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虹の彼方 29



あまりに美味しくて豪華なお食事が、粛々と進んでいく。


雲雀さんは、日本酒も一緒に頂いている。
私もどうか…と、勧められたけど…
万が一、酔って失態を犯すといけないので
丁重にお断りした。


お酌をしようとしたのだけど…
「手酌で、のんびりするから良いよ。」と言われた。


唯でさえ緊張している私が、雲雀さんにお酌しようとすると
…緊張のあまり、手が震えて…粗相をしそうだ。

それを見越して、
雲雀さんは私のお酌を断ったのだろうと思う。

…たぶん、だけど。







老舗高級料亭の広いお座敷で、雲雀さんと二人でお食事なんて…
正直、想定していなかったし
(そもそも…今日居ると思って無かったので・汗)

もの凄く…肩に力が入り堅くなっている。

でも…“少しでも早く慣れる努力をします”
と言った手前…
時々、ぎこちなくではあるが雲雀さんに話掛けてみて
少しでも会話を試みた。






「この…先付は…」
「食べて崩すのが勿体と思う程に…綺麗に盛られていますね。」



「…そうだね。季節感もあるし…良いね。」



「…はい。 …………。」









「揚げ物がアツアツで…美味しいですね。」



「…君、熱い料理も平気かい?」



「…ええと、実は少しだけ猫舌なので…」
「本当に、揚げ立てで熱過ぎると…食べられません。」



「そう。…僕は平気だけどね。」



「…………。」







意外な事に、雲雀さんは…
話し掛けると、無視するような事は一度もしないで
一言でも二言でも…
ちゃんと返事を返してくれる。


だけど、私自身が緊張しているせいで…
頭の回転も悪く、返事に詰まり会話が途切れる。

そんな時でも、特に笑うでも催促をするでもなく…
私が話すのを待ってくれていた。





失礼な言い方だけど…
思った以上に忍耐力もあるようだ。

というか…大人の態度だ。




雲雀さんは、相手の都合や気持ちなんて、
全く鑑みる事をしてくれない人かと思っていたけど…
それは、私の偏見であり勝手な思い込みだったようだ。

…正直…見直した。






そして…様々な本当かどうかも解らない噂を
簡単に信じ、勝手な人物像を造っていた事を、少々恥じた。

噂話って、大抵は大袈裟になって拡がるものだけど…
雲雀さんについての噂も、
どうやら色々な脚色がされているようだ。


今度からなるべく…
“正しい公平な目”で
雲雀さんの事を見るように頑張ってみよう。









…………


緊張しつつ過ごしたが…
何とか無事に粗相をする事もなく、食事が終わった。

再び、草壁さんが車で送ってくれる。





今日は…朝から、随分と長く感じる日だった。

でも、雲雀さんと長い時間一緒に過ごしたお陰で…
かなり慣れたように思う。

勿論、まだまだ本当に
緊張がなくなるのは先の話だと思うけれど…

取り敢えず、雲雀さんの
「人となり」を垣間見る事が出来たのは大きな収穫だったな。








車で送って貰い、別れ際に…早速、休日の事を聞かれた。



「…次の休みは何時?」



「次は、連休で…木・金でお休みの予定です。」




ボンゴレアジト内では、万が一の時に備え、
休日は全員で一斉には休まずに、順番に不定期で取る事になっている。

同じ部署の者達は話合いの上、
機能が麻痺しないように、人員配置を考え…
差し障りがないように休日を貰う。




でも、私はツナの秘書なので…
“同じ部署の人”はツナしか居ないので、
少し事情が違う。

イザという時の
ツナの支え又は代わりに対応が出来る人員…という事で、
『ツナ、リボーン、獄寺さん、私』
…の4人の中で、3人以上休みが重ならないように
調整をするだけで良い。

お陰で、比較的自由に休日の設定が出来る。




…ので、出掛けるにしろ遊びに行くにしろ、
比較的人が少ない平日を、お休みに設定させて貰う事が多い。

今回の連休も、そう。





「…木・金ね。」
「じゃあ、取り敢えず…木曜日の朝9時に財団の僕の所に来て。」



「はい。…木曜日の朝の9時、ですね。解りました。」



そう返事をし…その日は雲雀さんと別れた。






朝の9時に行くという事は…
1日中…雲雀さんと一緒に過ごす事になるような気がする。
仕事のように、9時〜17時まで。
なんて…そんな時間で解放してくれる筈、無いよね?


きっと…今日のように、
お夕飯まで一緒に〜という流れなんだろうな。

う〜ん。
今日1日でだいぶ慣れた気がするとはいえ…
正直、不安が拭えない。

かと言って…
『一緒に過ごすのは、半日にして頂けませんか?』
とか…
そんな事を言う勇気も度胸も無いし…





…仕方ない。

兎に角…ご機嫌を損ねないように注意して…頑張ろう!





新たな決意を胸に…


…アジトの長い廊下を…ゆっくり歩いた。













第2章<磨けば光る珠> 完




++++++++++++++++++++++



以上、第2章はここで終わりです。
次回より第3章に突入します。





※第2章の後の過去の拍手が、『過去拍手の部屋』にあります。

本編でのヒロイン目線とは違うお話ですので、
他メンバーの裏でのあれこれが解る内容となっています。
宜しければ、どうぞ。




<読み方アドバイス>

※この後にも…
時々「過去拍手」という名の「小話」が合間合間にあります。
小話は、出来るだけ「その時」に読まれる事をお勧め致します。

物語を最終章まで読んでから、まとめ読みをするよりも
『その時々』or最低でも『その章を読み終えた後』位に、その都度に小話を読んだ方が
よりお話を楽しめるようになっています。






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あきゅろす。
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