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虹の彼方 27




先ほどまで居た場所から移動し、
今度は少し雰囲気の違う地域に来た。

其処は…政治家や企業家等が会合や接待に使う事で有名な
料亭がある場所だった。




その中の一つのお店の前に…静かに車が停車する。


「…恭さん。到着しました。」

草壁さんの声が、静かに車内に響く。






「…ん…。」


ゆっくりと目を開けて、外を確認した雲雀さんが…



「…行こうか。」



私の方を見つつ、声を掛けられたので慌てて答える。

「は、…はいっ。」






って!

…もしかして…このお店に入るのっ!?


名の知れた老舗料亭である事で、
完璧に気後れしてしまったが…ついて行く以外ない。

素早く回り込んだ草壁さんが
車のドアを開けてくれて、車外に出る。








改めて…お店の正門の前を見ると…
何時の間にか、女将さんらしき人や従業員らしき人が
出迎えの為に待っていた。




「…雲雀様。お待ち申し上げておりました。」



「うん。 …話している通りに頼むよ。」



「はい。承知しております。…さぁ、こちらへどうぞ。」





にこやかな笑顔で、奥に入る事を進められ…
オドオドしつつ雲雀さんの後に続いた。




入り口を入り、美しい中庭を横に見つつ…
何度も曲がる複雑な構造の建物の中を案内されて進む。

基本的に全てのお部屋が、
隠れ部屋的な個室として作られている為
こんなに複雑な構造なのだろう。


かなり大き目のお部屋から、
2・3人用のお部屋まで実に様々なお部屋があるようだ。
(実際に中まで見た訳ではないけれど、入り口の雰囲気的にそう感じた)







案内されて着いたのは、
恐らくは最奥に当たる場所にある部屋。

其処は、入り口からして雰囲気が違い…
如何にも“特別室”然としている。



この料亭に入る事すら、あまりに場違いに感じて
落ち着かないのに…こんなお部屋に案内されるなんて。

雲雀さんは“何時もの事”という雰囲気で、ごく普通だけど、
こんな所は、TVの特番のような番組で
見た事がある程度の私には、とても敷居が高い。



入口を入るとすぐに…
玄関スペースに当たるような和室があり、
更に奥に入ると
廊下的な役割のお部屋だと推測できる少し小さ目の和室。

その先は…奥のお部屋との繋ぎのような、
先ほどより少し広めの和室。
…所謂「次の間」という感じのお部屋。

そして、一際豪華な襖の先が…
実際にお食事をするお部屋になっている。





つまり、お店の廊下から、
お食事をするお部屋までの間に、三部屋あるという事。

なんて贅沢な造りなのだろうか。






全てが、純和風の作りで…壱畳の畳の大きさも
普段、私が目にする大きさよりも大きい。

その為か、とてもゆったりして見える。



案内されたお部屋は…
これは…一体何畳あるのだろう。

二人で使うにしては、かなり広い。
軽く15畳は超える広さだと思うけれど、
畳の大きさも違うし良く解らない。


広い床の間には、上品な掛け軸がかかり…
お花が生けられている。



窓の方に目を向けると…
手前の部分…お部屋との間に畳廊下があり…

その先には綺麗に手入れをされた立派なお庭が見える。
夜の庭を照らす燈籠に…
小さな滝まであり、照明で照らされて…とても幻想的な雰囲気。






此処で…雲雀さんと一緒に…
今からお食事を頂くのだ。

そう考えただけで…眩暈がしそう。






兎に角、粗相がないように…それだけに注意をしよう。

今日は全身が素晴らしくコーディネートされていて
見た目にはセレブに見えるとはいえ、中身は何時もの私。

急にお上品に振舞おうと思っても、
きっとボロが出るのは時間の問題だ…

ならば…せめて、雲雀さんに迷惑を掛けないよう…
雲雀さんの面目を潰す事が無いように…
それだけに気を配ろうと決心した。









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