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虹の彼方 208





何についての話題なのか解らなくて悶々としていると…
再び、草壁さんが口を開く。



「恭さん…差し出がましいようですが…」
「優衣さんの意見も聞いてみられた方が宜しいのではないでしょうか?」

と言いつつ、少し困った表情で再びチラリと私を見る。




…やっぱり…絶対に私に関わる内容のようだ。
そう確信した私は恭弥さんに、しっかり視線を向けた上で…


「恭弥さん…私にも関わりのあるお話なのですか?」

と聞いてみる。




すると、やや仕方なさそうに…恭弥さんが口を開いた。


「“日本に戻って1ヶ月後に、君の所属団体を正式に風紀財団にする”…と…」
「ボンゴレに通知したら、彼らが難色を示したそうだ。」
「だったら当初の予定通り…帰国と同時に君を退職させて、僕の元に連れてくれば良いと話したんだよ。」



(……っ!……)



なんと!関わりがあるなんて程度ではなく、
正に私の事が話題だったようだ。

…なのに…
当の本人が聞いてないまま話がここまで進んでいる
…という事実に、少し驚く。








でも、ここで恭弥さんと喧嘩はしたくないし、
やや遠慮がちに、小さい声で言葉を返す。


「…あの…そのようなお話は、出来れば先に相談して頂きたかったのですが…。」



「わざわざ君に意見を聞くまでもないだろう。」
「君が何と言うか検討はつくし、僕も…譲れない線がハッキリしているしね。」



「…そうだとしても…ひとこと、聞いて頂きたかったです。」



更にそう言うと…小さく溜息の後…



「…悪かったね。じゃあ、改めて聞くよ。…優衣は、どうしたいの。」



「今回の仕事の為に、無理をして3カ月の時間を頂きましたし…」
「帰国後は、色々と溜っている仕事を片付けるだけで、あっと言う間に1ヶ月位は過ぎると思います。」
「ですので…もし仮に、私がボンゴレを退職する事になるとしても、もう少し時間が必要だと思います。」



「“もし”ではなく…君が僕の元に来るのは譲れない線だよ。」



「でも、あの…折角、今回の欧州で色々と経験出来たので、それを生かした仕事をして、」
「ボンゴレのお役に立ちたいと思っていますし…」
「出来れば、その…もう少しボンゴレに在籍させて頂きたいのですが…?」


…と…
お願いするように言ってみたけれど。



「それは認められないな。今回の経験を生かしたいなら…僕の元でやれば良い。」


と即答でキッパリ言われる。



「…………。」



う〜ん…。
どうしよう…簡単には譲ってくれそうにない。

でも、ボンゴレには本当にお世話になったし…
仕事的にも出来れば、もう少し役に立ってから終わりにしたい。
だけど…どういえば説得できるだろうか?









この状態で、私1人で恭弥さんを説得するのは…正直、厳しいと感じる。
チラリと草壁さんを見るけれど、草壁さんも困惑した表情だ。

きっとボンゴレ側からは「話が違うじゃないか」という感じの
強い否定をされたのではないだろうか。

でも恭弥さんの“強い意志”を前にして、
どう調整すれば良いか困っているのだろう。




だからと言って、
私と草壁さんが二人で恭弥さんを説得したとしても…無理そうだ。

こんな時に誰か…頼りになる人と言えば、やはり“彼ら”だろうか。

うん。

…他には思い付かないし、
ここは一度彼らに相談するのが吉だろう。









そう結論を出した私は、恭弥さんに話を持ち掛ける。


「…あの…、良く考えたら…私の仕事の退職のお話の前に…」
「先ずは、私からボンゴレの皆さんに…恭弥さんと婚約した事を報告したいのですが。」



「それなら哲がボンゴレ側に伝えたから…もう知っているよ。」
「この話は、その上での話だからね。」



やはり…もう既に伝えた上で、移籍の交渉をしているらしい。
流石に行動が早い。

…でも、ここは…もう少し粘ってみよう。




「そうなのですか。ええと、でも…出来れば、自分でちゃんと報告をしたいです。」
「…それが、お世話になっている方々への礼儀だとも思いますし。」



私の“礼儀”という言葉に、恭弥さんが僅かに反応する。

流石、風紀を重んじる恭弥さんだけの事はある
…礼儀とか義理という事にも敏感なようだ。





そして、やや仕方なさそうに…


「…わかったよ。…じゃあ、君からも連絡をしたら良い。」


と言って、ボンゴレとの通信回線を繋ぐように
草壁さんに指示をしてくれた。


暫く待って、ボンゴレと回線が繋がったと連絡を受け、
今までいたリビングから離れて
通信室のようになっている所に案内をされ…部屋の中に私1人にしてくれた。

きっと、話をしやすいようにと…
草壁さんが配慮してくれたのだろうと思う。
恭弥さんの眼の前では、確かに話しをし難いので、
とても有難い配慮だ。









ヘッドホンのようになっている器具をつけ、
スイッチを押し…

「もしもし…」と声を掛けると…



「…優衣っ!久しぶりだね。」

と元気なツナの声が聞こえた。



「あ、はい…御無沙汰しております。」

何だか少し照れくさくて、小さ目の声で挨拶をする。



すると…今度は…

「…元気そうだな。」

とリボーンの低い声が聞こえる。


「はい。お陰様で元気にしています。」








先方はツナ1人ではなくてリボーンも一緒にいるようだ。
それを確認して、内心で“良かった”と思う。
これで私が相談したかった相手である
ツナとリボーンが揃った事になるので、大変に有難い。

そうと解れば…
恭弥さんが“まだ話しているのかい?”
と言って来ない内に、急いで相談をしよう!

そう思って…

「あの、もうお聞きだとは思いますが…」
「この度、雲雀恭弥さんに求婚され、それをお受けしました。」

とさっさと報告をする。



と…ツナが…

「あ、うん…昨日、草壁さんに聞いた時は驚いたんだけど…、」
「…おめでとう、優衣!」



「…はい…有難うございます。」
「あの…私からのご報告が遅くなって申し訳ありません。」



「いや、別に大丈夫だよ。」
「日本に帰国してからでも良かったくらいだから、気にしないで。」


恐らく、聞いた時には結構驚いたのであろうツナが、
優しく言ってくれる。


続けて…リボーンが…


「ホントは返事をする前に…一度位は、オレに相談して欲しかったんだがな。」


とボソリと言うのが聞こえて…

「…すみません。」と小声で謝る。








ツナ「何を相談しろって言うんだよ。」
「本人がしっかり考えて決断したんだから、良いじゃないか。」



リボーン「オレは、この結婚に反対してる訳じゃねぇ。」
「…ただ、タイミングを計って貰いたかっただけだ。」



ツ「…タイミング?」



リ「あぁ。もう少しヒバリを焦らしてから返事をしていれば…」
「今回みたいに“スグに優衣を寄越せ”と言われなくて済んだかもしれねーだろ。」



(……っ……)



リボーンの言葉を聞いて…
“あぁ、そんな手があったのね”と思ったが後の祭りだ。

そもそもプロポーズの返事をどうするか考えている時には、
“その後の事”までは考えていなかった。
…正直言って、そこまでは全く頭が回っていなかった。


だが良く良く考えれば、
“あの雲雀恭弥なら、こんな行動に出るだろう”
という事は予想出来た筈だ。
やっぱり私はまだまだだなぁと思いつつ、お詫びの言葉を口にする。








「あの…そこまで頭が回らず…短慮な事をしてしまい、申し訳ありません…」



ツ「優衣、謝らなくて良いからね!」
「おめでたい話が決まって、喜び一杯の時なんだし…」
「普通は、そんな事まで計算して、プロポーズの返事をしたりする人なんていないんだから。」
「リボーンの言う事なんか、気にしなくて良いよ。」


と明るく言ってくれた後に…




ツ「リボーンも…優衣を虐めるような事を言うなよ!」
「折角、一番幸せな気分の時なのに…」



リ「…オレが反対しないだけ有難いと思え。」



ツ「リボーン、気持ちは分るけどさぁ…せめて、一度位は優衣にお祝いを言ってやれよ。」



リ「…………。」















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あきゅろす。
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