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虹の彼方 65




最初の案件については…案外アッサリと
とてもスムーズにターゲットから情報を得る事に成功した。

思い掛けない程に上手く行って驚いたけれど
…それより何より兎に角、安心した。

先ずは、ひとつクリアだ。







ホッとして…さて、今後どうするのだろう?
と思っていたら…恭弥さんが


「予定より早く片付いたし…」
「次のターゲットに会う算段をしている日までは、まだ少しある。」
「…どこか、適当な場所に観光にでも行こうか。」


と言ってくれた。



このまま、このホテルで時間潰しをするのは
勿体ないし…つまらない。
有難く、恭弥さんの申し出を受けて
…ドイツを少し、そして隣接するフランスにも少し観光に行く事にした。





数日間分の旅行用スーツケースを用意し、他のスーツケースは
次のターゲットに会う為の予約しているホテルに搬入するまでの間は、
例の…財団系の荷物の集配会社に預ける事にして
…身軽な状態で旅行に行く。


一見ごく普通に、恋人と一緒の旅行に来ているか…
または…新婚旅行で来ているように…見える。

実際、何処に行っても『新婚旅行ですか?』とやたらと聞かれた。

恋人としての演技もかなり慣れて来ているので
もうあまりギクシャクしていないし
傍から見れば…そう見えるのも当然だろうと思う。








そして…恭弥さんは…


『今回の仕事に、君を連れて来て良かったよ。』

『連携プレーで仕事をするのも…君となら思ったより悪くないね。』

等と言ってくれて…


スムーズに情報を得られた事への、満足感もあるのだろうけれど、
兎に角…とても機嫌が良い。




以前、草壁さんに
『何れ、恭さんの機嫌の良い時だって解るようになりますよ』

と言われていたけれど…
確かに、段々と分るようになって来た。

醸し出しているオーラが若干だけれど優しくなるし
少々解り難いけれど、良く見れば表情も変わる。

普段のオーラが厳しい人なので、
近くに居ると自然と緊張してしまうのだけど
機嫌がとても良い時には、近くに居ても…それ程に緊張しないで済む。







有名観光地や世界遺産を一緒に見学して…
談笑しながらお食事を一緒に頂き…色々な会話を繰り広げる。


『次の仕事の事は、その時まで考えなくて良いよ』

…と言われたので


本当に純粋に旅行を楽しんだのだけど、
一緒の恭弥さんが…思った以上に優しい。



勿論、恋人&婚約者の演技を続けているから…だと、
解ってはいるけれど…
常に優しい紳士で…私の事をとても気遣ってくれるし…
そして時には…“本当に恋人なんだ”と錯覚しそうな程に態度が甘い。

表面的には平静で冷静なフリをしていたけれど、
実は…心の中では照れてしまい、ドキドキしていた。





一応、私だって…
普通の女の子の感覚を持ち合わせている。

恭弥さん程のイケメン美青年に、終始スマートにエスコートされ
甘い態度で優しくして貰って…トキメキを感じない筈はない。

幾ら“仕事中”だと言っても…
それとこれは…別問題なのだから。






今まで…こんな事は…
あまり考えた事はなかったのだけど…

もしも本当に“今の恭弥さんのような人が”
恋人だったなら…嬉しい…かもしれない。

世の女の子達が憧れる要素満載の
…今の恭弥さんは、とても素敵だと思う。
私の恋人&婚約者は…まるで女の子の夢を形にしたような人だ。





でも哀しい事に…これは仕事の為の演技なのだ。

勿論、全てが演技な訳ではなく
…今の恭弥さんは本当にご機嫌が良いのだろうけれど。

他の部分…
恋人として私に優しく接してくれる部分は…演技だ…。




仕事が終わり、
本来の性格の恭弥さんに戻ったら…元の雲雀さんに戻ったら…
私達の関係って…どうなるんだろう?

こんな風に一緒の時間を過ごした後に、
以前と全く同じ…というのは少し寂しい。

きっと以前に比べれば変化があるだろうと思いたいけれど…
何しろ相手は「あの雲雀さん」だし
…アッサリ元通り…で変化なんてないかもしれないよね。








そう言えば…
出発の時に車の中で、付き合っている人がいるか尋ねた時には
明確な返事をしてくれなかったけれど…実際の所、どうなんだろう?

今の恭弥さんを見ていると…
とても優しいし、女性の扱いにも慣れているようにも…見える。
“実は恋人がいるんだ”…と聞いても“あぁやっぱり…”と思えるだろう。

密かに付き合っている恋人がいるからこそ…
こんなにスマートな演技が出来るのかもしれない…な。




もし…恋人がいるのなら、どんな人なのだろうか。
きっと、恭弥さんの隣に並んでも見劣りする事なんてないような
見掛けも中身も…とても素敵な人に違いない。


…たぶん…私とは、雲泥の差…なのだろうな。









今回の旅行に出発する前までは、思ってもみなかった事を
ふとした瞬間に考えている自分を発見し…

…自分でも…
どうしてそんな事を考えてしまうのか解らず、少々困惑した。








++++

++








時間調整の為に、
ドイツとフランスの観光地を、恭弥さんと一緒に見て周った後は…
次のターゲットがいるイギリスに飛ぶ。

予定通りの日にロンドンのホテルにチェックインし、
次の仕事の準備に取り掛かる事になった。



さて…

次のターゲットは、どんな人物なのだろうか。















第4章<私は女優> 完




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以上、第4章はここで終わりです。
次回より第5章に突入します。

次の舞台は…英国です。




※この章の最後まで読んだ後に読む小話が
「過去拍手の部屋」にあります。




管理人



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