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虹の彼方 69




バレエの観劇の日から、更に3日後…
財団と少しだけ繋がりのある人物のパーティに、
友人に誘われたニックが来る事を事前に掴んでいたので、
私達も参加する事になっている。


今度は、小さなチャリティー&ダンスのパーティー。
割と人数の少ない個人宅でのパーティだし
…きっと、会話をする切欠ぐらいは作れるだろう。







パーティの当日。

今日のドレスコードも、ブラック・タイ。


私は、迷った末に
スミレ色のアフタヌーンドレスを着る事にした。
ふわりとした生地を何枚も重ねており、
デザインも凝っているダンス向きのドレスだ。

明るいバイオレット色のドレスは、
ちょっと珍しい色なので、きっと目立ってくれるだろう。
ジュエリー類は、ドレスの色に合わせて全て濃い紫色のアメジスト。







準備を済ませ、リビングに行くと
…既に着替えて待っていた恭弥さんの姿。

…うん。

何時も通りに…恰好良くて素敵だ。







私の姿を見た恭弥さんが…少しだけ驚いた顔をする…


「…へぇ、薄いバイオレットか。珍しい色のドレスだね。」



「これ、変…ですか?」



「いや、そんな意味じゃない。」
「寧ろ逆だよ。その色は君に…とても似合っている。」



「そうですか?…良かったです。」




“とても似合う”なんて、
あまり言われないので嬉しくなる。





「合わせているアメジストも神秘的な感じを出していて…良いね。」



「有難うございます。」



ドレスと宝石のチョイスを褒めて貰い、上機嫌になった私は
恭弥さんのエスコートに従って移動しつつ、終始ニコニコしていた。

…我ながら…なんて単純。









今日のパーティ会場である、邸宅に到着し
ホスト夫妻にご挨拶をした後は、
会場になっている庭園内の端の方で様子を見ていた。

私達より、少し遅れて…ニックも到着。
周囲にいる知り合いに声を掛けて、
直ぐに、とあるグループに溶け込んでいた。




ニックの容貌は、明るめの金髪に明るい碧眼。
英国貴族らしい長身で、体格も良い。

女性の扱いに慣れているようで、スマートなエスコートをするし
適度に甘い言葉を連ねるのが上手なようで
…女友達がとても多いようだ。

日本的に言えば…少し気障だけど、モテる王子様的キャラ
…という感じだろうか。





ニックの居るグループの事を、
チラチラと観察しつつ別のグループの人達と歓談をして過ごす。
比較的、人懐っこい人が多かったようで、
ホスト夫妻が、皆さんに私達の紹介をしてくれた後は
見知らぬ東洋人のカップルである私達に、色々な人が声を掛けてくれた。


そして…その時に、
どの人も私のドレスと宝石を褒めてくれる。

恭弥さんが言うように、確かに私に似合っているようだ。



それに何より…この会場内で
似たような色のドレスの方は居ないので、目立っている。
散々に悩んで決めたドレスの選択が成功だったようで、ホッとする。






歓談と軽いお食事をした後に
小さな音楽隊による生演奏での音楽が流れだした。

それを合図に、ダンスを踊る参加者。
様子を見ていると
ニックも女友達を誘いダンスの輪に加わって踊りだした。

…流石、英国貴族…なかなか上手だ。



ニックは、容貌的にも目立つ人物だけど
こんな時にスマートに女性を誘い
とても上手くダンスをリードする事も出来る様子を見ていると、
モテる理由も解る気がする。







感心しつつニックの様子を見ていた私に
恭弥さんから声が掛かった。



「…優衣。…僕達も踊ろうか。」



「…え?…」



突然のお誘いに驚いて、恭弥さんの顔を見る。


確かに…欧州へ出発する前にダンスの練習はして来た。
でも、一度も恭弥さんと踊るような事はなかったし
第一、きっとダンスなんて恭弥さんは嫌いだろうと思うのだけど。

余程ダンスをしないとダメな場面にでもならない限り、
恭弥さんに誘われるような事はないだろうと、
勝手に…そんな風に思っていたのだけど…。


でも…冗談で言っているようには見えない。

…本気…のようだ。





驚いたままの私に構わず、
恭弥さんがスッと手を差し出して来る。

今、流れている曲は、ゆったりしたワルツだ。

ドキドキしつつ…そっと手を乗せると、
軽く手を引かれダンスをしている人達の輪に入った。




一度止まり、お互いの目を合わせて
…音楽のリズムを捉え…

恭弥さんのリードで踊りだした。



(…っ!…)



踊り出して直ぐに解る程に…  

…凄く…上手い…。




ステップも上手だし、
なんて滑らかに自然にリードしてくれるのだろうか。

…とても、踊り易い。



恭弥さんは何でも出来る人だと知っているけれど
…それでも凄く驚いた。

まさか…ここまで上手だなんて。


一体、何処で覚えたのだろうか…。
今まで、どれぐらい
…こうして踊った経験があるのだろうか。








踊りつつチラリと目に入るニックの様子に、少しだけ恭弥さんが重なる。

もしかしてニックのように
ダンスを誘うような女友達がたくさん居たり…するのだろうか。
今までの様子では、そんな素振りは全くなかったけれど…。




今回、こんなに一緒の時間を過ごしているというのに
私は知っているようで…
実は、未だに殆ど恭弥さんの事を知らない…という事に気が付いた。

知っているのは、表での恭弥さんの一部だけ…だ。



草壁さんと連絡を取り合い、様々な指示を飛ばしているようだけど
その詳しい内容についても…私は関知していない。

殆どの時間を一緒に過ごし、お仕事をしていても、その程度なのだ。








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