[携帯モード] [URL送信]
虹の彼方 44




再び車中の人となり、海岸沿いの道路をドライブして
美しい大海原の景色を堪能した後、休憩を入れ、
また高速道路に入り並盛方面へ戻る。




今度は、車の中でも
適度な会話をする為に頑張ってみる。

流石に、朝のような沈黙状態でいるのは気まずいし
車の中の、運転席と助手席というのは割と話をし易い。

真正面から、まじまじと見られる事が無い為、
それほど緊張しなくて済むのだ。


財団で話をした時のように、
様々に私の事も聞かれたし…自分からも結構話をした。
そして…ぼつぼつとではあるけれど雲雀さん自身の事も聞いた。
好きな食べ物とか…色々と。









ゆっくりドライブをして、
夜の時間帯になる頃に並盛に到着。

高速道路を降り、車を走らせながら…

「そろそろ夕食に向かおうか。…お腹は空いているかい?」

と尋ねられる。




「はい。丁度お腹が空いて来た頃です。」



「そう。この分なら予約時間ぴったりぐらいに着けるかな。」



「今度は、どんなお店に行くのですか?」



「フランス料理の店の予約をしている。」



「フレンチですか…楽しみです。」


そう答えて、再び窓の外に目を向ける。





今日は、お昼はイタリアンで夜はフレンチ。
どちらも洋食だ。
雲雀さんは和食のイメージが強いから少し意外。


そんな事を思いつつ…
どんなお店だろうかと内心でワクワクしつつ
車外の景色を眺めた。









暫くして到着したのは、
並盛の中心街から少し離れた場所にある瀟洒な建物。

外観に蔦が絡まっている
…何とも雰囲気のある洋館だった。



広い敷地内に入り、
建物の正面にある車寄せに車を停止すると同時に
中から人が出てきて、
まだ車中にいる私達に向かって丁寧にお辞儀をする。


「…降りて。」


隣の雲雀さんにそう告げられて、
車のドアを開けようとしたら、車外にいるお店の人が
ゆっくりとドアを開けてくれた。

軽く頭を下げ、お礼の意を示しつつ車外に出ると
降りてきた雲雀さんが車のキーを渡しつつ



「車を頼むよ。」



「はい。…お預かり致します。」






恭しく鍵を受け取った後、入り口まで案内され、
お店の中に入ると今度は、店内で店長らしき人が出迎えてくれた。


「雲雀様、お待ち申し上げておりました。…どうぞ、こちらへ。」

そう挨拶をされ、店の奥へと誘われる。








通された部屋は煌びやかな個室。
如何にもフランス料理のお店らしい装飾だ。
けれど…ゴテゴテ過ぎないどこか品のある豪華さだ。

割と広さのある個室に
ひとつだけ置かれたテーブルに案内され
室内で控えていたボーイさんが椅子を引いてくれた。




本日のお勧め料理と、お勧めのワインの説明を聞き
…メニューを見る。

かなり本格的なフランス料理のお店のようで、
メニュー表に並ぶお料理の数々は品目も多くどれを選ぶか迷う。


う〜ん…どうしよう…

そう考えていると


「どれでも…君の好きな物を自由に頼んで。」

と声を掛けられる。


「はい。」

そう返事をしてから、改めてメニューと睨めっこ。






こんなお店に来たのは、物凄く久しぶりだし…
食べたいと思うものが沢山ある。

散々に迷い…
何とかオードブルから最後のデザートまでを決める。


私が迷っている間に、
雲雀さんはさっさと注文を済ませ…
既にソムリエにワインの事を聞いている。
それを見て、少々焦りつつ自分の分の注文を終えた。






やっと注文をしホッとした所で…


「辛口の白ワインで良いのがあるようだ。…君も飲むかい?」
「それとも、自分で好きなのを注文する?」



そう聞かれ…
内心で『え、車の運転はどうするのだろう』と思ったけれど、
ココは並盛内だし、
後で草壁さんでも呼ぶのかもしれない…。


昼食の時には飲まなかったけれど、
今度はチーズも頼んでいるしワインがある方が良さそうだ。
それに、白の辛口は好きだし…



「…ええと…私も、同じワインを頂きます。」


そう返事をすると、
雲雀さんは先ほどのソムリエを呼び
…当該ワインをボトルで注文した。







間もなく、グラスが運ばれて来て
目の前でワインが開けられる。

ワインの製造年数や特徴等を軽く説明をしながら、
丁寧にグラスに注がれた。


…早速頂いてみる。

…うん…。

繊細でありながら気品に満ちて力強い口当たり…
そして花の香りを思い起こさせる芳醇で何とも良い香り。
味は辛口タイプで切れの良い感じ。

これは…美味しい。








同じように、香りと味を確認するかのように
ワインを味わっていた雲雀さんが



「うん。思ったより良いね。…これぐらいの辛口が丁度良い。」



「雲雀さんは…辛口白ワインがお好きなんですか?」



「僕は、基本的には日本酒しか飲まない。」
「…洋酒は、飲む必要がある時以外には飲まないよ。」
「もしも飲む時は、日本酒に感覚の近い辛口白ワインを飲む事が一番多いな。」
「一部の辛口の白ワインは、日本酒を彷彿とさせる物もあるからね。」



「…あぁ、成程。それで辛口の白ワインなんですね。」








「そうだよ。…君は、どんなワインが好きなんだい?」



「実は私も、白ワインが一番好きなんです。」
「お料理に合わせて赤を飲む事もありますが…でも白の方が好きです。」



「そう…気が合うね。」
「欧州に行くと…どうしてもワインを飲む機会が多いだろうし。」
「お互いの好みが合うのは何かと良いね。」



「はい、そうですね。」





そう笑顔で答えた後…
再び美味しいワインを味わった。















[*前へ][次へ#]

15/22ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!