、背中に手を回そうとして
ゴロゴロ転がり痛がっているので
恐らくは、背中に何か衝撃を受けたのだろう。

しかし、見回しても…
木の枝だとか、大きな石のような物は見当たらない。





ニックは…


「クソッ〜!!一体、何なんだ…!!」

「イッテッ〜〜!!」

等と言いつつ、相変わらずゴロゴロしている。


その様子からして、余程の衝撃を受けたようだけど
その原因が見当たらないのは、不気味だ。





でも…、そう…
これで助かる見込みが出来たっ!!

ニックを襲ったのが、動物等ではないのだとしたら…
転がり周って痛がっている今が
…逃げるチャンスだ!!



そう思い、急いで立ち上がり
ニックに飛ばされたバックを拾って逃げようとしたら…


(…!!…)



何と…ニックが咄嗟に私の足を掴んだ。




随分と痛がっているというのに
…まだ、こんな元気が残っていたようだ。


「…に、逃がさない。…貴女は、僕の物だ…。」





振り解こうとするが、かなりの力で掴まれている為、離せず
…とうとう、その場で地面に引き倒されてしまった。

折角、逃げるチャンスだったのに…。



でも、こんなに痛がっているのだし
…まだ、きっとチャンスはある筈…。

そう思って、どうしようかと必死に頭を巡らしていた時…





少し離れた遠くの林の方で

…ガサッガサッ!

と、音がし驚いてそちらの方向を見た。


(…っ!!…)




…そこには…。



…有り得ない光景が…見えた。












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あきゅろす。
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