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虹の彼方 42




地下の駐車場から、複雑な通路を通って
…地上に出た。

途中、幾つもの別れ道があったから…
何処に出るのか、複数の中から選べるようだ。






今、車が走っている所は、駅前からは離れた郊外に向かう道。
少しして、車は高速道路に入った。

…もしかして、少し遠出をするのだろうか?
そう考えていると。




「今日は、天気も良いし…少しドライブして郊外に行くよ。」

と声を掛けられた…



「はい、分りました。」





そう答えた後は、
初めてのシチュエーションに緊張している為、何も話せず…
少々身を固くして座っていた。


何しろ…
『本当に雲雀さんと二人っきり』で
『雲雀さんの運転する車の助手席に座っている』のだ。
…こんな状況で、緊張しない筈がない。




車の中を流れる音楽を聞きながら、
外の景色を見て、一生懸命に気を紛らわせる。

そんな私に、雲雀さんも特に声を掛けてくる事はせず、
妙な沈黙が車内を支配していた。












暫く車を走らせた後…
高速を降り、再び車を走らせる雲雀さん。

何処に向かっているのだろうか?



周囲は、緑の濃い自然豊かな地域だ。
気が付くと、車はカーブの多い道路を走り…
低いけれど、充分に見晴しの良い山の中腹辺りにある公園に着いた。

公園内の駐車場に車を止めた後、車を降り…
緊張の為、少し硬くなった身体を解すように
ゆっくりと深呼吸をした。





お天気も良いし、とても気持ちが良い。
爽やかな風が吹いて…髪を揺らす。

駐車場の中に公園の案内図があり、
それを見ている雲雀さんの隣に近寄って行くと…
案内図を指差しながら


「この散歩コースでも歩いてみるかい?」

と聞かれた。





見ると、1時間程度で戻って来れるコースらしい。
景色の良い場所を歩けるようだし、良さそうだ。


「はい。」

と、そう笑顔で答えると…



「…行こうか。」

そう言って、歩き出した雲雀さん。


私も、急いで一緒に歩き出したけれど…
隣に並ぶのは、何となく気恥ずかしくて
やや斜め後ろを歩く事にした。







眺めの良い山の中腹にある、
散歩の為に作られた歩道はそこそこの幅もあり
綺麗に舗装されていたり、手すり付きの階段があったり、
風景を堪能する事の出来る
ちょっとした広場があったりして…なかなか快適だ。

平日の昼間である為か、
駐車場には他の車が一台あっただけ。
滅多に他の人には会わないだろうし…良かった。

これならば…人が多過ぎるという理由で
雲雀さんの機嫌が悪くなるような事はないだろう。







コースの半分まで来た所に、
眺めが良く、少し広めの広場があった。

ココはベンチも複数あり、屋根付きの休憩所もある。


「少し休んで行こうか。」


雲雀さんから、そう声が掛かり…二人で並んでベンチに座った。

…と言っても、人二人分程を空けた、
微妙な距離の座り方だけど。






暑過ぎも寒過ぎもしない、心地良い陽の下で
綺麗な景色を堪能する。

少し遠くに海が見える…
良く晴れている日なので、見通しが良く
操業している漁船か、貨物船らしき物も見える。

青い海に、波の白さが映えて綺麗だ。
近くに見える畑や小さな森の緑も…とても美しい。

今日は気候も良く、爽やかな風が吹いて…
絶好のお散歩日和だ…。






「…とても眺めが良いですね。海も畑も森も…綺麗に見えますし。」



「うん。…思っていた以上に良かったな。」



「此処へは、初めていらしたのですか?」



「…初めてだよ。」
「哲に適当な場所を調べさせたんだけど、人も少ないし当たりだったね。」






…あぁ、草壁さんが事前に探した場所なんだ。

あまり人が多く無さそうな場所で、
且つドライブで行き、散歩などをするのに良い場所を
草壁さんが、今日の為に探してくれたんだと知る。







「とても気持ちの良い場所ですね。」



「…外歩きは、好きな方かい?」



「はい、普通に好きです。…特別にアウトドア派ではありませんが。」
「こんな散歩や、公園でゆっくりするのは…とても好きです。」



「そう。…僕も…こんな場所は好きだ。」





そう話した後に、
少し嬉しそうな穏やかな表情で、景色を眺めている雲雀さん。

室内でしっとり落ち着いているのも似合う人だけれど
こうやって、日の光の下で佇んでいるのも…似合う人だな。

少しだけ慣れたせいもあるだろうけど、
こうして穏やかな表情でいる雲雀さんは…もう怖くない、かも。

心の中で、そんな事を思いつつ…




折角連れて来て貰ったのだし、と
…私も思う存分に美しい景色と
マイナスイオンたっぷりの綺麗な空気を堪能した。














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