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虹の彼方 32



今までの事を、色々と振り返りつつ…歩いて行き
漸く…ボンゴレアジトと、
風紀財団を繋ぐ通路の入口前に到着した。



私は、今回の特別な任務の為に
「準風紀財団員」として特別登録をしてくれたらしく
今まで、ツナの秘書として何度か行った時よりも
…少し軽いセキュリティーチェックで入れた。

…うん。
時間短縮にもなるし…良いかも。






そんな事を考えつつ、
財団の入口まで、迎えに来てくれていた草壁さんに付いて行く。

ボンゴレのアジト同様に、
やたらと広くて迷子になりそうな構造だ。


何度も来る事になるのだし、
毎回毎回、草壁さんに出迎えをお願いするのも気が引ける…
少しでも早く、正確に道順を覚えようと…
目印になりそうな場所をチェックしつつ付いて行った。







長い廊下を通り…
何度も角を曲がり…漸く…
それらしい雰囲気のする一帯まで来た。

風紀財団の、一般の職員達がメインで使用する場所は…
所々に、和風の雰囲気を感じさせつつも
どこか普通のオフィスビル内のような、機能性重視の
造りになっている。


一度だけ、一般職員さんのいる場所に行った事があるが、
そこは、畳の部屋ではなく洋室だった。

普通に机があり、
パソコンやコピー機や、FAXなどの事務用品が整然と並び…
何人もの方々が、忙しそうに働いていた。




一方で…
財団の主宰者である雲雀さんがメインで使用する一帯は、
純然たる和風の佇まいとなっている。

よって…雰囲気が変わる事で、
雲雀さんのいるスペースに近づいた事が解るのだ。









獅子脅しの音を聞きつつ、
美しい和風庭園に面した長い廊下を進む…

案内され、辿り着いた場所は…
雲雀さんが、公務の時間に使う大広間。


此処は…
本当に!広い!

一体、何畳分ある部屋なのか…未だに解らない。

だって、簡単に数えられる数ではないのだ。








部屋に入る前に、一度廊下に座り…
襖は開いているが、中に居る雲雀さんが見えない位置から
草壁さんが、声を掛ける。



「…恭さん。藤宮優衣さんをお連れしました。」



「中に入って。」






その声を聴くと同時に、草壁さんが、
無言のまま目で…部屋の中に入るように促される。

私は小さく頷いて…
和室の中に入り、廊下に近い入口部分で一度座り、
両手をついて丁寧に挨拶をする。



「雲雀さん、おはようございます。」
「…本日は宜しくお願いします。」



「おはよう。」
「…折角来て貰ったけど、生憎今日は、仕事が立て込んでてね。」
「悪いけど、今は君の相手は出来ない。…取り敢えず、適当に寛いで待ってて。」




「…はい、分かりました。」


雲雀さんの方を見ると
何やら大量の書類らしき物を前に座り…
忙しそうだ…








まだ、廊下に控えたままだった草壁さんが、
どこからか座布団を持って来てくれて
そっと…渡してくれた。


それに対し…小さな小さな声で

「あの…お邪魔なら、他のお部屋で待っていましょうか?」




そう聞くも…

「いえ…何時終わるか不明ですし、この部屋でお待ち下さい。」
「あ、それから…1つお願いがあるのですが…」



「はい…何でしょうか?」



「10時になったら、其処に置いている茶器を使って…」
「恭さんにお茶を出して頂きたいのですが、頼めますか?」







そう言われて…
草壁さんが見た方向を確認すると…
確かに、お茶を入れる道具らしき物が置かれている。


「はい。…10時に、お茶ですね。」



「一緒に、茶菓子も用意してありますので…」
「それを添えて…恭さんに出して下さい。」
「藤宮さんの分もありますので、ご一緒にどうぞ。」



「はい、分かりました。…有難うございます。」









「では…自分も仕事がありますので、これで失礼します。」


そう言って軽く会釈をし、静かに部屋を下がり
…何処かに向かった草壁さんを見送る。









…さて、暫くは…
この部屋で、ひたすら静かに過ごすしかないようだ。


でも…寛ぐって…

一体どうすれば良いのだろう。




…というか、雲雀さんの傍にいる時点で
本当に『寛ぐ』事など…無理。

うん。
絶対に…無理。







慣れない雰囲気に、最初はガチガチに緊張しながら、
座布団に正座をし、暫く座っていたが…暇だ。

仕方ないので…

この大広間を、じっくり観察でもしよう。










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