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虹の彼方 191





翌朝…今日はアドリア海を眺めながらの終日クルーズの日。

今日も、とても良いお天気なので
…美しい海や島々が遠くに見えて絶好のクルーズ日和だ。






昨夜、恭弥さんから真実を聞いた事で…
今まで散々に悩み、色々と考えていた事が
一旦、全て白紙に戻ったような感じになってしまった。

でも、今までと全く同じという訳にはいかない。




昨夜、話をした時には…
鷹司綾子さんに聞いた話を、単純に信じてしまって、
恭弥さんを巻き込んで、
迷惑を掛けた事に対する“責めの言葉”は特になかった。

もしかしたら…
“恭弥さん的にはある程度の推測が付いていた”
ので、特に何も言われなかっただけかも知れない。

または…
色々な事に“未熟であリ過ぎる”私を責める気にはならない
…だけかもしれない。

けれど私の側には…
当然、申し訳なかったという想いがある。





これでも、私は…
私なりに必死に考え、真剣に頭を巡らせて、私的に正しいと思われる
“道を選択して”生きてるつもりだけれど、
どうして…こんな結果になってしまうのだろうか。

まだまだ人生の経験値が足りないのかな
…それとも、性格的な問題か…又はその両方なのか。



恭弥さんとは、3つ位しか年齢が変わらないのに…
どうして、こんなに違いがあるのだろうか?

恭弥さんと自分を比べると、
まるで大人と子供のように感じる事が時々ある。

やっぱり一番の違いは…今までの“人生経験値の高さ&深さ”と、
経験から得られる“智慧の量”の違いかもしれないな…





ツナやリボーンや皆さんから聞いた話によると…
皆さんは、中学生の頃から
大人顔負けの、かなりハードな経験値を積んで来ているらしい。

それがどんな内容なのか、
あまり詳しくは聞いていないけれど…ね。



それに恭弥さんは…
若干中学生にして、並盛という街を“事実上治めて”いたらしい。
もう、それだけでかなり凄い。凄すぎる。
どうやったらそんな事が出来るのか…私には想像もつかない世界だ。

きっと恭弥さんは、それらの体験を
しっかり自分の物にした上で、
“人生の智慧”にちゃんと変換して生きているんだろうな。




それに比べて…私はこの様だ。
本当に…情けないよね。

最後まで、女優を通せなかった事も含め…
鷹司さんの嘘を見抜けなかった事や、
それを元に恭弥さんに散々に迷惑を掛けた事が情けなくて
…少し落ち込み気味の気持ちで朝を過ごした。










午前中は、美しいアドリア海を楽しもうという事で…
ルームサービスを頼み、
眺めの良い部屋の専用デッキで恭弥さんと一緒に朝食を食べた。

そのままゆっくり海や少し遠くに見える島々などを眺めつつ、
昨夜の話題にも少しだけ触れて
…具体的な鷹司さんとの会話内容を聞かれたり
(事実を聞かれただけで、一切責められる事はなかった)

今回の旅行での思い出などを話したり
…何のかんのと、のんびりと穏やかな時を過ごす。




ランチは、場所をレストランに移動したが…
同じく大変眺めが良い場所で食事をし
その後は船内のお店で恭弥さんと一緒に水着を購入した後に、
デッキにある大きなプールに移動する。

海を眺める事の出来る巨大なプールは大人気で、
結構な人で賑わっていた。


温めの水温のプールで少し泳いだり、
ゆっくり水中歩行をしたりして心身共にリラックスをした後は…
恭弥さんと共に、プールサイドで再び美しい景色を眺めつつ、
ソフトドリンクを飲んで休憩をした。




そのまま…ひたすら、のんびりと過ごしていたら…



…ん?…あれ?

…空の様子が少し変だ…。




恭弥さんも、急に変化し出した空を訝しげに見上げている。
私達が見ている間に
…見る見る…美しい青空を黒雲が覆って行く。


他の乗客達も気が付いて、少しデッキで騒ぎ出した頃になると、
いきなり大粒の雨がポツリポツリと降って来た。

そして…
あっという間に叩きつけるような激しい大雨に晒される船のデッキ。

皆、慌てて船内の屋根のある所に移動し、
クルー達は大急ぎでパラソルを畳み片付ける。



私も、恭弥さんに…

「…優衣…部屋に戻るよ。」

と声を掛けられ、慌ててその場を後にして…
荷物を持って自分達の部屋に戻った。









突然の天気の変化に驚きつつ、
部屋で、雨に濡れた服の着替えをした所で…
恭弥さんの電話が鳴り、草壁さんからの連絡が入った。


少し話をして、電話を切った恭弥さんが…

「この後、少しだけ仕事をするから…」
「夕食前位の時間まで、独りで過ごして貰っても構わないかい?」


と聞いて来たので、


「…はい、分かりました。船内の何処かで、ゆっくり休憩して来ます。」



と答え、恭弥さんの仕事の邪魔にならないように
…船室を出て、ブラブラと船内を移動する事にした。









激しい雨が降っている為、
殆ど人影のなくなったデッキの階の室内ティーラウンジに来て
温かいお茶を注文し、小さなケーキと一緒に味わう。


今の私の頭の中は…
恭弥さんにする正式な返事を、どんな風に言うべきだろうか…
と、その事ばかりを考える。

もう、ストレートにありのまま…
そのままの私の気持ちを言えば良いとも思うけれど…
本当にそれで良いのだろうか、
他に言うべき事があるのではないか…と色々な事を考えてしまう。





ゆっくりお茶とケーキを味わって…
そろそろ移動しようかと思っていた時に

ふと、窓の外のデッキで
…何か動く物が見えた気がして…そちらの方を良く見ると…



(…っ!!…)



大雨が降る中で…
ずぶ濡れになりつつ立っている人影を少し遠くに見つけて驚く。


…それは…鷹司綾子さんの姿だった。




あんなに土砂降りの大雨の中なのに傘も差さずに立っている。
全身が濡れて…酷い有様だ。

あのままでは、冷たい雨に体温を奪われて
…体調を崩すかもしれない。




(……っ……)




そう思った時にはもう…
身体が動いて…直ぐにラウンジを出て一番近い出入り口から
大雨の降る外のデッキに飛び出していた。













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あきゅろす。
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