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虹の彼方 76




到着した当日の午後には、早速…
ニック自慢の牧場や馬舎に案内をされて、
一部の方を除き、ニックの友人達とも一緒に乗馬を楽しむ事になった。




肝心の牧場と馬達は、
ニックが自慢するだけの事はある内容だった。

広く雄大な景色の中に広がる牧場に
優秀な血統の馬ばかりを、数多く集めている。

血統的に優秀なばかりではなく、
ニックは見た目にも拘るようで、大変に美しい馬達ばかりだ。

これなら、自慢をしたくなるのも頷ける…という物だった。






ニックは当然、他の友人の皆さんも、
とても乗馬が上手で、楽しそうに乗っている。

私は、イギリスに住んでいた時に、両親と仲の良かった方が
ニックと同じように牧場を持っていたので
夏休み等に遊びに行き、乗馬を教わった経験がある。

普通の速歩や駆歩程度なら、
一応大丈夫な程度だから、普通の遠乗りなら出来る。

でも、そこまで上手い訳ではない。
普通に乗れる、という程度だ。






…そして、一方…

恭弥さんはというと…



この人は、どうしてこう…
当たり前の顔をして、何でも出来るだけでなく

“なんて、優雅に美しく乗りこなすのだろう”
…と思う程の腕前だった。




一緒に乗馬をしていたニックの友人達も
見惚れる程に、美しい騎乗姿。

見事に馬を操る…というよりも、
まるで馬と調和している感じ…正に“人馬一体”という風に見える。




“自然体でありながら、優雅に見えるような乗馬”は
見た目は簡単そうに見えるのだが、本当はとても難しい。

下手な人が乗ると、力みがどうしても現れるし、
敏感な馬は、それを感じて緊張するし…
どうしても、ギクシャクした乗馬になってしまうものだ。

動物の中でも、特に神経質であると言われている馬と
同調するのは、大変な事なのだ。




なのに…その難しい事を、
恭弥さんはまたしても…簡単そうにやってのけている。

人馬共にリラックスした、自然体の優雅で美しい乗馬に
…あのニックまでもが、見惚れていた程だった。


一体、何時…乗馬を習う機会があったのだろうか。

…相変わらず、謎の多い人だ。







思い掛けず、もの凄く久々に乗馬を楽しみ…
ニックやその友人達と一緒に、
アフタヌーンティーを楽しみ…優雅な時を過ごす。

恭弥さんのご機嫌は相変わらず、そんなに良くはないけれど…
それを、表に出す事は一切ないので
見た目には、他の人達と同様に楽しんでいるように見えている。







所で…この状況で、
どうやって、ニックが持っている筈の情報を手に入れるか?
それが問題なのだけれど…

恭弥さんと、、こっそり打ち合わせや相談をしたいと思っても
お部屋も別々だし、常にニックやその友人達が傍にいる為
…何も話せずに、時が過ぎる。


本当は…出発前に打ち合わせをしたかったのだけど…
ホテルでは外より更に不機嫌さを隠さない為、話し掛け難く
…来る途中の車の中でも話せず…
結局、今回の仕事の進め方については、全く話していないまま
ココに来てしまっている。



どうしよう…。
と悩むけれど、相談する機会がない以上…仕方ない。
自分なりに考えて動くしかない。









そうして悶々としている内に、
あっと言う間に、到着初日の夜を迎えてしまった。

各自、バラバラとお部屋に戻り
明日に備える事になったので、私も自室に戻った。




お風呂を済ませ、寝支度を整えつつ
明日の事について、色々と考えを巡らす…。

明日は、ニックの案内で…
館からは、少し遠い場所にある湖の畔まで乗馬で行き、
湖畔で、ピクニック形式のランチを頂き、少しその周辺で遊ぶ事になった。

またしても…今日と同じように、集団で常に一緒に居る為
個人的に、ニックに近づいて情報をゲットするのが難しそうな展開だ。

一体、どうしたらよいのだろうか…。





今なら…恭弥さんも、まだ起きているのではないだろうか…
思い切って…お部屋を訪ねて相談してみようか。
それとも、スマホで連絡をしてみようか。


少し考えて、隣のお部屋なのにスマホで連絡するのは変に感じられたので…
直接、隣の恭弥さんのお部屋に行く事にした。







私は、もうお風呂に入って、着替えているので
上にガウンを羽織り、お隣のお部屋を訪れる。

…まだ、起きているだろうか?

もし、寝ていたら…起こすのは申し訳ないな…
そう思って、控え目な小さい音でノックをした。





そのまま反応を待っていると、
内側からドアが開けられ、恭弥さんが顔を出す。



「…君か。…どうしたの。」



「あの…少しお話をしたいのですが、宜しいでしょうか?」



私の言葉を聞き
やや仕方なさそうにドアを開け、中に誘ってくれた。

やはり、こんな夜中に訪ねるのは迷惑だったのだろうか
…そう恐縮しつつ、室内に入った。









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