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虹の彼方 50





お店を出て、会話をしながら
再びゆっくりした足取りで、綺麗に整備された並木道を二人で歩く。


先程から、結構な距離を歩いている…
そろそろ疲れたな…と
内心で思っていると、まるで推し量ったようにタイミング良く


「少し休憩して行こうか。」


と言われ…並木道から一本入った道に、
隠れ家的にひっそりあった喫茶店に入った。








入口の看板も小さな手作りっぽい物しかなく
お店の入口も奥まっており…正直とても見つけ難いお店だ。

小さな階段を上がり二階の窓際の席に案内され座る。
店内は、他に女性の二人組と、
1人で英字新聞を読んでいる男性のみ。

薄暗い照明で、静かな環境音楽が流れ…
とても落ち着く店内だ。





小さなお店だけど、拘りのあるお店らしく
メニューには、珈琲、紅茶、烏龍茶が、ぞれぞれ数種類づつあり…
ホットとクールも選ぶ事が出来る。

雲雀さんは紅茶、私は烏龍茶の中から選び…
両方ホットで頼む。
お店で手作りをしているらしい
お勧めのケーキも一緒にお願いした。

お昼を少し控え目の量にしたので、丁度お腹も空いていたし
疲れも感じていたので、甘いケーキがとても美味しい。







…にしても…
まさか、こんな風に…
雲雀さんと喫茶店でお茶をする日が来ようとは…

紅茶を頂きつつケーキを食べている雲雀さんの様子を
ちょっと不思議な気持ちで見つめた。





紅茶の種類にも詳しそうだな…
ケーキの種類を確認した上でそれに合う紅茶を選んでいたし。
というかケーキも…普通に食べるのね…。


それに…やっぱり、ひとつひとつの所作が綺麗で優雅。
紅茶を飲む仕草とか…ケーキを口に運ぶ動作とか…
そのどれを写真に撮っても絵になるだろう。







自分も美味しいケーキを頂きながら、
そんな事を考えていたら雲雀さんと目が合った…



「ん?…何?」



「…ケーキも、召し上がるのですね。」



「滅多に食べないけれどね。甘過ぎる物でなければ…嫌いな訳ではないよ。」
「…君は良く食べるのかい?」



「はい。ケーキは大好きです。」
「お休みの日にケーキ食べ放題に行ったりもしますし…」







「ふぅん。…食べ放題で、どれぐらい食べるの。」



「…ええと…あの、お恥ずかしい話ですが、沢山食べたくて…」
「その、お腹を空かせてから行くので…ランチの代わりでもありますし結構な量を頂きます。」






「どれも甘いんだろう?…そんなに沢山食べられるものかい?」



「ケーキ以外にサンドウィッチ、パスタ料理…サッパリするゼリーやシャーベット等…色々とあります。」
「時々口直しに他の物を頂きながら…時間を掛けて食べる感じです。」







「…成程ね。如何にも女性が好きそうだ。」



「はい。…至福の時です。」



ニコニコしながら答えたら…










「そんなに好きならココでも、もう少し食べたらどうだい?」



「……いえ、今日はこれで充分です。」



「君の顔に…もう少し食べたいと書いてあるよ。(クス)」



「…え?」



確かに、このお店のケーキは思いの外美味しくて…
今度改めて来て、他の種類も食べてみたいとは思っていたけど
…それがバレたのだろうか?








「手作りで丁寧に作られたケーキだし、味も良い。」
「…もっと食べたいと思ってたんじゃないの?」



…うっ…。
やはり私の心情がバレていたみたい。
ズバリ言われてしまった…。




「…………。」




どうしよう…と悩んでいたら、
目の前にスッとメニュー表が出された。

無言のまま雲雀さんを見ると…
視線で『ほら、ケーキを選びなよ』と言われた気がした。







それでもまだ迷っていると…


「昼はあまり食べなかったから、まだ少しお腹が空いているな。」
「もうひとつケーキを頼もうかな。ほら…君も2・3選びなよ。」



と再度メニューを差し出された。






もしかして…
1人でケーキを再注文する事を躊躇っていた私を
気遣ってくれたのだろうか?

結局…
私も、もう一つだけケーキを注文し一緒に食べた。









雲雀さんが、凄く優しい気がする…

なんだろう…この感じ。
本気でデートをしているようだ。



最初の頃に感じていた…
どこか厳しい雰囲気とはだいぶ違うように思う。
単純に『私が雲雀さんと居る事に慣れた』という事だけでなく
…何かが、違う気がする。


明らかに雲雀さんの方も…
私に、歩み寄ろうとしてくれているのを感じる。
何と言うか…
二人の距離を縮めようとしているような…感じがする。


あと一週間で、欧州に出発する事を考えての事だろうか。








その後は、再びゆっくり散歩をし、
夕食は、歩きながら偶々見つけたスペイン料理のお店で食べ…

食後にスペインワインで、少し火照った身体を冷やそうと外に出たら、
既に草壁さんが車で迎えに来てくれてて
…そのまま車で送って貰い、帰宅した。















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あきゅろす。
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