[携帯モード] [URL送信]
虹の彼方 33



座布団に座ったまま…
自分で少しづつ向きを変え、部屋の中を順番に見て行く。

と言っても、無駄に広すぎるこの和室は
…物凄くシンプルだ。

僅かな装飾品を除いては、
本当に必要そうな物だけしか置いていない。





一畳の大きさが、普通の物より大き目の畳が…
いったい何畳あるのか不明だけど、兎に角広い大広間の和室。

豪快な襖絵の書かれた、一般の規格より大きな襖。
その上には、丁寧で美しい細工を施された欄干。

…う〜ん…
あれだけで、充分な芸術品だ。



室内には、額や掛け軸もある。
木目が美しい花台に…シンプルな花瓶。
スッキリした印象の、粋な生け花もしてある。

どれも…高そう。

つい…値段が気になる私は、
根っからの庶民だな、と心の中で苦笑。







仕事をしている雲雀さんの周りには…
文机、座椅子、脇息、行燈。

それに書類を入れてあるらしい…
漆塗の美しい箱が、幾つか置いてある。

シンプルに見えるけれど、良く見ると…
とても良い材質の物らしい。



デザインもお洒落だし…
今の雲雀さんの雰囲気にピッタリだ。

これらの品は、
もしかしたら注文して特別に作らせた物だろうか。

…うん。きっとそうだろう。










今度は、庭に目をやる…。

ひと目で、良く手入れをされている事が伺える
…大変に美しい庭。


完璧な和風庭園。
やや小さいながらも築山もある。

庭木や石や燈籠の位置は当然…
小さな草花や、枯葉でさえ調和して見える美しい庭園だ。




風紀財団には専用の庭師もいるのだろうか?

これだけの美しい庭を維持管理するのは、
結構大変な事だと思うから…きっと居るんだろう。


時々響く、鹿脅しの添水音が雅やかだ。








今、座っている場所から観察できるものは
…大体観察が済んだ。



…どうしよう。

また…暇になってしまった。








仕方ないので、
あまり凝視し過ぎない程度に気を付けつつ
…雲雀さんの観察を、密かに始めた。


今日の服装は…黒の着流し姿だ。

先日のような、キリッとした背広姿も似合うけれど…
この人には…本当に良く和服が似合う。



物凄く、決まっている!
というか…とても絵になる。

周りの和風な調度品とも相まって…
雲雀さんの持つ和風な粋さが感じられるし
何とも…素敵だ。



雲雀さんは容姿端麗で、素材が良い上…
背丈もあり体格的にもモデルでも出来そうな人だし…
着こなしセンスも良いし
…きっと、何を着ても似合うのだろうな…





そんな事を思いつつ…

色々な服装をしている雲雀さんを…
心の中で想像して
勝手に、脳内ファッションショーを繰り広げた。








そうやって…暫く妄想の世界で遊んでいたが
…ふと時計を見ると、9時45分に近い。

あ…そうだ…

お茶の用意をしなくては!



そう思い出して…そっと立ち上がり、
お茶のセットが用意されている、部屋の隅に移動した。








そこには…数種類の茶器類が用意されている。

煎茶用である湯のみは、大きさ違いで数種類。
急須も、大きさ違いで4種類。

湯冷ましや、茶托などは勿論…
結界等のお道具類もちゃんとある。

それだけではなく…
隣には、茶筅や茶杓やお抹茶などもある。

当然のように茶碗もある。
それも小茶碗までも。

そして当然のように…他のお道具類も…。





要するに…
煎茶道と茶道のお道具類が、全て一揃いある感じだ。

どれもこれも素晴らしいお道具ばかり。

そして…必要な道具は全てある。








草壁さんから
『恭さんに、お茶を出して下さい』と頼まれた時は…
ごく普通に、
ボンゴレでも仕事中に淹れる
煎茶の事だろうと思っていたけれど…。

まさか…
ここまで本格的に、お道具類が揃っているとは思わなかった。





茶葉の確認をすると…これがまた凄い…

煎茶・玉露・かぶせ茶・玉緑茶・番茶・ほうじ茶・抹茶…
それも…色々な産地の物が、数種類ずつ揃っている。



一体、どのお茶を淹れれば良いのだろうか。

ここまで種類多く揃えているという事は、
その時の気分や…
又は茶菓子に合わせて…とか、
そんな感じで、毎回違うお茶を出しているのではないだろうか。



と、いう事は…つまり…

雲雀さんに…
どのお茶が良いか、聞かなければならないって事…よね?





…ええと…
先に、用意されているお菓子を確認しておこう。

…どれどれ?

用意されていた茶菓子は、
お花を模った上生菓子である“ねりきり”と、
押し菓子の“塩がま”の二種。

うん。
とっても美味しそうな和菓子。



それぞれ二個あるけれど…
これは、どちらかひとつを選ぶのだろうか?
それとも…両方出すのだろうか?

まぁ、聞いてみれば分る事よね。








チラリと雲雀さんの方を見る。

が…先ほどと同じく、忙しそうにしている。


話し掛けるのは気が引けるが…
聞かないと、お茶を淹れられない…



…仕方ない…勇気を出して聞いてみよう。









[*前へ][次へ#]

4/22ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!