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虹の彼方 36




休憩時間が終わり…
出したお茶碗を下げると…再び仕事を始めた雲雀さん。



この間に使ったお道具類を片付けよう…
でも、どこですれば良いのかな?と思っていると
洗い物のお道具をお盆に移し終えた所で
タイミングを見計らったように草壁さんが来てくれた。

…凄い。
ピッタリのタイミング。


こんなひとつひとつの事まで、
細部に拘っていて尚且つ完璧なのが
『草壁さんクオリティー』なのね…と感心する。

…私も、見習おう。






「藤宮さん…此方へどうぞ。」

私が何をしたいのか、
ちゃんと解っているらしい草壁さんが廊下から
小声で声を掛けてくれる。


草壁さんの方を見て小さく頷いて…
仕事中の雲雀さんに黙礼をし、お盆を持って廊下に出た。









スッと立ち上がり、そのまま黙ったまま、
先に立って廊下を歩き出した草壁さんの後に続く。

しばらく歩いて…
雲雀さんのいるお部屋には声が届かないだろうと
思われる位置まで来た所で
一度、草壁さんが私の方を振り返り…声を掛けて来た。





「恭さんに、お茶を出して頂き有難うございます。」
「お陰様で助かりました。」



「いえ、あれぐらいの事でしたら何時でも致します。」



「では、今度から…藤宮さんが居る時はお願いしても宜しいですか?」



「はい。勿論…大丈夫です。」


ニッコリと微笑みながら答えると、
草壁さんは穏やかな笑みを浮かべ…再び、ゆっくりと歩き出した。










隣に並んで歩きつつ会話をする。


「…恭さん…ご機嫌でしたね。」
「きっと、藤宮さんの淹れたお茶が美味しかったのでしょう。」



「…え?…雲雀さんが…ご機嫌?」



「はい。先ほど見た恭さんのオーラが優しかったですからね。」
「…あれは、機嫌が良い証拠です。」



「…そうなんですか。…私には解りませんでした。」
「…草壁さんって、やっぱり凄いですね。」







「恭さんとは、もう随分と長く一緒に居ますし…自然と解るようになっただけですよ。」



「それでも…雲雀さんと会話をした訳でもないのに解るなんて…やっぱり凄いです。」



「藤宮さんも…直に解る時が来ます。」
「…恭さんの不機嫌そうな時は、何となく解るでしょう?」



「はい。…それは…何となく解ります。」



「では、その逆の機嫌が良い時だって…直ぐに解るようになりますよ。」



そう笑顔で言われて…
“そうであれば良いけど”と思いつつ私も微笑んだ。











「所で…今日は何のお茶を淹れたのですか?」



「“甘味を感じて香り高いお茶が良い”と言われましたので」
「…八女茶の、玉露を淹れました。」



「…成程。藤宮さんが、お茶の知識のある方で良かった。」
「恭さんは、お茶の淹れ方には煩いので。」
「というか…基本的に何に対しても舌が肥えているので、その辺りの事も知って置いて下さい。」



「…はい、解りました。」









「あの…何時もは、草壁さんがお茶を淹れるのですか?」



「普段は大体自分が淹れますが…時には、恭さん自身も淹れる事があります。」



「あの見事に揃ったお茶のお道具類は、その為なんですね。」



「恭さんは…何をしても一流ですからね。道具も一流品を揃えています。」



「…やっぱり…そうなんですね。」










「…?…。…藤宮さん、どうかされましたか?」



「…いえ、あの…。」
「雲雀さんって思った以上に何でも出来て…凄い方のようなので…」
「私なんかが、雲雀さんのお役に立つのだろうかと…改めて思っていました。」
「逆に…足を引っ張るんじゃないかと心配です。」



「…そんな心配はご無用ですよ。」
「恭さんは確かに凄い人ですが…当然、助けが必要な事だって多々あります。」
「余計な心配をしないで…今は只、恭さんに慣れる事だけを考えていれば良いと思いますよ。」



「…はい、そうですね。…今更、悩んでも仕方ありませんね。」
「解りました…自分に出来る努力を精一杯します。」




自分なんかが、
雲雀さんの役に立つ事があるのだろうか?
という疑問は消えないが…

ここで悩んでも仕方ないのも事実。

草壁さんに心配を掛けるのも申し訳ないし
…明るく笑顔で言った。







その後…
雲雀さんの公室用に作られているらしい給湯室を教えて貰い…
今後、この給湯室は自由に使って良いと許可を貰った。












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あきゅろす。
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