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虹の彼方 71




所で…
落ち着いて、よくよく周囲を観察すると…

心なしか、パーティに参加している奥様達の視線が
…恭弥さんに集まっている…ような気がする?





先日のロイヤルアスコットの時にも感じた事だけれど…
若くてイケメンな紳士がいると
その人に、奥様方の視線が集中しているのを何度も目撃した。

勿論、その逆の…
素敵な着こなしの美人に、男性陣の視線が
集まっている場面も何度も見たけれど。



イギリスでは、既婚の奥様や、熟年カップルの奥様などが…
とても熱心に若い男性陣を見ていて、
熱い視線を注ぎ、噂の種にしているような…気がする。

こんな事、ドイツではあまり感じなかった事だ。
勿論、全くなかった訳ではないけれど
…何と言うか…イギリスでは開けっ広げな印象だ。





そう気が付いてから、注意して周囲に意識を向けると
ワルツを踊っている私達に
…明らかに、多くの熱い視線が集まっている。

恭弥さんは澄ました顔で
気が付かないフリをしているけれど

…これは、相当な物だ。









出発前に、草壁さんが…

『一度、欧州で恭さんの噂が拡がれば、二度と同じ手は使えないでしょう』

…と、言っていたけれど


この様子では、例え素性がバレなくても
十分に『噂の人物』になりそうだ。





そう思って、
一緒に踊ってくれている恭弥さんに視線を戻し
改めて見てみる…。

…うん。

何度見ても…とても印象に残り易いイケメンさんだ。





日本人の男性にしては、色白美男子な恭弥さん。
綺麗な艶々の健康的な黒髪と、
色白な陶器肌の美しいコントラストは
東洋的で、少しミステリアスな雰囲気がある。

ほんの少し青味を帯びた珍しいグレーの瞳は、
とても涼やかな印象を与える。


その三点だけでも、
奥様達の興味関心を引くには、十分過ぎるぐらいだろう。



その上に…更に
恭弥さんは日本人にしては背も高い方だし、スタイルも良い。
ダンスのリードも、とても上手だし
…何より、全ての所作に品格があり洗練された優雅さがある。

“紳士の国イギリス”でも
…ここまでの人は少ない気がする。

という事で、大変に目立っている。
周囲で見ている奥様方の溜息が、聞こえて来そうな程だ。










恭弥さんの上手なリードに従って踊っていると…
私の着ているアフタヌーンドレスが、ふわり、ふわり…と揺れる。

凝ったデザインのドレスで、
ダンスを踊った時の効果まで考えている…と聞いていたけれど
本当に綺麗なラインで、ふわっ…と弧を描く。



普通に着ていると
スッキリしたスリムに見えるデザインなのに…

ダンスをすると上に重ねた生地の部分が
空気を含んで少し拡がって…
華やかな印象のドレスに早変わりをする。



恭弥さんが、注目を集めているのは間違いないけれど…
どうも、先ほどから私の着ているドレスも
注目を集めているような気がする。

…うん。

明らかに…噂になっているようだ。






目論見通りに、目立っているのは嬉しい事だけれど…
それ程、上手な訳ではない
私のダンスを観られるのは、少し恥ずかしい。

尤も、恭弥さんのリードが素晴らしいので…
私のダンスもかなり上手に見えてはいるだろうけど。





こんな場で目立つのは、正直、とても恥ずかしいけれど、
ここは『目論見通りに目立って成功』だとでも思っておこう。

こうして注目を集めれば、
ニックともお近づきになり易い筈だ。












ワルツが終わり…
恭弥さんが、元々私達が居たテーブルの方へ誘ってくれた。


「何か、飲み物を貰って来るよ。」



そう言って、私を席に座らせた後に
恭弥さんは、庭内に作られた特設のバーに向かって行った。

…ふぅ…
と小さく軽く溜息をついて、一休みしていると
間も無くシェリー酒を手に、恭弥さんが戻って来た。





二人でシェリーに口をつけた所へ…
待ってました!…と言わんばかりの勢いで
数名のご婦人が近寄って来て、次々に話し掛けて来た。



「とてもダンスがお上手なのですね…」
「思わず知らず、うっとり見惚れましたわ。」


「…あの、お二人は…何処の国の方ですの?」


「貴方方はご夫婦?…恋人?…それとも、ご兄妹?」




如何にも興味津々という感じで、次々に聞いて来る。
近寄って来たご婦人達以外の
…周囲のギャラリーの視線も集まっているのを感じる。



周囲の目を意識して…
思いっ切りにこやかに、笑顔で答える。



「ダンスをお褒め頂き、有難うございます。私達は日本人です。」



続けて、恭弥さんが…

「僕達は、もうすぐ結婚予定なんです。」







「まぁ〜。やっぱり日本の方ですのね…そうだろうと思いましたわ。」



「お二人は…もうすぐご成婚予定なのですか。」
「それは、おめでとうございます!」






それに対して、再びにこやかに


「有難うございます。」とお礼を返す。







と、今度は…そこへ、
近くで会話を聞いていた、若い男性が数人近寄って来た。




その中にはニックも居る!
いよいよチャンスが巡って来た…!

心の中でそう思いつつ、表面上では知らん顔していた。

















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あきゅろす。
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