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虹の彼方 22




雲雀さんと、視線が交わった瞬間に…
時間が停止してしまったように…感じる。

いや、正確には…
ごくスローモーションで動いているように感じる。


“時が止まったようだ”…とは、
こんな状態の事なんだ…と心の片隅で思いつつ、

今の私の心の大半を占めているのは…
目の前の雲雀さんの…その鋭くも美しい瞳の事。






雲雀さんの見掛けは全くの日本人なのに…
彼の瞳の色だけは、少々特徴がある。

光の加減で灰色にも灰蒼色にも見える…
涼やかなブルーグレイの瞳の色。

雲雀さんらしいクールさを感じる瞳。
冬の湖水を思い起こさせるような…そんな色。


そして…とても澄んだ瞳。

光を通す…美しく透き通った瞳。





ツナも、とても綺麗な琥珀色の瞳だと常々感じている…
獄寺さんもクオーターらしい翡翠色の目立つ瞳色だ。

でも…雲雀さんの瞳はまた違った雰囲気で美しい。



射抜くという言葉が相応しい程に、鋭い視線だけど…
その元である瞳は、こんなにも綺麗な人なんだ…

…正直、驚いた。

意外ですらある。








固まったまま、
無言になってしまった私に気が付いた雲雀さんが、
少し怪訝な目を向けて来た。

…いけない!

何か反応しないと!





そう心の中で自分に喝を入れ…

「…っ、あっ…。あの…今日は、色々と有難うございます。」

取り敢えず、何とか言葉を絞り出した。




「まだ、この後にも行く所があるけれどね。」


そうだった、今日は一日掛かると言われていたのだった…
あぁ、間抜けな事を言ってしまった…!





「…………。」

慌てている為、良い返事が思い浮かばない…
そして益々焦る。










結果、無言になってしまった私に対して、
予想外な雲雀さんの言葉が、耳に入る…



「…そんなに、僕と居るのは居心地が悪いの?」




「………え?」


突然の…
思い掛けない言葉に、驚いて雲雀さんを見る。







「君は…今朝、車の中で挨拶した時からずっと…そして今でも…」
「怯えるようにビクビクと僕を見て…常に緊張しているだろう?」

「僕が、……怖いかい?」






…っ!!…

投げかけられた質問に…狼狽する。



私の心の奥底まで…見透かしてしまいそうな…
鋭く真摯な視線が、じっと見つめて来る。


何もかもを…
心の中までも…見られてしまいそうで怖くなり、
…思わず視線を…下に逸らした。








ここで『はい』等と言える筈はない。

幾ら何でも…
そんな失礼な事を…本人には言えないだろう。

かと言って、上手く誤魔化せる相手とも思えない…
どう返答するべきだろうか。




「…………。」


返答に困っていると…
雲雀さんが軽く溜息をつくのが感じられた。

…しまった!

怒らせてしまっただろうか…。







そう思って恐る恐る顔を上げる。

…が…

「本当の事を、言って貰って構わないよ。」
「…僕を怖れない人間の方が、珍しいぐらいだからね。」

と、やや穏やかな口調で言われた。






怒っている訳ではなく…
本当に、私の気持ちを確かめたいだけのようだ。

だったら…
ここは正直に言っておくべきなのかも…しれない。


「…あの、では…お言葉に甘えて、本音を申し上げます。」
「…大変失礼ながら…今はまだ少し…怖いです。」


小さな声で、
恐る恐る本当の気持ちを言う。





「で、でも…」
「あの、単に緊張している部分もあって…慣れていないせいもあると思います。」
「…だから、あの…頑張って…慣れるようにします。」


ドキドキしながら…思ったままの本音を言った。








「うん。…君は正直だね。返答も…それで良い。」



…っ!…。



もしかして…今のは試されたのだろうか?


私が雲雀さんを、少し怖がっている事も、
緊張の為に態度がぎこちない事も…

何もかも解った上で、
私がどう答えるのか…聞いてみたのだろうか。



確かに“解って当然の態度”だったような気もするけど…
それとは別に
『私が、どう返事をするのか』を試された気がする。





率直に正直な気持ちのままを告げるのか…
又は…少々本音を隠し、
雲雀さんの耳に心地よい脚色した内容で答えるのか…

それとも…全くの見当違いな答えでかわすのか…
そして、全ての返答を嘘で塗り固めるのか…


雲雀さんには…
“正答…つまり私の本音”がバッチリ解っている内容を使って
ごくシンプルな質問に対し、
私が、何処まで…
そして、どんな風に答えるのかを…

試して聞いたのだろうと…思う。…たぶん。
私の…勝手な憶測だけど。







「今後も…僕に、嘘は通用しないと覚えておいて。」



…!…


リボーンやツナにも、嘘がつけないけど…
(読心術や超直観があるんだから当然よね)

雲雀さんも、簡単に騙せる相手ではないらしい。
小細工も…通用しそうに…ない。



「…はい。解りました。」



心の中で、しっかりと肝に銘じつつ…
素直に頷いて…返事をした。









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あきゅろす。
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