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虹の彼方 209





リボーンが無言になってしまったのを確認し、
このままでは話が逸れてしまいそうだし
雰囲気が悪くなっても困ると判断をし…慌てて私から声を掛ける。



「実は…急ぎのご相談があるのですが…」



ツ「急ぎの相談?」



「はい。恭弥さんが痺れを切らす前に、出来たら知恵を頂きたのです。」



リ「…どんな相談だ。」



「恭弥さんから…私の所属の事で揉めていると聞きましたので、」
「何とか、丸く収めたいと思って…」



ツ「…あぁ、その事かぁ。」
「昨夜、優衣達の婚約の話を聞いた直後に草壁さんに提案されて、」
「…実は、こっちでも困惑中なんだ。」










「…ですよね。…すみません。」
「恭弥さんは、ボンゴレが条件を呑まないなら…私を直ぐにでも退職させると言っています。」



ツ「あぁやっぱり…ヒバリさんなら、そう言うよね…。」



リ「…フンッ…」



「でも、私の気持ちは…出来ればもう少しだけボンゴレでお世話になり、」
「色々な事を全てキレイに片付けてからか、」
「…せめて、区切りが良い所まで仕事をしたいと思っています。」



ツ「そっか。…有難う。こちらとしても、その方が助かるよ。」



「それで最低でも3ヶ月位、出来れば半年くらい…」
「“時間稼ぎ”が出来るアイデアがないかと思いまして、ご相談したかったのです…。」



ツ「オレも…昨日からずっとそれを考えてるんだけどさ。」
「ヒバリさんを納得させる程の理由ってなると難しいんだよね。」



「…はい。そう簡単には、説得出来そうにないですよね。」









リ「アイデアなら…あるぞ。」



ツ・優衣 (…っ!…)



ツ「…どんなアイデア?」



リ「…優衣…、お前は家光の養女になれ。」


(…っ!…)



ツ「それって、何時か言ってた…優衣をオレの義妹にするって話?」



リ「…そうだ。」



「あの…でも、そんな事で“時間稼ぎ”が出来るのですか?」












リ「優衣を…ボンゴレにとって最重要組織・風紀財団のトップであるヒバリの元に、」
「嫁がせる為に相応しい立場にしたいから…」
「その為の準備期間を少しくれと言えば、…まぁ嫌な気はしねーだろ。」
「それでも最初は…“そんな必要はない。優衣さえいればいい”と言うだろうから、」
「…そこは、無理にでも説得するんだ。」



ツ「でも、養女になるのは書類だけでもなれるんだし、」
「“そんなに時間はかからないだろう”…って言われたら?」



リ「沢田奈々…ママンが…」
「“以前から欲しがっていた娘が出来て大喜びして、嫁ぐ前に母娘の時間が欲しい”」
「…と、言ってる…って、事にでもしろ。」
「その上で、実際に“沢田家という実家”に泊まりに行ったり、」
「…実際に、嫁ぐまでの準備をする事にする。」



ツ「…う〜ん…」











リ「…更に…正式にボンゴレボスの義妹になった優衣とは…」
「“結納式”をする必要がある…と言って時間を稼ぐ。」



「…結納式、ですか?」



リ「…あぁ。この結婚はボンゴレと風紀財団との…」
「“絆を深くする結婚”という位置づけにもなるしな、」
「組織として、どうしても必要な手順だと言えばいいだろ。」



ツ「ボンゴレと風紀財団の…組織同士のか、まるで政略結婚みたいだな。」



「…そうですね。」



リ「実際に、今までのボンゴレの歴史でも…」
「“婚約式”や“結婚式”が、組織同士の調印式代わりになった事が何度もあるしな。」



ツ「そう言えば、歴代ボスや守護者の逸話を聞いた中にも、」
「…そんな話があったな。」



「そうなのですね…。」










リ「“優衣が沢田家の娘として馴染む期間”“結納までの期間”“結婚式までの期間”に…」
「ボンゴレ・ボスの義妹として恥ずかしくない準備を十分にするので、」
「その期間はボンゴレ所属を譲れない…と言ってやればいい。」



ツ「…それって…」
「結構長い期間になりそうだけど…ヒバリさんが納得してくれるかな。」



リ「粘って粘って納得させるしかねぇな。」
「ママンの意向が強いと言えば、義理の母親になる相手なんだし」
「…ヒバリも無碍には出来ねーだろ。」
「それにヒバリは、義理や風習を守る事に関しては、ある程度なら譲ると思うぞ。」
「何しろ“風紀委員長”だしな…」









ツ「う〜ん…そんなに上手く行くかなぁ。」
「“そもそも優衣をオレの義妹にする必要なんてない!”」
「…って言って、バッサリ終わりそうだよな。」



リ「情けねーコト言ってねぇで…お前もいい加減…それ位の交渉力は発揮しろ!」



ツ「…えっ!!オレがヒバリさんと交渉して説得するの〜?」



リ「当たり前だろーが。…他に誰がいる。」



ツ「ええっ〜、リボーンがやってくれるんじゃないのかよ!」



リ「甘えるんじゃねぇ。それ位の事が出来ねーで、この先どうすんだ。」
「可愛い義妹の優衣の為だろうが。…ある程度の事は覚悟の上でやってみろ。」



ツ「…ある程度の覚悟って、どんな覚悟だよ。」
「…相手は、あのヒバリさんなんだぞ。」


小さくツナの溜息が聞こえて来る。










「…あの…本当に申し訳ありません。」
「私が、後先の事を考えずに返事をしてしまったので…」


二人の会話を聞いていて、
予想以上に大変な事になるのが改めて分かり
恐縮しつつ、声を掛けると…



ツ「優衣は、何も気にしなくて良いからね。」
「何度も言うけど、優衣のせいじゃないから!」
「優衣は…今はただ幸せな気分に浸ってれば良いんだよ。」



リ「あぁ、…その通りだ。」
「これはツナの“仕事”のひとつだからな。お前は気にするな。」



ツ「あぁ、もうっ〜!…よし、…解かったっ!!」
「オレも男だ!覚悟を決めてヒバリさんと交渉するよ。」
「何とか説得してみて…」
「そうだなぁ、半年位は時間稼ぎが出来るように頑張ってみる事にする。」



リ「そうだな。…それ位が妥当だろうな。」
「最初は、諸々の全ての準備に最低1年はかかる…と言っておいて…」
「こっちが少し譲る形で、最低でも半年、出来れば7、8か月を確保すれば尚いいだろう。」



ツ「…うん。そうだね。」
「…優衣。この後に…父さんと母さんや皆に話を通した後…」
「ボンゴレのボスとして、正式にヒバリさんにこの話を通すよ。…それで良いかな?」








「はい。私にとっては、大変に有難い事ですが…」
「でも、あの…お父様やお母様やボンゴレの皆様の意見を優先させて下さい。」
「それから…私をボンゴレ・ボスの義妹にする事に反対の方がいれば、」
「…どうか無理はしないで下さい。」



リ「その点は大丈夫だ。…反対する奴なんていねぇぞ。」
「オレは…元々そのつもりだったしな。」
「お前が何処に嫁ぐにしても、」
「軽く扱われる事が無いように…箔を付けた上で送り出す予定だったんだ。」



「…そんな事を…考えて下さっていたのですか…。」



リ「…あぁ…。だから相手も、それに相応しい相手でなければ認めるつもりは無かった。」
「…だが、ヒバリなら合格圏だ。仕方ねぇから…結婚を認めてやる。」



「…有難うございます。」









ツ「優衣、オレからも言わせてもらうけど…」
「大賛成する人は大勢いると思うけど、反対する人なんていないよ。」



「…そうだと良いのですが。」



ツ「それに…組織のボスとしてオレが正式に決定した事だから、」
「…皆には、ちゃんと従って貰うから心配しないで。」



(…っ…)



そうだった…ツナは何時でもとても優しいので、
つい忘れそうになるけれど…
ボンゴレという巨大組織のトップであるボスを務めている人だった。

マフィアの世界におけるボスの判断は、
通常の会社組織のトップの判断より重きを置かれ、
何よりも最重要視される。

という事は、ツナのお母様である奈々さんの了承さえあれば
…後はきっと問題なく進むだろう。



優しい見掛けの何倍も
“実はとても頼りになるボス”でもあるツナに
全てをお任せするのが、一番良いだろうと思う。







「…分かりました。」
「では、お手数ですが…どうぞ宜しくお願い致します。」



ツ「うん。その飛行機が日本に到着する前までには、なるべくヒバリさんを説得するよ。」
「ダメでも、数日中には何とか話をまとめるから…全てが決まるまで少し待っててね。」



リ「…優衣…、お前はヒバリを説得したりしなくて良いからな。」



「…はい。交渉の邪魔にならないように…私は余計な事を言わないようにします。」



ツ「うん。それが良いと思うよ。」
「万が一、ヒバリさんと喧嘩にでもなったら大変だしね。」
「優衣には勿論、ボンゴレ的にもヒバリさん的にも…全員が納得出来るように頑張るよ。」



「…宜しくお願い致します。」










その後に少しお互いに確認事項を話した後は、
ツナとリボーンとの会話を終了してリビングまで戻る。


リビングで待っていた恭弥さんに…
私から直接、ツナとリボーンに婚約の報告をしたら

『二人共、とても喜んでくれて祝福してくれました。』
『私の結婚の準備も色々してくれるそうです。』

と簡単に恭弥さんに告げると…



「…そう。」


と言ったきり黙ってしまう。

まだ、ご機嫌斜めのままのようだ。




その後は、あまり余計な事は言わない方が良いだろうと思ったので、
全く別の話題を出す事にしようと考えた。

ギリシャ旅行の思い出を話題にしたりして、
のんびりと時を過す。




…その後…

食事を終えて恭弥さんとお酒を軽く呑んで
その日は、観光疲れもあり…私はぐっすり寝て休んだ。


途中、真夜中の時間帯に
経由地でプライベートジェットの給油などをした後も
順調に飛行を続ける。








…翌朝…

恭弥さんと一緒に
軽めの朝食を、少し早い時間に食べた後に
一緒にお茶を飲んでいると…


草壁さんが来て

「ボンゴレの沢田さんからの通信が入っています。」
「緊急の重要連絡があるので、恭さんと直接話しをしたいそうです。」

と言って、恭弥さんを通信室に案内して行った。





どうやらボンゴレ側の調整が無事に終わったようだ。

さて…恭弥さんはどう出るだろうか。
上手く行ってくれると良いけれど。

そう思ってドキドキしつつ待つ。



でも、思ったより長くかかっているようで、なかなか戻って来ない。

…大丈夫だろうか。
何か揉めているのではないだろうか?



もう結構な時間が経った。

待っている身としては段々心配になって来る。

(…………。)














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あきゅろす。
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