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虹の彼方 67




準備期間を数日置き…
ロイヤルアスコットに参加する当日になった。


『ロイヤルエンクロージャー』と
『プライベートボックス』のドレスコードは…

男性は、モーニングにシルクハット(トップハット)
女性は…アフタヌーンドレスに帽子着用。

所謂、正装というスタイルだ。






私は、事前に選んでおいた
水色に近いけれど、ややくすんだ落ち着いた色のアフタヌーンドレスを着用。

それに、ほぼ同色の良い帽子があったので
それを合わせている。


ジュエリーは…
ネックレッス、イヤリング、指輪の全てをドレスの色に合わせた
アクアブルーの宝石が付いた物にした。



周囲の方々に比べ、
あまりに見劣りしないと…良いのだけど。

…どうだろうか…。








ドキドキしつつ、
恭弥さんが着替えて待っているであろうリビングに向かった。


(…!!…)

お部屋に入り、恭弥さんの姿を見て…驚いた…



ドイツの時の蝶ネクタイ姿も…恰好良かったけれど…
今回の…モーニングにシルクハットという姿も
違和感なく、とても似合っている。

明らかに日本人顔なのに
…こんなにも西洋式の正装が似合うなんて。
とっても凄いし…狡い気がする程だ。

きっと…イケメンは万国共通で、何でも似合うのだろう。




黒のシルクハット、黒のモーニングの上着の下は、
少し暗めのグレーのベスト…

それに、一体何時の間に用意したのだろうか…
私のドレスの色と、ほぼ同色のネクタイ。

もしかして…合わせてくれたのだろうか。





「…………。」

思わず無言になって…見惚れてしまった。







と、恭弥さんの方から話し掛けて来た…

「…ふぅん…。」
「流行色の水色のドレスと宝石か。君は色白だし、なかなか似合っている。」
「その帽子もセンスが良いね。」



「…有難うございます。」
「恭弥さんも、とてもモーニングがお似合いで…驚きました。」
「…あの…そのネクタイは…?」



「あぁ、これかい?」
「君が今年の流行色を調べてたからね…それに合わせたんだよ。」





やっぱり…そうなんだ。



「…お揃い…ですね。」

…そう言うと。






私の耳元にスッと口を寄せて
…低音の美声で、囁くように…


「僕の愛しい婚約者と…お揃いにしたんだよ。」



(…!…)


ま、また…サラリとそんな台詞を…。

先日までの観光旅行中での、
甘い恭弥さんを思い出してしまい…少し赤面。






そんな私を見て、僅かにニヤリとして
…手を差し出してくれながら…



「さぁ…行こうか。」



「…はい…。」



気恥ずかしさが残っているが、これから仕事なのだ…
からかわれて赤面している場合ではない。
…シャンとして行こう!

そう決意をし、
差し出された恭弥さんの手に自分の手を重ねた。












会場に着き、受付を難なく通り…
私達が過ごすエリアである「ロイヤルエンクロージャー」内に入場した。



エレガントに正装したジェントルマン達と、
晴れやかで美しいドレスと帽子に身を包んだ女性達…

ロイヤルエンクロージャー・ガーデンでの
優雅なランチやアフタヌーンティー。


競馬が、元々は…
貴族の遊びであることを思い出させる『ロイヤルアスコット』は
“ザ・シーズン”の中でも、特別な社交行事という位置付けだ。






…ちょっと考えただけでも色々と不安は大きいが、
ここまで来て今更逃げられない。

度胸を決めて…参加するしかないんだし、頑張ろう。








会場内は、一体どれぐらいの人がいるのだろうか?
と思う程の人で溢れかえっていた。

この大勢の中から、目的のニックを探すのは
…かなり大変そうだ。

しかも男性は皆、モーニングにシルクハットなので…
見つけたとしても
今度は見失わないようにするのが大変だろう。




下手をすると…今日は接触出来ないかもしれない。
だが、ロイヤルアスコットは5日間ある。

馬主でもあり、大の馬好きだと聞いているニックは
…恐らくは、5日間全部参加するだろうと予測している。





そんな事情もあり、恭弥さんからは

「5日間の間で、一定の成果があれば良いから…焦る必要はないよ。」

と言われている。



実際、この様子では
一日の間に成果を上げるのは無理そうに感じる。

注意深く周囲の人を観察しつつも
…少し、肩の力を抜いて過ごす事にした。







初日は…チラリとニックらしき人物を
遠くから見掛けたが、
その人物は直ぐに移動してしまい、結局その後は見つけられなかった。


幾らなんでも、ずっと移動して探すような事は出来ないので
適度な移動を繰り返しつつ、さり気無く周囲を見て探すのだが、
何しろロイヤルエンクロージャーは専用の…
テラス席、グリーン、各種レストランやバー、ガーデンに、
専用駐車場(駐車場でケータリングサービスを利用する方々もいる)などなど…
広い上に、かなり大勢の人がいる。


結局、二日目も三日目も…
全く見つける事が出来ずに終わってしまった。

思った以上にニックを探し、更に印象に残るのは
大変な事かもしれない。











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